星降る夜の寓話

仕事を終えると、急いで更衣室に向かった。

大和さんと映画を観に行くことになっていて、待ち合わせをしていたのだけれど、最後にとった電話が思った以上に長引いて、遅くなってしまった。

大和さんに言われた通り、デートっぽい服装に、髪型もちゃんと結っている。
鏡を見ながら、簡単にメイクを直していると、後ろに飯島さんが写った。

「デート?」

デート……になるのか……

「映画を観に行くんです」
「へぇ。楽しんでおいでね」
「はい」
「わがままいっぱい言っちゃえ!」
「そんなの言えません」
「あいつの方が環ちゃんに夢中なんだから、何言ってもきいてくれるよ。環ちゃんは、たくさん遊んで、たくさん笑っていいんだから! 楽しんでおいでね」

そう言った飯島さんが、いつもよりおしゃれなことに気が付いた。
普段はジーンズ姿が多いのに、今日はふんわりとしたブラウスにIラインのスカートを着て、足元には少し高めのヒールのパンプスを履いている。

「飯島さんもどこか行かれるんですか?」
「デート。と言っても、わたしの相手は女だけどね。入社以来ずっと仲良くしてる子で、この間の合コンにも来てたんだけど、今日はご飯に誘われたから」
「そうなんですね」
「ひきとめちゃったけど、時間は大丈夫?」
「10分後に出るバスに乗る予定なので、もう出ます。お先に失礼します」
「じゃあね」

先に更衣室を出た。

バスは30分間隔だから、乗り遅れるわけにはいかない。