星降る夜の寓話

「お酒さえ飲まなければいい人なのに」なんて言葉よく聞くけれど、結局飲んでしまうその人を、タレレバで「いい人」だなんて言っていいとは思えない。
「いい人」な訳がない。


父は、まさにそんな人だった。

昔から大酒飲みだったけれど、それでもわたしが小さな頃は、酔うとすぐに寝てしまうだけの人だった。

それが会社の上司に誘われて、女性が接待するお店に行くようになって、変わってしまった。
そこで知り合った女性に入れ込んで、毎日のように通うようになり、夜中に酔っぱらって帰るようになった。
だんだん、帰らない日が増えていった。

その女性のために収入以上のお金を使ったんだと思う。
いろんなところからお金を借りてたみたいで、怖そうな借金取りの人が家に来るようになった。
母が知った時には、簡単に返済できるような金額ではなくなっていた。


母は昼間のパートを増やし、時給がいいからと夜中も働くようになった。
わたしもアルバイトの給料を生活費の足しに母へ渡した。

お金に余裕がなくなったからなのか、浮気相手の女性には愛想をつかされて、父は家で酒ばかり飲むようになった。

そのうちギャンブルにも手を出すようになって、以前から多かったお酒の量は更に増え、それと比例するかのように借金もまた増えて行った。

借りたお金の返済が滞るようになって、度々、借金取りが会社にまで行くようになったことで、父は会社を解雇された。

退職金は借金の返済に消えた。


やがて、「お酒を控えて欲しい」と注意する母に暴力まで振るうようになった。

何度も、何度も、家を出ようと母に言った。
でも、体のあちこちに青あざを作りながらも、母は首を縦には振らなかった。

「お父さんも、お酒さえ飲まなければいい人なのよ。飲んでない時には謝ってくれるの。すぐに仕事を見つけて前みたいにちゃんと働くって」


本当に「いい人」は、こんなになるまでお酒を飲んだりしない。
返せないほどの借金を作ったりしない。
簡単に暴力を振るったりしない。

わたしが父に文句を言ったことがきっかけで、機嫌が悪い時はわたしのことも殴るようになった。