星降る夜の寓話

「鴎外さん、僕と付き合って欲しい」

最初に思ったのは「どこへ?」。

でも、そんなことわざわざ社外に呼び出してまで言うようなことじゃない。

それで次に浮かんだのは「本気にすんなよ。バーカ」。



高校の時、階段の踊り場に呼び出されて言われた言葉。

『鴎外、オレと付き合って』

学校のほとんどの生徒に無視されていた時だったから驚いて、真剣に返事を考えてたら、次に言われた言葉。

『本気にすんなよ。バーカ。誰がお前なんかと付き合うか』

そして、どこからか現れた数人の生徒があざ笑う声……



「鴎外さん?」
「はい。いえ、これは返事ではなくて……」
「言い方を変えた方がいいかな」

自信に満ちた表情で、杠葉さんは言った。

「僕の彼女になってくれないか」
「そんなのおかしいです。杠葉さんはさっきわたしのことを全部知ってるって言われましたよね? それなのにどうしてそうなるんですか? それに、昨日初めて会ったばかりですよ?」
「フリでいいんだ。だから、鴎外さんが僕に興味がないのは返って都合がいい」

一番、腑に落ちる言葉。

「どうして付き合うフリが必要なのかわかりませんが、お断りします。わたしにはできません」
「君が望むものをあげるよ」


わたしが……望むもの……
本当に?
だめ。
そんなこと考えたらいけない……


「わたしでは……お役に立てません。例えフリだとしても、杠葉さんにとって不都合なことが多すぎます」
「僕がそれでも構わないと言ったら?」
「意味がわからないです。ゆずり葉にとってもデメリットにしかならない」
「それは逆に、僕が本気だ思われることにならないかな?」
「そこまで言われる理由を教えていただけませんか?」

杠葉さんは小さくため息をついた。