17歳の、刹那。

「正夢、放課後どうすんの?」

「教習所に行く。今日、実技試験なんだ」

「すげぇじゃん。やっとおまえとバイク乗れんだな!」

「いや、まだ免許取れてねぇって」

「免許取れたら、一番最初に俺乗っけろよ、な?」

「ああ、わかったって」


俺は、バイクの免許は16になったと同時に取ってて、

正夢にはずいぶん前から、免許取れよって話してた。

早く、あいつといっしょに、バイクで走りたかったし。


――放課後、ミナがいっしょに帰ろうと誘ってきた。

正夢もいないし、別にヒマだしと思って、いっしょに帰ることにした。


「佐倉さんって、何が好きなんですか?」

「何って……? ああ……それと、俺、涼でいいし」

「涼……って、呼んでいいの?

じゃあ、私のことはミナって、呼んでくださいね」

「ああ……うんで、なんの話?」

「涼……、好きなこととか、ないのかな?って思って……」

「好きなこと? バイクとか……」

「バイク、好きなんですか?」

「うん」とうなずく。


「…なら、今度乗せてくれませんか?」

「乗せる……?」

ミナが、当然のような顔でにこにこと笑ってる。


乗せたくないんだけど……乗せたって、キャーキャーうるさいだけだし。

乗りたいっていうから乗せると、スピード上げただけで、騒いでしがみついて、ジャマくさくてしょうがない。

オンナなんて、俺のバイクには乗せたくない。


「ダメ、ですか?」

ミナが、首を傾げて俺を上目に見る。

「ああ、いいけど……今度、な」

俺は、無難に返事をした。

そうでも言っとかないと、また乗せたくない理由を教えなきゃならない。



なぁ正夢、とっとと免許取れればいいのに。

俺、おまえと、早く走りてぇよ。



数日後、

「免許、取れたぜ」

と、正夢から知らせがきた。


「だったら今夜、走りにいこうぜ!」

「今夜……って、いきなりかよ?」

「いきなりだから、いいんじゃん。バイクは、俺の貸すし」

「う~ん……じゃあ、まぁいっか」

「それじゃ、バイト終わったら、走りに行こうぜ?」


俺と正夢は、ガソリンスタンドでバイト中。

正夢はバイト代で免許取って、バイクも金ためて買うとか言ってた。


バイト終わってから、正夢を乗っけて、街はずれにある峠道に向かった。

「ここなら、思いっきり走れるだろ?」

峠を上ったところで、バイクを下りる。


「ほら前乗れや、正夢」

「ああ……」

「何おまえ、ビビッてんの?」

「あたりまえだろうが。まだ、免許取ったばっかだっつーのに……」

「だいじょぶだって。俺がケツに乗ってやっからさ」

「後ろからあおるなよ? おまえ……」

「わかってるって」

言いながら、ハンドルを握る正夢の後ろにまたがった。


峠をそろそろと下る正夢に、

「もっとスピード出せ!」

大声であおり立てる。

「あおるなって、だから……」

「こんなゆるゆる走ったって、つまんねぇだろ!もっとスピード上げろや!」

俺の言葉に、正夢が徐々に疾ばし出す。

「もっとだよ! もっと! もっと、疾ばせや! 正夢!」

高まるエンジン音に、体が熱くなってくるのを感じる。

「もっとだって……!」

俺は、コーナーで叫んだ。

正夢が、俺の声に、思いっきりアクセルを噴かした。



ヤバイと思った、瞬間、


カーブを曲がり切れずに、

バイクは、横っ腹からガードレールにつっ込んだ。



横倒しになったバイクが、ガケの方に滑っていく。

正夢が、とっさにブレーキをかけたらしくて、それほど強い衝撃はなかったけど、

バイクが倒れた時、足をどっか切ったみたいで、起きれなかった。

砕けたライトの破片なんかで、腕もなんかえぐったらしかった。