好きな人の、その隣で  〜片想い同盟〜

「やっときてくれたわね♡」

美人の先輩に声をかけられるのと、雫が顔をしかめるのは同時だった。
南野杏花(みなみの きょうか)3年。
去年のミスコン堂々1位。
しかも陸上短距離全国1位の学校の華のような生徒。

なぜか雫はこの人に好かれてる…

「あらー何よ!顔しかめちゃって、しかもあからさま!」

正直いってめんどくさい。ただこの人はどんだけ行ってもついてくるのだ。遠くで、翠が部活友達と一緒にこっちを向いて笑ってるのが見えるが、この際見なかったことにしておこう。

(こいつ私にとことん笑うなぁー)

ただ今は、目の前にいる強敵を倒すことだけに専念しよう。学校1モテてる人を倒すと言う言い方はファンにやられる覚悟があると言うことだが、どうしても鬱陶しいほど気に掛けてくださるお方なのだ。

「ごめんなさい。どいていただけませんか?ハードル出したいので、」

可愛くもない言葉に我ながらため息が出る。

「何よ!私はお気に入りに好かれてないみたい〜」

思いっ切り落胆した声を出してくる。すると部内の人全員が私を睨みつける。そう、杏花先輩は部長。私は杏花先輩のお気に入りと言う立場なのだ。

「それにさー。準備はいいから私の話聞いてよー」

これ以上部内の人間にヤなヤツだとは思われたくないので、先輩に引かれるがまま階段のほうに来ていた。急にいつもニコニコ顔の先輩がふと険しい顔になる。

「あのさマジな話で、シズちゃんを部長に推薦しようと思うんだよね。て言うかそうする」

杏花先輩を見ずに雲を見ていた。はずだが杏花先輩の顔を見入ってしまう。

(私が部長!?)

「だから、美術部は続けられないかも」

2人の間に初夏も爽やかな風が吹き通る。爽やかな風とは対比に二人の空気感は重たくも感じれる。

「なんちって!部長にするのは本当でも美術部を諦めてくれたらなーって思ったのも本当」

この雰囲気を一瞬で変えたのは先輩の方だった。でも先輩の言ってることは正しい。雫も思っていた。どちらかが諦めなくてはいけないと言うことを。辞めるとしたら美術部になるだろう。

(今年は色々なことが変化する夏なのかな)

いつのまにか源くんを想像している私がいたのは、多分私だけの秘密だ──。