星降る夜の寓話

納品が済んだらそのまま直帰していいと言われたので、急いで制服を着替え、荷物を持って工場の裏にある駐車場へ行った。

大和さんが乗ってきていたのは、有名な外車メーカーの車で、荷物がたくさんのりそうな大きさだった。
2,000個のお饅頭は余裕でのせることができた。



飯島さんの言っていた通り、今回の不手際について担当者の人に、頭を下げて謝罪すると、「間に合ったんだからいいよ」と嫌味すら言われなかった。
これは事前に飯島さんが担当の人ときちんと話をしていてくれたからに他ならない。
そうでなければ、いくら7時までは待ってくれることになったとはいえ、こんなにあっさりと済むわけがない。



全てが終わったところで、大和さんに「何か食べに行こう」と誘われた。

車を立体駐車場に停めて、エレベーターを降りたところで、大和さんに電話がかかってきた。
それで大和さんから少し離れたところに立っていると、前から歩いて来るカップルの男性と目が合った。
その隣にいる女性も知っている人だった。

こんな時は、話しかけられない限り知らんぷりをしなくてはいけない。
もし、捜査の途中だったりしたら邪魔することになってしまう。

すぐに目をそらして、俯いたままでいると、視線の先にパンプスが立ち止まった。

それで顔をあげた。

「環、こんなとこで何してる?」

律が話しかけてきたということは、これは仕事じゃない。
隣にいる西藤さんを見ると、不愉快そうな視線をわたしに向けていた。

「人を……待ってるところ」
「人って誰を?」

律はわたしに遊ぶような友達がいないことを知っている。

「会社の……」
「飯島さん?」
「飯島さんじゃなくて――」
「僕を待ってたんです」

後ろから声がして、振り向くと大和さんが立っていた。

「これから食事に行くところです。そちらも彼女とデートですか?」
「最近、環の帰りが遅い理由はお前か?」
「そうです」
「五條さん、そんな怖い顔して、まるで娘の交際に反対する頑固おやじみたいよ? ねぇ、環さん」

さっきまでとは打って変わって、西藤さんがわたしに笑顔を向ける。

「心配しなくてもちゃんと送り届けますよ。そちらのお邪魔をしても悪いので、失礼します。行こう環」

2、3歩先に行ってからこちらを振り向いて待っている大和さんを追いかけた。

「仲がいいみたいね」

西藤さんが律にそう言うのが聞こえた。