律は片膝を立てた状態で座ると、わたしに言った。
「借金、まだあるんだろ?」
「……うん」
「金は、俺が貸してやるから、借りてるところには返してしまえ」
「そんな、簡単に貸すとか言える金額じゃないから」
「俺のところへ来い」
「……どういう意味?」
「俺と一緒に住んで、うちから学校に通え。身構えなくても、俺はあまり家には帰って来ないから安心しな」
「でも……」
「利子とか高いだろ? 俺ならノー利子で済む」
「どうして律がそんなことしてくれるの?」
律は「ふっ」と鼻で笑っただけだった。
「今の家を売っぱらって、隣の県にマンション買うから、そっちに引っ越して来い」
「わたしまだ返事してないよ? それに、売るって……おじさんとおばさんの思い出があるあの家を?」
「無駄に広くて、庭なんか構ってる暇なんかないからいいんだよ。親父が刑事引退して、お袋と一緒に田舎へ行って、こっちへ帰って来る気もないみたいだし。短大を卒業して就職決まったら、毎月5万ずつ返せ。それまでは、まぁ、いいや」
「待って。そんなの良くない。それに5万って……」
「それくらいなら返せるだろ?」
「でも、返済額も、住むところも、わたしにとってはいい条件でしかない」
「国民の平和のために働いてる俺が、一方で金をむしり取って環の生活が成り立たないような状況に追い込むのは寝覚めが悪いだけ。でも、気を使うんだったら、たまに掃除とかしてくれればいいよ」
「わたしなんて放っとけばいいのに」
「気になるんだから、しゃーない」
「お母さんのこと……律のせいじゃないのに。責任なんか感じなくても、律は、自分の仕事をしただけなんだから」
「つべこべ言わずに、荷物まとめとけよ。ここもさっさと引き払え。家賃だって光熱費だって馬鹿になんないんだから早い方がいい」
律の顔を見ることが出来なくて、少し歪んだまま結ばれているネクタイを見ていた。
「まぁ、あれだ。今はとりあえず、泣け。大切な家族を失ったんだから」
「泣けって言われて、泣けるのは女優だけだよ」
泣きそうになりながら、律のネクタイを真っすぐに直すために手を伸ばした。
その手を、律がぐいっと引っ張って、そのままわたしを抱きしめた。
「いいか? 環は俺に金を返さなきゃいけないんだ。覚えておけ。それまでは、どこにも行くことは許さない」
せっかく我慢していたのに、涙が……とまらなくなった。
初めて、自分から律にぎゅっとしがみついた。
律は、わたしに居場所を作ってくれようとしてるんだと思った。
わたしが律と一緒にいる理由を作ってくれているんだと思った。
だから、律にお金を返すまで、それまでは、生きていよう……そう決めた。
「借金、まだあるんだろ?」
「……うん」
「金は、俺が貸してやるから、借りてるところには返してしまえ」
「そんな、簡単に貸すとか言える金額じゃないから」
「俺のところへ来い」
「……どういう意味?」
「俺と一緒に住んで、うちから学校に通え。身構えなくても、俺はあまり家には帰って来ないから安心しな」
「でも……」
「利子とか高いだろ? 俺ならノー利子で済む」
「どうして律がそんなことしてくれるの?」
律は「ふっ」と鼻で笑っただけだった。
「今の家を売っぱらって、隣の県にマンション買うから、そっちに引っ越して来い」
「わたしまだ返事してないよ? それに、売るって……おじさんとおばさんの思い出があるあの家を?」
「無駄に広くて、庭なんか構ってる暇なんかないからいいんだよ。親父が刑事引退して、お袋と一緒に田舎へ行って、こっちへ帰って来る気もないみたいだし。短大を卒業して就職決まったら、毎月5万ずつ返せ。それまでは、まぁ、いいや」
「待って。そんなの良くない。それに5万って……」
「それくらいなら返せるだろ?」
「でも、返済額も、住むところも、わたしにとってはいい条件でしかない」
「国民の平和のために働いてる俺が、一方で金をむしり取って環の生活が成り立たないような状況に追い込むのは寝覚めが悪いだけ。でも、気を使うんだったら、たまに掃除とかしてくれればいいよ」
「わたしなんて放っとけばいいのに」
「気になるんだから、しゃーない」
「お母さんのこと……律のせいじゃないのに。責任なんか感じなくても、律は、自分の仕事をしただけなんだから」
「つべこべ言わずに、荷物まとめとけよ。ここもさっさと引き払え。家賃だって光熱費だって馬鹿になんないんだから早い方がいい」
律の顔を見ることが出来なくて、少し歪んだまま結ばれているネクタイを見ていた。
「まぁ、あれだ。今はとりあえず、泣け。大切な家族を失ったんだから」
「泣けって言われて、泣けるのは女優だけだよ」
泣きそうになりながら、律のネクタイを真っすぐに直すために手を伸ばした。
その手を、律がぐいっと引っ張って、そのままわたしを抱きしめた。
「いいか? 環は俺に金を返さなきゃいけないんだ。覚えておけ。それまでは、どこにも行くことは許さない」
せっかく我慢していたのに、涙が……とまらなくなった。
初めて、自分から律にぎゅっとしがみついた。
律は、わたしに居場所を作ってくれようとしてるんだと思った。
わたしが律と一緒にいる理由を作ってくれているんだと思った。
だから、律にお金を返すまで、それまでは、生きていよう……そう決めた。



