杠葉さんの車で少しだけ走って、海沿いの小さな公園へ行った。
平日の昼間だからなのか、遊具もないからなのか、公園には誰もいなかった。
「杠葉さんは、お昼食べないんですか?」
「今日は青葉店の店長と一緒に済ませた。君はお弁当だろうから誘っても来ないと思って。そこのベンチに座ろう」
公園の隅に、木製のテーブルとベンチがあって、そこへ向かい合って座った。
「わたし、食べますよ?」
「どうぞ。ここで見てるから」
「それは、やめてください」
「どうして? 彼女のことはいつも見ていたいものでしょ」
「その演技、こんな誰もいないとこで必要ですか?」
「環」
名前を呼ばれて、杠葉さんの顔をじっと見てしまった。
家族と律以外の人から名前を呼び捨てにされるのは初めてだった。
「名前で呼ぶ方が『らしい』。僕のことは『大和』と呼ぶように。これも契約の内に入ると思って」
「わかりました」
テーブルの上にお弁当を広げて、手を合わせた。
「いただきます」
わたしがお弁当を食べている間、杠葉さんはしばらく黙って座っていたけれど、少しすると立ち上がってどこかへ行ってしまった。
さすがに食べづらかったので、少しほっとした。
お弁当箱をしまったところで、杠葉さんは手にペットボトルを持って戻って来た。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
「週末、デートしよう」
「今週は予定があるんです。ずっと前から決めていたことだから、今週だけは、ごめんなさい」
「何?」
「旅行の予定が入ってて」
「そう言えば、旅行が趣味って言ってたね」
「はい」
「誰と?」
「ひとりです」
「ひとり?」
「はい、いつもひとりです。その方が好きなところに行けるから」
「じゃあ、旅行の前日にでも会おう。これは、義務」
「わかりました」
「それから、いろんな所に行こう。食事やテーマパークや、ショッピング。デートスポットと呼ばれる場所は全部。まぁ、まずは定番の映画から」
2人で外出する機会が増えれば、それだけストーカーも見つけやすくなるってことだ。
「環の行きたいところも教えて」
「……わたしには行きたいところがないから、杠葉さんが決めた所でいいです」
「大和」
「大和……さん」
「よく出来ました」
大和さんはスマホを取り出すとわたしに写真を2枚見せた。
「こっちか、こっちの男が環の近辺をうろつくことになるけれど、彼らは僕が雇った者だから。もし見かけても怖がらなくていい。どう? 顔覚えた?」
「はい。覚えました」
彼は、ストーカーを捕まえるための囮として、わたしに彼女のフリを頼んだ。
そして、わたしはその代償としてお金を得る。
お互いに都合のいい関係。
平日の昼間だからなのか、遊具もないからなのか、公園には誰もいなかった。
「杠葉さんは、お昼食べないんですか?」
「今日は青葉店の店長と一緒に済ませた。君はお弁当だろうから誘っても来ないと思って。そこのベンチに座ろう」
公園の隅に、木製のテーブルとベンチがあって、そこへ向かい合って座った。
「わたし、食べますよ?」
「どうぞ。ここで見てるから」
「それは、やめてください」
「どうして? 彼女のことはいつも見ていたいものでしょ」
「その演技、こんな誰もいないとこで必要ですか?」
「環」
名前を呼ばれて、杠葉さんの顔をじっと見てしまった。
家族と律以外の人から名前を呼び捨てにされるのは初めてだった。
「名前で呼ぶ方が『らしい』。僕のことは『大和』と呼ぶように。これも契約の内に入ると思って」
「わかりました」
テーブルの上にお弁当を広げて、手を合わせた。
「いただきます」
わたしがお弁当を食べている間、杠葉さんはしばらく黙って座っていたけれど、少しすると立ち上がってどこかへ行ってしまった。
さすがに食べづらかったので、少しほっとした。
お弁当箱をしまったところで、杠葉さんは手にペットボトルを持って戻って来た。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
「週末、デートしよう」
「今週は予定があるんです。ずっと前から決めていたことだから、今週だけは、ごめんなさい」
「何?」
「旅行の予定が入ってて」
「そう言えば、旅行が趣味って言ってたね」
「はい」
「誰と?」
「ひとりです」
「ひとり?」
「はい、いつもひとりです。その方が好きなところに行けるから」
「じゃあ、旅行の前日にでも会おう。これは、義務」
「わかりました」
「それから、いろんな所に行こう。食事やテーマパークや、ショッピング。デートスポットと呼ばれる場所は全部。まぁ、まずは定番の映画から」
2人で外出する機会が増えれば、それだけストーカーも見つけやすくなるってことだ。
「環の行きたいところも教えて」
「……わたしには行きたいところがないから、杠葉さんが決めた所でいいです」
「大和」
「大和……さん」
「よく出来ました」
大和さんはスマホを取り出すとわたしに写真を2枚見せた。
「こっちか、こっちの男が環の近辺をうろつくことになるけれど、彼らは僕が雇った者だから。もし見かけても怖がらなくていい。どう? 顔覚えた?」
「はい。覚えました」
彼は、ストーカーを捕まえるための囮として、わたしに彼女のフリを頼んだ。
そして、わたしはその代償としてお金を得る。
お互いに都合のいい関係。



