待ち合わせの場所に着くと大和さんはもう来ていた。
それで会って早々、謝った。
「ごめんなさい。お待たせしました」
「僕の方は取引先から直帰で来たから早く着いただけで、気にする必要はないよ」
大和さんはそう言った後、小さな声で言った。
「上手く笑ってもらわないと困る」
大きく深呼吸をしてから、大和さんを見て微笑んだ。
大和さんの後ろをついて歩いていると、ふいに立ち止まられた。
「隣、歩いて。速かった? もっとゆっくり歩いた方がいい?」
「違うんです。どこに行くのかわからなかったから」
「日比野って言ったと思うけど? そこのビルに入ってる映画館。映画館に行ったことがないわけではないよね?」
「映画は小学生の頃行ったことがあります」
「もしかしてそれが最後? 友達と行ったりはしなかった?」
「はい。行ってません」
それ以上、何も聞かれなかったけれど、なぜだか大和さんはしばらくわたしの顔を見た。
そして、「もっと側に寄って歩いて」とだけ言って歩き始めた。
それで、すぐにふれることができそうなくらいの距離を保ちながら隣を歩いた。
大きな建物の中に入り、上映中の映画のパネルが並ぶところを通り過ぎ、大和さんはどんどん奥へ入って行く。
「チケットはどこで買うんですか?」
「もう買ってある」
「じゃあ、お金――」
「いらない。これは、経費のようなものだと思って」
「でも、先日もご馳走していただいたから」
「ゆずり葉はそんなに大きな会社ではないけれど、これでも僕は副社長だから、そんなことは気にしなくていい。何なら、僕のことは財布だとでも思ってくれて構わない」
「そんな失礼なこと思えません」
「本当に気にしなくていい。その代わり、もっと彼女らしく振舞ってもらえないかな」
「彼女らしくですか……今まで誰かと付き合ったりしたことなくて、ちょっとハードル高いですけど、がんばってみます、勉強不足で申し訳ありません」
「嘘だろ?」
「嘘って?」
「今まで一度も付き合ったことがないって」
「誰も、わたしには近づかなかったから。理由は……ご存じですよね?」
「そうか……そう……」
なぜかそれっきり大和さんは黙りこんでしまったけれど、フードホールのところまで行ったところで「少し待ってて」と言って、わたしをひとりにした。
人の多さにきょろきょろしていると、大和さんは大きなポップコーンとドリンクを持って戻って来た。
「キャラメル味食べたことは?」
「ないです」
「それは良かった」
何の映画を観るのか知らされていなかったけれど、大きなポップコーンとドリンクを持った大和さんに並んで歩いた。
それで会って早々、謝った。
「ごめんなさい。お待たせしました」
「僕の方は取引先から直帰で来たから早く着いただけで、気にする必要はないよ」
大和さんはそう言った後、小さな声で言った。
「上手く笑ってもらわないと困る」
大きく深呼吸をしてから、大和さんを見て微笑んだ。
大和さんの後ろをついて歩いていると、ふいに立ち止まられた。
「隣、歩いて。速かった? もっとゆっくり歩いた方がいい?」
「違うんです。どこに行くのかわからなかったから」
「日比野って言ったと思うけど? そこのビルに入ってる映画館。映画館に行ったことがないわけではないよね?」
「映画は小学生の頃行ったことがあります」
「もしかしてそれが最後? 友達と行ったりはしなかった?」
「はい。行ってません」
それ以上、何も聞かれなかったけれど、なぜだか大和さんはしばらくわたしの顔を見た。
そして、「もっと側に寄って歩いて」とだけ言って歩き始めた。
それで、すぐにふれることができそうなくらいの距離を保ちながら隣を歩いた。
大きな建物の中に入り、上映中の映画のパネルが並ぶところを通り過ぎ、大和さんはどんどん奥へ入って行く。
「チケットはどこで買うんですか?」
「もう買ってある」
「じゃあ、お金――」
「いらない。これは、経費のようなものだと思って」
「でも、先日もご馳走していただいたから」
「ゆずり葉はそんなに大きな会社ではないけれど、これでも僕は副社長だから、そんなことは気にしなくていい。何なら、僕のことは財布だとでも思ってくれて構わない」
「そんな失礼なこと思えません」
「本当に気にしなくていい。その代わり、もっと彼女らしく振舞ってもらえないかな」
「彼女らしくですか……今まで誰かと付き合ったりしたことなくて、ちょっとハードル高いですけど、がんばってみます、勉強不足で申し訳ありません」
「嘘だろ?」
「嘘って?」
「今まで一度も付き合ったことがないって」
「誰も、わたしには近づかなかったから。理由は……ご存じですよね?」
「そうか……そう……」
なぜかそれっきり大和さんは黙りこんでしまったけれど、フードホールのところまで行ったところで「少し待ってて」と言って、わたしをひとりにした。
人の多さにきょろきょろしていると、大和さんは大きなポップコーンとドリンクを持って戻って来た。
「キャラメル味食べたことは?」
「ないです」
「それは良かった」
何の映画を観るのか知らされていなかったけれど、大きなポップコーンとドリンクを持った大和さんに並んで歩いた。



