【短】もう夏休みが終わるから




「やっと補習終わった〜!」


 チャイムが鳴ると同時に、一人の男子生徒の声が教室に響いた。その生徒は椅子に座ったまま大きく伸びをして、机に突っ伏す。


幸太(こうた)、夏休みフルで補習だったからな」

「一ヶ月毎日聞いてて耳タコ、それ」


 幸太と呼ばれた彼の周りに何人かが集まる。荷物をまとめながら飛んできた言葉を聞いて、幸太はじろりと周囲をにらんだ。


「うるさい! いいだろ毎日補習でも!」

「にしても最後の日まで補習とか可哀そう。やばすぎ」

「それは俺もだ」


 後ろから話に入ったのは、背が高くて短髪の男子生徒だった。


(りょう)ちゃん!」

「俺も夏休みずっと補習だった。別に幸太だけがやばいわけじゃない」

「そうだった、涼もやばいんだったわ」

「幸太はともかく、涼はまともっぽいのにまともじゃないもんなぁ」


 涼は持っていた黒いリュックを片方の肩にかけると、幸太の頭に腕をのせた。


「んお?」

「幸太、これから暇か?」

「うん。暇」

「だったら思い出巡り、しないか。高校最後の夏休みだし」

「え、いいじゃん! 楽しそう!」


 幸太は目を輝かせた。それを見ていたほかの生徒たちは苦笑いをしていて、涼は眉をひそめる。


「なんだ」

「……幸太も涼も、いろんな意味ですげえな」

「は? ――幸太、行こう」

「おう!」


 二人は立ち上がって教室を出ていく。廊下に出ても、赤茶とシルバーの髪をした二人は目立っていた。


「いやぁ、……お前らは分かるよな?」

「分かる分かる。あいつら本当に高校生か?」


 教室に残された数人がぽつぽつと言った。