「なぁ、正夢|《まさむ》。また俺、告られちった」
「なんだよ、またかよ。で、ちゃんと断ったのか?」
正夢は、俺のダチ。俺が、唯一なんでも話せるヤツ。
「断んのめんどくせぇし……」
「んだよ……じゃあまた、付き合うのかよ? おまえは、いつもそうやって簡単にOKしといて、すぐ別れるんだから、ちゃんとしろって……」
「ああ、もううるせぇ! うんなこと、おまえに言われなくても、わかってるっつーの」
「わかってんなら……」
まだしゃべろうとする正夢の口に、棒付きキャンディーをつっ込んだ。
自分も包み紙をむいて、キャンディーを口に入れる。
ほんとは、タバコでも吸いてぇ気分だけど、見つかったら停学確定だし。
あーあ、つまんねぇな……。
正夢とは、小中高ともう長い付き合いになる。
いわゆる幼なじみってやつで、実は幼稚園もいっしょだったり。
2月生まれの俺とは、1月11日が誕生日で年がちょっと上ってだけで、
こいつは何かとアニキ面をする。
でもいいかげんな性格で、まわりとぶつかることも多い俺と、
いつもいっしょにいて、一番俺をわかってくれてる存在、
それが、正夢――春武 正夢(はるたけ まさむ)だった。
スマホが震えて、ポケットから出して見ると、さっきのオンナからの着信。
なんだよ、もうメッセージ入れてくんのかよ?
さっきは、ありがとうございました。
佐倉さんと付き合えるなんて、
ウソみたいです(>_<)
ずっと好きで、でも佐倉さんモテるから、
彼女いるんだろうなって思ってて、
私が彼女になれるなんて、
思ってなかったんで(*^_^*)
これから、ヨロシクです。
ミナ
読み終わって、「ああ……そう……」と、ため息混じりに呟いた。
「彼女から、なんかきたのか?」
と、正夢が訊いてくる。
「ああ、ついさっき、彼女になったばっかのから……」
「そっか。おまえさ、少しはオンナのこと大事にしてやれや? 付き合って捨てるだけじゃ、かわいそうだろ……」
「別に、捨ててるわけじゃないし。振られてんの、俺の方だし……」
「おまえが、なんもかまってやらないからだろ」
「好きでもないのに、なんでかまうんだよ……」
俺の言葉に、正夢がため息をつく。
「好きでもないんなら、付き合うなって、言ってるだろ……だから」
正夢がえらそうに、説教じみた言い方をする。
「……だって、しょうがねぇじゃん。好きって向こうから勝手に言ってくんだし。俺、別に好きなコとかいねぇし、だったら付き合っても問題ねぇかなって」
正夢の言い草に、なんとなくイラつく俺。
「問題、あるだろうが……」
正夢が、仕方なさげに口にする。
正夢の言いたいことは、わかってる。
わかってるけど、本当に誰かを好きになるなんてことが、
どういうことなのか、俺にはよくわからない。
付き合おうって言われるんで、ただ付き合ってるだけで、
付き合ったからって、別に相手を好きにも嫌いにもならない。
本当に誰かを好きになるなんてことは、あんまわからなくて、
俺には、こんな付き合い方しかできないんじゃないかって、思ってる。

