「ただいま」
靴を脱ぐ前にリビングのほうに声をかける。
今日はお母さんは遅いみたい。リビングの電気はついている。姉ちゃんが夜ご飯を作ってくれたんだ。
バタバタと階段を駆け上がり自分の部屋にカバンを投げ捨てる。向かいの部屋は姉ちゃんの部屋だ。
家まで全速力で走りきった僕は疲れ切っていた。でもまだやることがのこっている。
「姉ちゃんただいまっ」姉ちゃんの部屋をノックして返事を待つ。
「おかえり」
ふわっとのんびり優しい返事。世界で一番大好きな安心する声。この声の貴重さを僕は誰より知ってる。
僕に重くのしかかっていた疲れにエネルギーが追加される。急いで寝間着を用意しお風呂にはいる。
お風呂から出てきた僕をリビングで待ってくれているはずだ。
「お風呂ありがと」
ほんとはゆっくり浸かりたくはないけど姉ちゃんが準備してお湯を沸かしているからありがたくはいらないと。
テーブルの上に置かれたカルボナーラはつやつやできれいに巻かれている。粉チーズの香りがする。美味しそう。
「雨降っちゃったね。すぐお風呂入った?」
僕は帰ってきてはじめて姉ちゃんに会えた。今日は大学の講義が早く終わったみたいだ。
僕がブローしたかった姉ちゃんの髪はもう乾き終わっていた。下の方がぴょこぴよゎこはねている。それも可愛いけども。
「だいじょうぶだよ」
ねえちゃんにはぼくがお風呂から出るまでは会わないようにお願いしている。ほんとは一番に会いたいけどゆっくり話せる時間が好きだから。
「傘持ってってなかったこと知ってたの?」
廊下を姉ちゃんが指差す。雨で僕が濡らしてしまったところを拭いてくれたらしい。
「いただきます」
熱っ。スパゲッティーはまだ茹でたてだった。白いモヤが揺れている。フォークを持つ手を下ろしたら姉ちゃんはほほ笑ましそうに笑っている。
「明日部活出てくるから今日より遅くなると思う」
僕が一番好きな時間である姉ちゃんと過ごす時間を少しでも長くしたい。帰れるときは早く帰るようにしている。
部活に入部しないつもりだったけど「そこまではやめて」って。姉ちゃんに心配かけちゃうから部活にはいらないといけなかったんだよな。
「わかった。待ってるね」
待ってるなんて言われたら行きたくなくなってしまう。僕の気落ちした気分を知ってか知らずか。姉ちゃんがもし学校に行っていたら去年まで一緒に通えていたのに。
「紫苑も学校好きだったなあ」
学校の話につなげたかったわけじゃない。思わずカルボナーラをすする。ソースが絡まって口のなかでほどけていく。
「紫苑は何がいけなかったのかな」
「姉ちゃんはなにもだめじゃない。姉ちゃんを追い詰めたのって誰なんだよ」
わかってる。姉ちゃんに思い出させるようなことはするべきじゃない。でも学校に原因があるのは確かなんだ。
「僕が絶対捕まえるから」
複雑そうな顔をする姉ちゃん。姉ちゃんが優しいからって許していいわけない。僕は謝りもしないやつを許さない。
「姉ちゃんみたいにうまくできないよ。どうしたらいい?」
姉ちゃんが学校にいけなくなったのは僕が1年の夏ごろだ。今まで普通に通っていて、家の中では何も変化がなかった。家族の誰も姉ちゃんの異変には気づけなかった。
それからもう1年ほどたっているけど、何もまだ分かっていない。姉ちゃんも詳しいことは何も話さない。
「紫苑はさっくんがいてくれるだけで十分だよ」
ふわっと砂糖菓子みたいに甘い笑顔。つつみ込んでくれるみたいた包容力。これだけで心があったまる。
姉ちゃんのために帰ってきてるのもあるけど姉ちゃんに会いたいから僕が帰ってきたいだけなんだよ。
姉ちゃんが学校にいけなくなったとき、田舎で療養するという話が上がった。静かな環境で体と心を休めるのはどうかって。家族は全員賛成で姉ちゃんも了承していた。
でも僕だけが反対した。どうしても離れたくなくて駄々をこねた。だけどそれが恥だったとは今も思っていない。
僕が姉ちゃんを守るからね。
