◇
三時を回って小腹がすき、私たちはクレープ屋に来ていた。
クレープを店員から受け取り、先に席を確保していてくれた蒼葉の元へ向かう。
ありがとう、とお礼を伝え向かいの椅子に座ると、蒼葉はじっと私のクレープを捉えた。
「何にしたの?」
「いちごチョコ。蒼葉は?」
「バナナカスタードバニラアイスのせ」
「うわ、美味しそー!」
アイスのせか、私ものってるやつにすればよかったかなあ〜、なんて悔いても後の祭りだ。良いもん、いちごチョコだって美味しいし。
クレープを口に含むと、甘いクリームと卵とバターの優しい生地の味が広がった。んー美味しい!
幸せだと顔を緩ませていると、蒼葉が「はい」とスプーンをこっちに寄越した。スプーンにはバニラアイスが掬われている。
私は目を見開き、そのスプーンと蒼葉を見比べた。
「えっ、い、いいの?」
「いーよ。その代わりるりの、ちょうだい」
「もちろん!」
交換なら罪悪感はない。私は自分のクレープを蒼葉に渡すと、遠慮なく魅惑のバニラアイスを口にした。
ミルクが濃厚でとっても美味しい──ってあ、これ間接キスか?
ふと前のフユアヤの配信を思い出した。ここでちょっと豆知識、オタクは脳内に推しを飼ってるので考えてることがすぐ推しに繋がります(個人によって違います)。
フユアヤ、ごめんなさい。前に「友達同士で間接キスは普通じゃない」と心の中でツッコませてもらいましたが、やっぱり普通かもです。
認識を改めていると、「るり?」と声をかけられた。──後ろから。
「え」
聞き覚えのある声すぎて、口元が引きつる。で、でも、勘違いかもしれない、と振り返って。
勘違いじゃなかった。
「か、楓」
「あーやっぱりるりだ! 久しぶり!」
卒業後から会ってなかったから、五ヶ月ぶりぐらい……か。
ハーフアップに、前と変わらず可愛いコーデ、ハイテンション。
中学生時代の、同級生。
『え──気持ち悪ーい』
私にトラウマを残した、きっかけの人間。
「えっと……るりの友達?」
蒼葉が戸惑ったような声を上げる。明らかに私に問いかけてるのに、答えたのは楓だった。
「はい! るりの友達ですか? 私、るりの中学時代の友達で! 楓っていいます」
よろしくね、と蒼葉の手を取ろうとする楓。甘ったるい香水の匂いが鼻をついた。
──私はあんたに広瀬るりの友達って名乗ることを許した覚えはないのにね。
いやでも、……確かに前は友達って言ってたか。
「宮川蒼葉です。……その」
固まった私を心配するように蒼葉の視線が飛んでくる。その視線に釣られてまた楓が私を見て、改めてじっくりと見られた。
蒼葉が最初にやったみたいに。でも、その時とは視線が全然違くて。
品定めをしているような。次に言われる言葉が手に取るようにわかって、胸が冷えた。
「それにしても、ずいぶん変わったねるり。昔は──」
「わ、私、トイレ行ってくる!」
これあげる、と楓にクレープを押し付け、私は席を立ち上がりその場から逃げ出した。
三時を回って小腹がすき、私たちはクレープ屋に来ていた。
クレープを店員から受け取り、先に席を確保していてくれた蒼葉の元へ向かう。
ありがとう、とお礼を伝え向かいの椅子に座ると、蒼葉はじっと私のクレープを捉えた。
「何にしたの?」
「いちごチョコ。蒼葉は?」
「バナナカスタードバニラアイスのせ」
「うわ、美味しそー!」
アイスのせか、私ものってるやつにすればよかったかなあ〜、なんて悔いても後の祭りだ。良いもん、いちごチョコだって美味しいし。
クレープを口に含むと、甘いクリームと卵とバターの優しい生地の味が広がった。んー美味しい!
幸せだと顔を緩ませていると、蒼葉が「はい」とスプーンをこっちに寄越した。スプーンにはバニラアイスが掬われている。
私は目を見開き、そのスプーンと蒼葉を見比べた。
「えっ、い、いいの?」
「いーよ。その代わりるりの、ちょうだい」
「もちろん!」
交換なら罪悪感はない。私は自分のクレープを蒼葉に渡すと、遠慮なく魅惑のバニラアイスを口にした。
ミルクが濃厚でとっても美味しい──ってあ、これ間接キスか?
ふと前のフユアヤの配信を思い出した。ここでちょっと豆知識、オタクは脳内に推しを飼ってるので考えてることがすぐ推しに繋がります(個人によって違います)。
フユアヤ、ごめんなさい。前に「友達同士で間接キスは普通じゃない」と心の中でツッコませてもらいましたが、やっぱり普通かもです。
認識を改めていると、「るり?」と声をかけられた。──後ろから。
「え」
聞き覚えのある声すぎて、口元が引きつる。で、でも、勘違いかもしれない、と振り返って。
勘違いじゃなかった。
「か、楓」
「あーやっぱりるりだ! 久しぶり!」
卒業後から会ってなかったから、五ヶ月ぶりぐらい……か。
ハーフアップに、前と変わらず可愛いコーデ、ハイテンション。
中学生時代の、同級生。
『え──気持ち悪ーい』
私にトラウマを残した、きっかけの人間。
「えっと……るりの友達?」
蒼葉が戸惑ったような声を上げる。明らかに私に問いかけてるのに、答えたのは楓だった。
「はい! るりの友達ですか? 私、るりの中学時代の友達で! 楓っていいます」
よろしくね、と蒼葉の手を取ろうとする楓。甘ったるい香水の匂いが鼻をついた。
──私はあんたに広瀬るりの友達って名乗ることを許した覚えはないのにね。
いやでも、……確かに前は友達って言ってたか。
「宮川蒼葉です。……その」
固まった私を心配するように蒼葉の視線が飛んでくる。その視線に釣られてまた楓が私を見て、改めてじっくりと見られた。
蒼葉が最初にやったみたいに。でも、その時とは視線が全然違くて。
品定めをしているような。次に言われる言葉が手に取るようにわかって、胸が冷えた。
「それにしても、ずいぶん変わったねるり。昔は──」
「わ、私、トイレ行ってくる!」
これあげる、と楓にクレープを押し付け、私は席を立ち上がりその場から逃げ出した。
