正夢のケガは手当てで済んだが、俺の傷はけっこう深くて、少し病院に泊まることになった。
呼ばれてきた父親と母親は、しかめた顔で不満をぶちまけた。
「おまえは、何をやってるんだ!」
「バイクで事故なんて……どういうことなの?!」
「迷惑ばっかりかけて、いいかげんにしろ」
「本当に、もう。なんでこうも出来が悪いのかしら……」
ベッドわきでぶつぶつとグチり続ける両親に、
正夢が、
「もういいでしょう」
と、口を出した。
「彼は、キズを負ってるんですよ……なのに、そんな言い方ないと思いますが?」
正夢の顔を、父親がキッとにらみつける。
「本人が本人なら、友達も友達だな……。大人に対して、そんなえらそうな口をたたくとは」
「ホント……、どうせロクでもない仲間なんでしょ……」
母親が、父親の言葉にうなずいて見せる。
「もう……帰ってくれませんか? 彼は、俺が看ますんで」
正夢が話を遮って、病室から俺の両親を追い出した。
扉を閉め、ふぅーっと正夢が息をつく。
「悪いな……正夢」
声をかけると、
「いいよ……」
正夢がポツッと呟いた。
「あんな親……信じらんねぇ。なんで心配ぐらい、できないんだよ……」
「おまえが、そんなの言うことないって……。あんなの前からだし、俺は気にしてねぇから……」
「けど…いいのかよ、涼は、あれで」
「いいんだよ。あいつらには、頭のイイ姉ちゃんだけいれば、いいらしいし。俺には、なんの期待もしない代わりに、せめて、もう迷惑かけるなとかって思ってるんだろうからな……」
「だけど、涼……」
「おまえが、気にするなって。いつものことだし、ホントもういいから」
まだ何か言いたげな正夢を止めて、
「少し眠るから」と、言った。
ふとんをかけ直して、無理やりに目を閉じると、俺はそのまま眠りについた。
──次の日、病室のベッドで目を覚ますと、ミナが来てた。
「涼、学校でケガしたって聞いたから、びっくりして……」
「そうかよ……」
こんな状態で、別にオンナなんかに会いたくもなかった。
「大丈夫なの?」
「まぁ見たとおり。足と手ぇ切った」
「痛そう……」
「そうだな。手は、傷が残るらしいけど」
「傷が残るの? ウソ……」
ミナが、わざとらしく口に手をあてる。
「いいけど、別に。俺は、気にしてねぇし」
「そうなの……?」
「ああ、俺の責任だしな、いいよ」
「俺の……? だけどバイク運転してたのって、友達の春武さんの方なんでしょ?」
「……正夢は、悪くないし。あおったのは、俺なんだから……」
「だけど、その人のせいで、涼に傷まで残るのに……」
「正夢のせいじゃないって、言ってんだろ。つまんねぇこと言うんなら、もう帰れや」
「ごめんなさい、でも……」
「もう、いいよ。帰れって……」
俺は、横を向いて寝たふりをした。
「じゃあ……」と、ミナが背中を向け、病室を出て行く。
こんな風にしか付き合えないんじゃ、しょせん彼女との別れもけっこう早いのかもな……。
ミナが帰ったあとで、政嗣が来た。
「大丈夫か?」
顔をのぞき込む政嗣に、
「うん、ああ、大丈夫だって。……めんどうかけたな、ありがとうな」
言いながら、起き上がった。
「ああ、起きなくていいって。それと、おまえらのバイク、修理出しといたから」
「……本当かよ?」
「ああ、そんなかかんないで、直るらしいぜ?」
「わりぃ……ホント」
「いいって。あそこで会ったのも、なんかの縁だろ?」
口にして、政嗣はにっと笑って見せた。
「それよりおまえ、早くケガ治せや」
「ああ、ありがとうな、ホント」
もう一度寝ようとすると、政嗣の奴がふとんをかけ直そうとしてくれた。
「いいって……」
「照れるなってー」
政嗣は笑いながら、ふとんを俺の胸まで引き上げると、
「じゃあ、また来るし」
