僕は後ろから2番目、一番窓側の席だ。
ここの席はかなり気に入っている。あまり授業では当てられないし、夏は暑いけどこれから寒くなっていく季節にはちょうどいい。
ご近所さんも1人を除いては当たりだと最近は思い始めている。
教室に着くころにはいつも半分くらいの人数が集まっていて、ゆっくり支度をすればちょうどいい時間だ。
「はよ、葵」
顔を上げると隣の席の拓也が朝練から帰ってきたようだ。巧也はバスケ部で背が高く、ルックスがいい。自分軽話しかけることはほぼないが、話しかけられた際はきちんと返すようにはしている。
「ん、おはよ」
「なあ今日って班で集まれるときあるか?」
班活動の課題の話し合いをしたいんだろう。こういうところで人の性格って表れるよなとつくづく思う。拓也は真面目で妥協したくないという意思を感じることが時々ある。
「僕は予定詰まってないから集まれるよ」
僕はあまり気にしてない課題だったがやりたいと言うなら付き合える。バレー部には途中から参加すればいい。ほかの班員は拓也が集めてくれるんだろう。1人来るかわからないのもいるけれど。
チャイムと同時に担任が教室に入ってきた。
ん?なんか目が合ったような気がするけどまあいっか。
「起立、礼」
「おはようございます」
まばらな挨拶が朝の教室にこだまする。
机に伏せて立ち上がらずに寝続けるやつ。1時間目の小テストに向けて悪あがきをしてるやつ。
誰も注意をすることはない。これがいつもどおりの光景だ。
やる気の無さが滲み出る朝の教室にはどんよりした空気が漂う。淡々とホームルームが進められる。完全な流れ作業だ。
途端立て付けの悪いドアが開き、フットワークの軽やかな人物が入ってくる。
「おはようございますっ」
重苦しい空気に明るい声が響く。
重い空気をガラッと入れ替えた彼女は紛れもないクラスのムードメーカー。
そして僕の後ろの席に腰を下ろした。クラスは明るくなるも僕の気分は下落傾向だ。
遅刻してきた彼女はとっても機嫌が良く鼻歌でも歌い出しそうだ。
「瀬戸さん!あなたはいつもどうしてそう」
大げさなため息をついた担任の松崎先生。
「でも誰にも迷惑かけることしてないよ」
いつもなら「はーい、次からは気をつけまーす」で終わるところが今日はなんだか違う。
少し拗ねた顔をしたあとに不敵な笑みを浮かべたところを僕は見逃さなかった。
「でもさーザッキー、鞄だって」
ザッキーは彼女がつけた松崎先生のあだ名だ。
「怖いセンセイにはあだ名つけたほうがいいんだよー」とクラス替え当日あだ名をつけていた。
ホームルームが始まる前から鞄は確かに机のにかけられており、彼女が登校時間に間に合っていることを示している。僕を後ろから突いて参戦を要求してくる。
僕がそんな事に乗るわけない。
「教室にいないと遅刻です。あなたが何の連絡もなしに学校に遅刻すると出席を取るのに時間がかかるんです。遅刻なら連絡をしっかりしてきなさい」松崎先生はくぎを差す。
「え、どうして?お兄ちゃんから連絡なかった?」カラっと答える彼女には全く悪気がない。
するとなぜかザッキーは「わかりました」と遅刻の免除を認めた。
彼女の名前は瀬戸まなみ。僕が昨日捕まえ損なった瀬戸湊の双子の妹だ。
「黒川さん、このあとちょっと時間いいかしら」
ホームルーム終わりにザッキーは僕に声をかけてきてついてくるように促された。
「葵ってザッキーのお気に入りだよな」後ろのまなみがウンウン頷く。
「そうかな」怖い先生ではないと思うんだけど、怒られるようなことしたかな。
心当たりがまるでない。廊下に出た僕はザッキーから封筒を渡された。
「無理に強要はしないけど、やってくれるといいなあって思って。必要なことは質問があったらいつでも聞いて」
わけがわからないけど一応頷いた僕を見てザッキーは行ってしまった。教室に戻ろうとしたら拓也とまなみがドアに張り付いて僕のことを見ていた。今にも問い詰められそうで怖い。
反対側のドアから教室へ入った僕は椅子に座り、単語テストの勉強のふりをする。
「ねーねー」
瀬戸まなみだ。勉強中のクラスメイトに話しかけてくるとまでは思わなかった。
「本、読めてるの?天才だね」二人が変顔してくねくねしている。
「おまえ、マジで面白いな」意味もわからず二人を見るとこらえきれないというふうに笑い出す。
「?」
単語帳を読もうとすると読めない。逆になってる!
恥ずかしさのあまり顔を上げられない僕の後ろで笑い声がコソコソと聞こえる。
うーあーーもー!!声がデカいんだよ!
