星降る夜の寓話

ひとり残されたカフェで、以前、律と刑事ドラマの再放送を見ていた時のことを思い出した。


その日、律は久しぶりの休みで遅くまで寝ていた。

昼前に起きて来た時、テレビを見ていたわたしの隣に黙って座った。
そのまま、何か話すわけでもなく、一緒にドラマを見た。

ドラマは、警視庁特別捜査班という架空の組織に属する刑事たちが、難事件に挑む一話完結もので、律は時々「それはないだろ……」「違うし」とかぶつぶつ言いながらも見ていた。

その日の話は、その特別捜査班に所属する刑事が、自分の彼女の親を麻薬取引の現行犯で逮捕するという内容だった。
その刑事と彼女は婚約中だったのだけれど、彼女の親が実刑判決を受けたことで、「3親等以内に犯罪者がいる相手とは結婚できないんだ」と言って、刑事という仕事と彼女をはかりにかけ、結局刑事をやめるところで終わった。

最後まで見終わってから、律は「3親等の話なんて都市伝説だよ」と笑い飛ばした。

「今時こんな時代錯誤なことあるかよ。もっと調べてからドラマにしろよなぁ」
「そうなの? でも出世に響くとか?」
「昔はそうだったかもしれないけど、今はそんなのないない」
「本当に?」
「なんなら試してみる?」
「どうやって?」
「……何でもない。シャワー浴びてくる」


律がバスルームへ行ってから、パスタを茹でた。
パスタソースは既に作っていたから、パスタが茹で上がる時間に合わせて温めなおした。

パスタを茹でている間、ほんの少しだけ、夢を見た。


律がお金を貸してくれたのは、理由を作ってわたしといるためで、母親が犯罪者とかそんなの全然関係なくて、律とこのままずっと一緒に――

なんて身勝手な想像。
都合のいい夢。


律は、わたしの母に自分の手で手錠をかけたことに責任を感じているだけで……

それなのに、わたしは律のその優しさを、自分のいいように解釈したりして。

律が責任を感じることなんて何もないのにね。



西藤さんが口もつけなかったアイスコーヒーのグラスには、たくさんの水滴がついていた。

それを見ながら、自分のぬるくなってしまったカフェオレに口をつけると、やけに甘ったるくて、飲んだことを後悔した。

いろんなことを、後悔してばかり……




それから、最後の場所を探し始めた。

律が時々、事件の話を聞かせてくれたので、それを忘れないようにメモしてきた。

律の話を聞くたびに、誰にも迷惑をかけない方法を探すのは、とても難しいと思い知らされる。


それでも、律に早くお金を返して、そして、遠い、誰もいないところへ行かなくてはいけない。
祖母が亡くなった時にそうしようと決めたように。