17歳の、刹那。

正夢のケガは手当てで済んだが、俺の傷はけっこう深くて、少し病院に泊まることになった。

呼ばれてきた父親と母親は、しかめた顔で不満をぶちまけた。


「おまえは、何をやってるんだ!」

「バイクで事故なんて……どういうことなの?!」

「迷惑ばっかりかけて、いいかげんにしろ」

「本当に、もう。なんでこうも出来が悪いのかしら……」


ベッドわきでぶつぶつとグチり続ける両親に、

正夢が、

「もういいでしょう」

と、口を出した。


「彼は、キズを負ってるんですよ……なのに、そんな言い方ないと思いますが?」

正夢の顔を、父親がキッとにらみつける。

「本人が本人なら、友達も友達だな……。大人に対して、そんなえらそうな口をたたくとは」

「ホント……、どうせロクでもない仲間なんでしょ……」

母親が、父親の言葉にうなずいて見せる。

「もう……帰ってくれませんか? 彼は、俺が看ますんで」

正夢が話を遮って、病室から俺の両親を追い出した。


扉を閉め、ふぅーっと正夢が息をつく。

「悪いな……正夢」

声をかけると、

「いいよ……」

正夢がポツッと呟いた。

「あんな親……信じらんねぇ。なんで心配ぐらい、できないんだよ……」

「おまえが、そんなの言うことないって……。あんなの前からだし、俺は気にしてねぇから……」

「けど…いいのかよ、涼は、あれで」

「いいんだよ。あいつらには、頭のイイ姉ちゃんだけいれば、いいらしいし。俺には、なんの期待もしない代わりに、せめて、もう迷惑かけるなとかって思ってるんだろうからな……」

「だけど、涼……」

「おまえが、気にするなって。いつものことだし、ホントもういいから」

まだ何か言いたげな正夢を止めて、

「少し眠るから」と、言った。

ふとんをかけ直して、無理やりに目を閉じると、俺はそのまま眠りについた。


──次の日、病室のベッドで目を覚ますと、ミナが来てた。

「涼、学校でケガしたって聞いたから、びっくりして……」

「そうかよ……」

こんな状態で、別にオンナなんかに会いたくもなかった。

「大丈夫なの?」

「まぁ見たとおり。足と手ぇ切った」

「痛そう……」

「そうだな。手は、傷が残るらしいけど」

「傷が残るの? ウソ……」

ミナが、わざとらしく口に手をあてる。


「いいけど、別に。俺は、気にしてねぇし」

「そうなの……?」

「ああ、俺の責任だしな、いいよ」

「俺の……? だけどバイク運転してたのって、友達の春武さんの方なんでしょ?」

「……正夢は、悪くないし。あおったのは、俺なんだから……」

「だけど、その人のせいで、涼に傷まで残るのに……」

「正夢のせいじゃないって、言ってんだろ。つまんねぇこと言うんなら、もう帰れや」

「ごめんなさい、でも……」

「もう、いいよ。帰れって……」

 俺は、横を向いて寝たふりをした。

「じゃあ……」と、ミナが背中を向け、病室を出て行く。


こんな風にしか付き合えないんじゃ、しょせん彼女との別れもけっこう早いのかもな……。


ミナが帰ったあとで、政嗣が来た。

「大丈夫か?」

顔をのぞき込む政嗣に、

「うん、ああ、大丈夫だって。……めんどうかけたな、ありがとうな」

言いながら、起き上がった。

「ああ、起きなくていいって。それと、おまえらのバイク、修理出しといたから」

「……本当かよ?」

「ああ、そんなかかんないで、直るらしいぜ?」

「わりぃ……ホント」

「いいって。あそこで会ったのも、なんかの縁だろ?」

口にして、政嗣はにっと笑って見せた。


「それよりおまえ、早くケガ治せや」

「ああ、ありがとうな、ホント」

もう一度寝ようとすると、政嗣の奴がふとんをかけ直そうとしてくれた。

「いいって……」 

「照れるなってー」

政嗣は笑いながら、ふとんを俺の胸まで引き上げると、

「じゃあ、また来るし」

と、軽く手を振って病室を出ていった──。