アストラ王国のいずこにある、廃れ果て名もなくした教会にて。誰もいない講堂で、跪(ひざまず)跪いて熱心に祈りを捧げる男がいた。
年の頃は十六歳。黒く短い髪は黒曜石のように深い艶を放ち、見る者を不思議と引き込んで離さない。静粛な空間は厳かで心穏やかに過ごせそうなものだがその反面、男の祈る石像の歪さが異常に際立っていた。頭からは不気味で太い角が伸び、背中からは翼が生える。悪魔、と呼ばれる存在といって差し支えない造形だった。
「……[I3.1]」
物音しない講堂で男が祈る中、ふと石像の目が赤く光った。空気を震わすような重低音がわずかに響き、空中に俯(ふ)瞰(かん)俯瞰の映像が映し出される。
壁には美しい絵画がかけられ、豪(ごう)奢(しゃ)豪奢な調度品がいくつも飾られる部屋だ。床に敷かれたシルク製の高価なラグからも、どこかの裕福な屋敷の室内だとよくわかった。中にいるのは成人の男女が一人ずつに、少年が一人だ。
使用人らしき男が入室し何事かを話す。途端に、元からいた三人は苛烈な怒鳴り声を上げた。
(……税率を下げろだと? ふざけるな! 使用人の分際で我が輩の経営に口出しするのか!? 使用人は使用されるのが役割なんだから、おとなしく指示に従っていればいいんだ!)
そう、映像に映るのはアンタレス伯爵家の執務室だ。ティエリーを追い出した後もエッグハルトたちの横暴は止まることなく、むしろよりエスカレートしていた。使用人や領民を傷つけては気分良く笑う毎日だ。
教会でその光景を眺める男は、音もなく不敵な笑みを浮かべるのだった。
年の頃は十六歳。黒く短い髪は黒曜石のように深い艶を放ち、見る者を不思議と引き込んで離さない。静粛な空間は厳かで心穏やかに過ごせそうなものだがその反面、男の祈る石像の歪さが異常に際立っていた。頭からは不気味で太い角が伸び、背中からは翼が生える。悪魔、と呼ばれる存在といって差し支えない造形だった。
「……[I3.1]」
物音しない講堂で男が祈る中、ふと石像の目が赤く光った。空気を震わすような重低音がわずかに響き、空中に俯(ふ)瞰(かん)俯瞰の映像が映し出される。
壁には美しい絵画がかけられ、豪(ごう)奢(しゃ)豪奢な調度品がいくつも飾られる部屋だ。床に敷かれたシルク製の高価なラグからも、どこかの裕福な屋敷の室内だとよくわかった。中にいるのは成人の男女が一人ずつに、少年が一人だ。
使用人らしき男が入室し何事かを話す。途端に、元からいた三人は苛烈な怒鳴り声を上げた。
(……税率を下げろだと? ふざけるな! 使用人の分際で我が輩の経営に口出しするのか!? 使用人は使用されるのが役割なんだから、おとなしく指示に従っていればいいんだ!)
そう、映像に映るのはアンタレス伯爵家の執務室だ。ティエリーを追い出した後もエッグハルトたちの横暴は止まることなく、むしろよりエスカレートしていた。使用人や領民を傷つけては気分良く笑う毎日だ。
教会でその光景を眺める男は、音もなく不敵な笑みを浮かべるのだった。



