星降る夜の寓話

しばらくして飯島さんは下りてくると、長テーブルの上に重ねられた箱を見て、お饅頭を入れながら話始めた。

「暇にしてるやつ思い出したから呼び出してやった」

飯島さんの口調から、それが越野さんじゃないことは確かだった。
それからもくもくと箱詰め作業を行った。


1時間くらいたって、グレーの番重の中に箱詰めされたお饅頭の山が随分出来てきた頃、ドアが開く音がした。

「遅くなった」

その声で顔をあげると、ジーンズにパーカーという格好の大和さんが立っていた。
髪の毛も前におろしていて年齢よりも若く見える。

「遅い!」
「そう言われても、今日は休みでジムに行ってたから。まさかそこで呼び出しされるとは思ってもみなかった」
「スマホにかけても出ないから、家に電話したらジムに行ったって言われたの。突っ立てないで早く座って手伝って。こっちは本社のやつの尻ぬぐいさせられてるんだから」

そこで大和さんと目が合い、ぺこりと頭をさげた。
大和さんが微笑んだのを見て、飯島さんが言った。

「ほら、そこ! イチャイチャしない!」

大和さんは空いている席に座ると、箱にお饅頭を詰める作業を始めた。
誰も何も言っていないのに、きちんとお饅頭の袋のシワをぴんとのばして入れている。しかも慣れた手つき。
それを見て飯島さんが笑った。

「衰えてないみたいだね」

大和さんはわたしの方を向くと言った。

「子供の頃から毎年、年末年始は人手不足で箱詰めをやらされてたから」

ラフな格好の大和さんも、お饅頭を箱詰めをする大和さんも意外だった。

飯島さんと大和さんは話しながらも作業が早くて、黙々と箱を作っているわたしの方が追い越されそう。


途中、路野さんが台車にお饅頭の入った番重を大量にのせて部屋に入って来て、大和さんを見て不思議そうな顔をしたものの、お饅頭を置くとすぐにまた出て行った。