星降る夜の寓話

聞けば聞くほど環と五條律の関係がよくわからない。

環は「そういう関係ではない」と言うけれど、短大生だった19の時から21の現在に至るまで、ずっと2人で暮らしているという。

血がつながっているわけでもない男女が、それだけの時間、同じ家に住んでいて何もないというのはありえるだろうか?

けれども環が嘘を言っているようにも思えない。


短大卒の環の給与は決して高いわけではないけれど、青葉店の近くなら手頃な物件も多くある。派手な暮らしさえしなければ一人暮らしは可能なはずだ。
その点において、地味すぎるくらいの環には何の問題もない。

環の服装はいつもシンプルで、色味もシックなものが多い。
貴金属の類も身につけていない。
わざと目立たないようにしているかのようにも見える。

それでも目を引いてしまうのは、その印象的な大きな瞳のせいで、それが五條律の話をする時だけ、少し柔らかな光を宿す。


五條律の方はどうなんだろうか?

何を考え、環を家に住ませているのか?
ほとんどの生活費を五條律が出しているのも気になる。
おまけに食事まで作らせて。

環は、何か弱みでも握られていて身動きができないでいるのではないか?

気がつけばそんなことばかりを考えていた。

旅行のお土産だと言って、鮮やかな和紙でできた箱に入った金平糖をくれた時も、一番に考えたのは「五條律には何を選んだのだろう?」ということだった。



あれは本心だろうか?

飯島に呼び出され、営業のミスを尻拭いするために饅頭の箱詰めを手伝うことになった。
なんとか指定された時間までに納品を終えた後、一緒にいた環を食事に誘った。

駐車場を出たところで仕事の電話があり、対応しながら環を見ていると、偶然にも五條律が歩いて来た。
女と一緒だった。

2、3会話をしただけで、すぐに別れたけれど……

彼らと随分離れてから、環は言った。


「良かった」


良かった?

それは何に対して?

環はそれ以上何も言わなかった。