靴を脱ぐ前にリビングのほうに声をかける。
今日はお母さんは遅いみたい。リビングの電気はついている。姉ちゃんが夜ご飯を作ってくれたんだ。
バタバタと階段を駆け上がり自分の部屋にカバンを投げ捨てる。向かいの部屋は姉ちゃんの部屋だ。
家まで全速力で走りきった僕は疲れ切っていた。でもまだやることがのこっている。
「姉ちゃんただいまっ」姉ちゃんの部屋をノックして返事を待つ。
「おかえり」
ふわっとのんびり優しい返事。世界で一番大好きな安心する声。この声の貴重さを僕は誰より知ってる。
僕に重くのしかかっていた疲れにエネルギーが追加される。急いで寝間着を用意しお風呂にはいる。
お風呂から出てきた僕をリビングで待ってくれているはずだ。
「お風呂ありがと」
ほんとはゆっくり浸かりたくはないけど姉ちゃんが準備してお湯を沸かしているからありがたくはいらないと。
テーブルの上に置かれたカルボナーラはつやつやできれいに巻かれている。粉チーズの香りがする。美味しそう。
「雨降っちゃったね。すぐお風呂入った?」
僕は帰ってきてはじめて姉ちゃんに会えた。今日は大学の講義が早く終わったみたいだ。
僕がブローしたかった姉ちゃんの髪はもう乾き終わっていた。下の方がぴょこぴよゎこはねている。それも可愛いけども。
「だいじょうぶだよ」
ねえちゃんにはぼくがお風呂から出るまでは会わないようにお願いしている。ほんとは一番に会いたいけどゆっくり話せる時間が好きだから。
「傘持ってってなかったこと知ってたの?」
廊下を姉ちゃんが指差す。雨で僕が濡らしてしまったところを拭いてくれたらしい。
「いただきます」
熱っ。スパゲッティーはまだ茹でたてだった。白いモヤが揺れている。フォークを持つ手を下ろしたら姉ちゃんはほほ笑ましそうに笑っている。
「明日部活出てくるから今日より遅くなると思う」
僕が一番好きな時間である姉ちゃんと過ごす時間を少しでも長くしたい。帰れるときは早く帰るようにしている。
部活に入部しないつもりだったけど「そこまではやめて」って。姉ちゃんに心配かけちゃうから部活にはいらないといけなかったんだよな。
「わかった。待ってるね」
待ってるなんて言われたら行きたくなくなってしまう。僕の気落ちした気分を知ってか知らずか。姉ちゃんがもし学校に行っていたら去年まで一緒に通えていたのに。
「紫苑も学校好きだったなあ」
学校の話につなげたかったわけじゃない。思わずカルボナーラをすする。ソースが絡まって口のなかでほどけていく。
「紫苑は何がいけなかったのかな」
「姉ちゃんはなにもだめじゃない。姉ちゃんを追い詰めたのって誰なんだよ」
わかってる。姉ちゃんに思い出させるようなことはするべきじゃない。でも学校に原因があるのは確かなんだ。
「僕が絶対捕まえるから」
複雑そうな顔をする姉ちゃん。姉ちゃんが優しいからって許していいわけない。僕は謝りもしないやつを許さない。
「姉ちゃんみたいにうまくできないよ。どうしたらいい?」
姉ちゃんが学校にいけなくなったのは僕が1年の夏ごろだ。今まで普通に通っていて、家の中では何も変化がなかった。家族の誰も姉ちゃんの異変には気づけなかった。
それからもう1年ほどたっているけど、何もまだ分かっていない。姉ちゃんも詳しいことは何も話さない。
「紫苑はさっくんがいてくれるだけで十分だよ」
ふわっと砂糖菓子みたいに甘い笑顔。つつみ込んでくれるみたいた包容力。これだけで心があったまる。
姉ちゃんのために帰ってきてるのもあるけど姉ちゃんに会いたいから僕が帰ってきたいだけなんだよ。
姉ちゃんが学校にいけなくなったとき、田舎で療養するという話が上がった。静かな環境で体と心を休めるのはどうかって。家族は全員賛成で姉ちゃんも了承していた。
でも僕だけが反対した。どうしても離れたくなくて駄々をこねた。だけどそれが恥だったとは今も思っていない。
僕が姉ちゃんを守るからね。
