星降る夜の寓話

祖母が亡くなったのは、わたしが短大を卒業する少し前だった。
あんなに楽しみにしてくれていた卒業証書を見せることができなかった。


祖母が亡くなる少し前、親戚に祖母がもう長くないという手紙を送ったけれど、誰も返事をくれなかった。

お葬式をするお金はなかったから、火葬だけして、小さくなった骨を、母と同じように合葬墓に埋葬した。

わたしのせいでみんなにお見送りをしてもらえない祖母に申し訳ない気持ちでいっぱいだった。



全てを終えると、本当にひとりぼっちになってしまった。

祖母までいなくなって、わたしを繋ぎ止めていたものがなくなったことになる。


祖母を埋葬した後、アパートに戻って、からだを丸めて横になった。

明日は学校に行かないと……もう何日も休んでる。
レポートの締め切りが近いのにまだ手もつけてない。

でも、もう、出さなくてもいいかな……
学校も、もうこのまま休んでしまおう……

体がすごく重くて、動きたくなくて、「少しだけ」と思いながら目を閉じた。

父の借金はまだ全額返せていない。
でも、調べたら親族の借金は返す義務がないって、本に書いてあった。
わたしがいなくなっても、親戚の人たちに迷惑をかけることはないことがわかってほっとした。
貸してくれた金融会社には迷惑をかけてしまうけど……


もう、ひどく疲れてて……

わたしがどこへ行こうと、もう気にかけてくれる人はいない。

だから、どこか遠くへ行ってしまおう……誰もいないところへ。

そんなふうに思った。

それは、すごく、いい考えのように思えた。



どのくらい時間が経ったのか、気がついたら寝てしまっていた。
目を覚ました時、背中に温かいものを感じた。
それに、かけられた上着。

そっと起き上がると、わたしに背中をくっつけるようにして座っていた人が振り向いた。


会うのは、あのクリスマスの日以来。


「起きたか」
「律……」
「ドアの鍵かかってなかったんだけど? 不用心すぎだろ」
「どうしてここにいるの?」
「なんで電話してこない? そのために渡したスマホなのに」


律がくれた、人生で初めてのスマホ。

母の事件の後、怖くてニュースは見ることが出来なくなってしまったから、見るのは天気予報くらいだった。
メッセージをやり取りするような友達もいないし、律が心配するようなSNSをすることもない。

登録されているのは律の番号だけ。

その番号を見るのが好きだった。

律は「話したくなったらいつでも電話してこい」と言ってくれたけど、電話をかける勇気がなかった。

だって、嬉しかったことは、雨が降り始めた時、ちょうど折り畳み傘を持っていた、とかそんなことくらいで。

あとは……全部……

いつも、泣き言しか言えることがなかったから。
そんな話聞かされても、律は困るだけだと思ったから。

律の番号が表示されるのを見るだけで良かった。