周りの子たちみたいに遊びに行くお金なんか持ってなかったから、父が家にいる時は学校の図書室で過ごした。
毎日いたから、だんだん読みたいと思う本も無くなってきて、いつしか棚の端から順番に読むようになった。
好きとか嫌いとか関係なく、もてあました時間をつぶすために。
図書室が閉まると今度は近所の公園で過ごした。
その頃の律はまだ交番勤務で、町中をよくパトロールしていた。
わたしを見つけると、心配してくれた。
「環、女の子がこんな時間に危ないだろ」
「なんだ、律か」
「10も年上の人間つかまえて呼び捨てはないだろ」
「今更、『律くん』とかキモイ」
「もうすぐ勤務時間が終わるから、交番まで一緒に行こう」
「いい」
「いつまでもここにいるわけにいかないだろ? おばさんが帰って来るまでうちで待てばいい」
「律の家に迷惑がかかる」
「迷惑だなんて思うわけないだろ。ほら、来い」
ひとりでいるわたしを律の家に連れて帰ってくれた。
律のお父さんは現役の刑事で、家を空けることが多かったから、律のお母さんと律とわたしの3人でよく一緒に過ごした。
律は、パートで家にいない母の代わりに、わたしの誕生日にケーキを買ってお祝いをしてくれた。
すごく嬉しくて泣いてしまった。
あの頃は、嫌なこともいっぱいあったけれど、学校には友達がいて、家にはお母さんがいて、すぐそばに律がいた。
それがどんなに幸せなことなのか、その時はわかっていなかった。
大切な物は失って初めて気づくって、よく言うけれど、本当にその通り。
自分の身に起きて初めてわかる。
もっと、もっと、あの時間を忘れてしまわないように、一つ一つの思い出を胸に刻みつけておけば良かった……
杠葉さんは、あの事件を知った上で、わたしに付き合ってるフリを頼むのだと言った。
それなら迷惑がかかるなんて心配しなくてすむから、少しは気が楽。
彼の思わぬ提案で、計画が早まるかもしれない。
今週末は尾瀬の山に登る予定をたてていたけれど、それ以外の準備も急がなければいけない。
毎日いたから、だんだん読みたいと思う本も無くなってきて、いつしか棚の端から順番に読むようになった。
好きとか嫌いとか関係なく、もてあました時間をつぶすために。
図書室が閉まると今度は近所の公園で過ごした。
その頃の律はまだ交番勤務で、町中をよくパトロールしていた。
わたしを見つけると、心配してくれた。
「環、女の子がこんな時間に危ないだろ」
「なんだ、律か」
「10も年上の人間つかまえて呼び捨てはないだろ」
「今更、『律くん』とかキモイ」
「もうすぐ勤務時間が終わるから、交番まで一緒に行こう」
「いい」
「いつまでもここにいるわけにいかないだろ? おばさんが帰って来るまでうちで待てばいい」
「律の家に迷惑がかかる」
「迷惑だなんて思うわけないだろ。ほら、来い」
ひとりでいるわたしを律の家に連れて帰ってくれた。
律のお父さんは現役の刑事で、家を空けることが多かったから、律のお母さんと律とわたしの3人でよく一緒に過ごした。
律は、パートで家にいない母の代わりに、わたしの誕生日にケーキを買ってお祝いをしてくれた。
すごく嬉しくて泣いてしまった。
あの頃は、嫌なこともいっぱいあったけれど、学校には友達がいて、家にはお母さんがいて、すぐそばに律がいた。
それがどんなに幸せなことなのか、その時はわかっていなかった。
大切な物は失って初めて気づくって、よく言うけれど、本当にその通り。
自分の身に起きて初めてわかる。
もっと、もっと、あの時間を忘れてしまわないように、一つ一つの思い出を胸に刻みつけておけば良かった……
杠葉さんは、あの事件を知った上で、わたしに付き合ってるフリを頼むのだと言った。
それなら迷惑がかかるなんて心配しなくてすむから、少しは気が楽。
彼の思わぬ提案で、計画が早まるかもしれない。
今週末は尾瀬の山に登る予定をたてていたけれど、それ以外の準備も急がなければいけない。



