星降る夜の寓話

律と暮らし始めて約1年、ゆずり葉での仕事にも慣れた頃のこと。

祖母のお墓参りに行った日、遅くに帰って来た律は、そのことを気にしてくれていたようで、わたしの顔を見るなり、「ただいま」の前に言った。

「ばあちゃんの墓参り行ったのか?」
「うん、命日だったから」
「一緒に行ってやれなくてごめん」
「なんで律が謝るの?」

律は少しのびかけていた自分の髪の毛を、ぐしゃっと無造作にかきあげると、目も合わせずに言った。

「なぁ環、俺に金を返さなくて済む方法があるんだけど、知りたくないか?」
「宝くじ買うとかそういうの?」
「そんな夢物語なんかじゃなくて。このまま、ずっとここで一緒に暮らすんだよ」
「それがどうして返さなくて済む方法なの?」
「だから、チャラにする方法があるんだよ」
「どうしてそうなるの?……全然わかんない」
「……環、お前今まで彼氏いたことは?」
「ないよ」
「好きなやつは?」
「それなら……いる」
「それって、現在進行形で?」
「うん……」
「あー、じゃあ、今の話はナシで」
「今の話って?」
「もういい。この話は終わり」
「気になるんだけど? 結局どういうことなの?」

その時、律のスマホが鳴って、画面を見た律の表情が変わった。
電話に出た律は、わたしとは距離をとるようにして何か短い会話をすると、すぐに戻って来た。

「呼び出し入ったから行って来る」

さっき帰ったばかりなのに、律はまた玄関に向かう。

「気をつけてね」
「ちゃんと帰って来るから安心しなさい」

律は笑顔を見せると、出て行った。


中途半端に終わってしまった話の意味がわからないまま、聞く機会を失ってしまった。

そのまま、自分の気持ちを言う機会も失ってしまった。