と、軽く手を振って病室を出ていった──。
呼ばれてきた父親と母親は、しかめた顔で不満をぶちまけた。
「おまえは、何をやってるんだ!」
「バイクで事故なんて……どういうことなの?!」
「迷惑ばっかりかけて、いいかげんにしろ」
「本当に、もう。なんでこうも出来が悪いのかしら……」
ベッドわきでぶつぶつとグチり続ける両親に、
正夢が、
「もういいでしょう」
と、口を出した。
「彼は、キズを負ってるんですよ……なのに、そんな言い方ないと思いますが?」
正夢の顔を、父親がキッとにらみつける。
「本人が本人なら、友達も友達だな……。大人に対して、そんなえらそうな口をたたくとは」
「ホント……、どうせロクでもない仲間なんでしょ……」
母親が、父親の言葉にうなずいて見せる。
「もう……帰ってくれませんか? 彼は、俺が看ますんで」
正夢が話を遮って、病室から俺の両親を追い出した。
扉を閉め、ふぅーっと正夢が息をつく。
「悪いな……正夢」
声をかけると、
「いいよ……」
正夢がポツッと呟いた。
「あんな親……信じらんねぇ。なんで心配ぐらい、できないんだよ……」
「おまえが、そんなの言うことないって……。あんなの前からだし、俺は気にしてねぇから……」
「けど…いいのかよ、涼は、あれで」
「いいんだよ。あいつらには、頭のイイ姉ちゃんだけいれば、いいらしいし。俺には、なんの期待もしない代わりに、せめて、もう迷惑かけるなとかって思ってるんだろうからな……」
「だけど、涼……」
「おまえが、気にするなって。いつものことだし、ホントもういいから」
まだ何か言いたげな正夢を止めて、
「少し眠るから」と、言った。
ふとんをかけ直して、無理やりに目を閉じると、俺はそのまま眠りについた。
──次の日、病室のベッドで目を覚ますと、ミナが来てた。
「涼、学校でケガしたって聞いたから、びっくりして……」
「そうかよ……」
こんな状態で、別にオンナなんかに会いたくもなかった。
「大丈夫なの?」
「まぁ見たとおり。足と手ぇ切った」
「痛そう……」
「そうだな。手は、傷が残るらしいけど」
「傷が残るの? ウソ……」
ミナが、わざとらしく口に手をあてる。
「いいけど、別に。俺は、気にしてねぇし」
「そうなの……?」
「ああ、俺の責任だしな、いいよ」
「俺の……? だけどバイク運転してたのって、友達の春武さんの方なんでしょ?」
「……正夢は、悪くないし。あおったのは、俺なんだから……」
「だけど、その人のせいで、涼に傷まで残るのに……」
「正夢のせいじゃないって、言ってんだろ。つまんねぇこと言うんなら、もう帰れや」
「ごめんなさい、でも……」
「もう、いいよ。帰れって……」
俺は、横を向いて寝たふりをした。
「じゃあ……」と、ミナが背中を向け、病室を出て行く。
こんな風にしか付き合えないんじゃ、しょせん彼女との別れもけっこう早いのかもな……。
ミナが帰ったあとで、政嗣が来た。
「大丈夫か?」
顔をのぞき込む政嗣に、
「うん、ああ、大丈夫だって。……めんどうかけたな、ありがとうな」
言いながら、起き上がった。
「ああ、起きなくていいって。それと、おまえらのバイク、修理出しといたから」
「……本当かよ?」
「ああ、そんなかかんないで、直るらしいぜ?」
「わりぃ……ホント」
「いいって。あそこで会ったのも、なんかの縁だろ?」
口にして、政嗣はにっと笑って見せた。
「それよりおまえ、早くケガ治せや」
「ああ、ありがとうな、ホント」
もう一度寝ようとすると、政嗣の奴がふとんをかけ直そうとしてくれた。
「いいって……」
「照れるなってー」
政嗣は笑いながら、ふとんを俺の胸まで引き上げると、
「じゃあ、また来るし」
と、軽く手を振って病室を出ていった──。

