星降る夜の寓話

呆然と立ったままでいると、飯島さんと杠葉さんが2人揃ってわたしのところまでやってきた。

「環ちゃん、本当にこいつと付き合うことにしたの?」
「え? えっ?」
「仮にも自分の会社の副社長に向かって『こいつ』呼びはないだろ?」
「もしかして、2人はお知り合いだったんですか?」
「ごめんね、環ちゃん。騙すようなことして」
「どういうことですか?」
「実はこいつに頼まれたの。環ちゃんとどーしても知り合いになりたいからなんとかしてくれって」
「え? でも?」
「あの合コン、こいつのためだけにセッティングしたやつだから」
「『来る予定だった子が熱出して』って、言ってませんでした?」
「環ちゃんに来てもらうための嘘だったの。そうでも言わないと絶対に来ないでしょ? ほんっと、ごめんね」

飯島さんは両手を合わせて申し訳なさそうに言った。

「でも、連絡先も交換せずにあっさり別れたって言ってたから、今、すごくびっくりしてるんだけど。こいつに脅されたりしてない?」

脅され……てはいないけど……

「2人は、どういう関係なんですか?」
「飯島はいとこなんだ」
「いとこ……」
「で、どんな手使ったの? 急に環ちゃんが心変わりするなんて、絶対何か汚い手を使ったとしか思えない」
「ひどい言いようだな。いいようにはとれないのかよ」
「だったらどうして付き合うことになったのか教えて」
「会社で言うような話じゃないから」
「気になって仕事の効率が落ちる」
「あれから毎日、駅で彼女が来るのを待って、誠心誠意くどいたんだよ」
「環ちゃん、そうなの?」
「あ、はい」
「そういうことだから、もういい?」
「いーよ。どっか行っちゃって」
「じゃあ、行こうか」
「はい……」

杠葉さんの後ろをついて行きながら、振り向くと、越野さんは驚いた顔でこちらを見ていて、飯島さんは満面の笑みを浮かべながら手を振っていた。



周りに誰もいないことを確認して、杠葉さんに言った。

「今日来ること、言ってもらいたかったです。それに、いろいろ聞いてないんですけど? どういうことなんですか?」
「言ったろ? ストーカーを捕まえたいって。そのために君に近づく方法を考えたんだよ」
「わかりません。あの時、杠葉さんはわたしに話しかけてもきませんでしたよね?」
「まさか飯島の連れて来たメンバーが全員ゆずり葉の社員だとは思ってもみなかったから。他の男と話している君を見ていたら、ガードが思ったより固くて、『副社長』という肩書では釣れそうにないとわかったし。計画を練り直す必要があると思って一旦引いたんだよ。おまけに五條律に出くわして。彼の態度を見ていたら、2人の関係がよくわからなかったのも理由のひとつだけど」
「飯島さんがいとこだってことくらい教えて欲しかったです」
「君に持ちかけた話のことを彼女は何も知らないから、ちゃんと口裏を合わせて」
「……わかりました」
「お弁当持ってるんでしょ? 少しだけドライブしよう」