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「真昼。報われる可能性が高い努力はしておきなさい。将来役立つものなら、余計にだ」
父の言葉。真昼には将来苦労して欲しくないんだよ、と続くそれを、私は何回聞いたのだろう。
私に、1日の中で一瞬しかない一番明るい時間帯の名前を付けたのも、父だったと聞いた。
穏やかな人だったと記憶している。
怒鳴られたことはなかった。ただ「やるべきこと」をやらないと、父は私と向かい合って座り、滔々と語った。言い聞かせた。
報われる可能性が高い努力はしておきなさい。真昼には、将来苦労して欲しくないんだ、と。
陽が沈む前には家に帰ってきて、机に向かう。父が帰ってきて、夜が更けていく。娯楽を明確に禁じられたわけではないけど、欲しいと言えば「やるべきことをやる時間はちゃんと残る?」。「やるな」と言われるよりも、心が痛む分削られていく。従順に、穏やかに、余計なことは考えずに。そんな風に生きる方が楽だと気付くのに、時間はかからなかった。
そんな私の唯一の反抗が、もしかしたらこっそりと書き溜めていた物語の断片だったのかもしれない。
思えば、父からの呼び掛けに答える以外、特に声を出す機会がなかった気がする。
だから、父が会社で何かをやらかして突然消えた後に、私の声がすうっと溶けるように消えてしまったのは、自然なことだったのかもしれない。
『……努力って報われないものだな』
父から電話があった夜、父が帰ってくることはなかった。その翌日も、そのまた翌日も。
父が消えたのは、私の18歳の誕生日。
桜の花が咲き始める頃だった。
「真昼。報われる可能性が高い努力はしておきなさい。将来役立つものなら、余計にだ」
父の言葉。真昼には将来苦労して欲しくないんだよ、と続くそれを、私は何回聞いたのだろう。
私に、1日の中で一瞬しかない一番明るい時間帯の名前を付けたのも、父だったと聞いた。
穏やかな人だったと記憶している。
怒鳴られたことはなかった。ただ「やるべきこと」をやらないと、父は私と向かい合って座り、滔々と語った。言い聞かせた。
報われる可能性が高い努力はしておきなさい。真昼には、将来苦労して欲しくないんだ、と。
陽が沈む前には家に帰ってきて、机に向かう。父が帰ってきて、夜が更けていく。娯楽を明確に禁じられたわけではないけど、欲しいと言えば「やるべきことをやる時間はちゃんと残る?」。「やるな」と言われるよりも、心が痛む分削られていく。従順に、穏やかに、余計なことは考えずに。そんな風に生きる方が楽だと気付くのに、時間はかからなかった。
そんな私の唯一の反抗が、もしかしたらこっそりと書き溜めていた物語の断片だったのかもしれない。
思えば、父からの呼び掛けに答える以外、特に声を出す機会がなかった気がする。
だから、父が会社で何かをやらかして突然消えた後に、私の声がすうっと溶けるように消えてしまったのは、自然なことだったのかもしれない。
『……努力って報われないものだな』
父から電話があった夜、父が帰ってくることはなかった。その翌日も、そのまた翌日も。
父が消えたのは、私の18歳の誕生日。
桜の花が咲き始める頃だった。