ここの席はかなり気に入っている。あまり授業では当てられないし、夏は暑いけどこれから寒くなっていく季節にはちょうどいい。
ご近所さんも1人を除いては当たりだと最近は思い始めている。
教室に着くころにはいつも半分くらいの人数が集まっていて、ゆっくり支度をすればちょうどいい時間だ。
「はよ、葵」
顔を上げると隣の席の拓也が朝練から帰ってきたようだ。巧也はバスケ部で背が高く、ルックスがいい。自分軽話しかけることはほぼないが、話しかけられた際はきちんと返すようにはしている。
「ん、おはよ」
「なあ今日って班で集まれるときあるか?」
班活動の課題の話し合いをしたいんだろう。こういうところで人の性格って表れるよなとつくづく思う。拓也は真面目で妥協したくないという意思を感じることが時々ある。
「僕は予定詰まってないから集まれるよ」
僕はあまり気にしてない課題だったがやりたいと言うなら付き合える。バレー部には途中から参加すればいい。ほかの班員は拓也が集めてくれるんだろう。1人来るかわからないのもいるけれど。
チャイムと同時に担任が教室に入ってきた。
ん?なんか目が合ったような気がするけどまあいっか。
「起立、礼」
「おはようございます」
まばらな挨拶が朝の教室にこだまする。
机に伏せて立ち上がらずに寝続けるやつ。1時間目の小テストに向けて悪あがきをしてるやつ。
誰も注意をすることはない。これがいつもどおりの光景だ。
やる気の無さが滲み出る朝の教室にはどんよりした空気が漂う。淡々とホームルームが進められる。完全な流れ作業だ。
途端立て付けの悪いドアが開き、フットワークの軽やかな人物が入ってくる。
「おはようございますっ」
重苦しい空気に明るい声が響く。
重い空気をガラッと入れ替えた彼女は紛れもないクラスのムードメーカー。
そして僕の後ろの席に腰を下ろした。クラスは明るくなるも僕の気分は下落傾向だ。
遅刻してきた彼女はとっても機嫌が良く鼻歌でも歌い出しそうだ。
「瀬戸さん!あなたはいつもどうしてそう」
大げさなため息をついた担任の松崎先生。
「でも誰にも迷惑かけることしてないよ」
いつもなら「はーい、次からは気をつけまーす」で終わるところが今日はなんだか違う。
少し拗ねた顔をしたあとに不敵な笑みを浮かべたところを僕は見逃さなかった。
「でもさーザッキー、鞄だって」
ザッキーは彼女がつけた松崎先生のあだ名だ。
「怖いセンセイにはあだ名つけたほうがいいんだよー」とクラス替え当日あだ名をつけていた。
ホームルームが始まる前から鞄は確かに机のにかけられており、彼女が登校時間に間に合っていることを示している。僕を後ろから突いて参戦を要求してくる。
僕がそんな事に乗るわけない。
「教室にいないと遅刻です。あなたが何の連絡もなしに学校に遅刻すると出席を取るのに時間がかかるんです。遅刻なら連絡をしっかりしてきなさい」松崎先生はくぎを差す。
「え、どうして?お兄ちゃんから連絡なかった?」カラっと答える彼女には全く悪気がない。
するとなぜかザッキーは「わかりました」と遅刻の免除を認めた。
彼女の名前は瀬戸まなみ。僕が昨日捕まえ損なった瀬戸湊の双子の妹だ。
「黒川さん、このあとちょっと時間いいかしら」
ホームルーム終わりにザッキーは僕に声をかけてきてついてくるように促された。
「葵ってザッキーのお気に入りだよな」後ろのまなみがウンウン頷く。
「そうかな」怖い先生ではないと思うんだけど、怒られるようなことしたかな。
心当たりがまるでない。廊下に出た僕はザッキーから封筒を渡された。
「無理に強要はしないけど、やってくれるといいなあって思って。必要なことは質問があったらいつでも聞いて」
わけがわからないけど一応頷いた僕を見てザッキーは行ってしまった。教室に戻ろうとしたら拓也とまなみがドアに張り付いて僕のことを見ていた。今にも問い詰められそうで怖い。
反対側のドアから教室へ入った僕は椅子に座り、単語テストの勉強のふりをする。
「ねーねー」
瀬戸まなみだ。勉強中のクラスメイトに話しかけてくるとまでは思わなかった。
「本、読めてるの?天才だね」二人が変顔してくねくねしている。
「おまえ、マジで面白いな」意味もわからず二人を見るとこらえきれないというふうに笑い出す。
「?」
単語帳を読もうとすると読めない。逆になってる!
恥ずかしさのあまり顔を上げられない僕の後ろで笑い声がコソコソと聞こえる。
うーあーーもー!!声がデカいんだよ!
