幼馴染に恋を拗らせていたら、いつの間にか取り返しのつかないぐらい周りを巻き込んでいたらしい!

 ◇

 冬輝、俺、何かやらかした?

 配信が終わった途端、先手を打つように問えば。
 冬輝は、すっと瞳の温度を暗くした。

 そのまま、逃げるなよ、とでも言うように握られる手。恋人繋ぎ。
 当然のように絡められた手と手にドキッと胸を高鳴らせていると、冬輝は口を開いた。

「綾斗」
「……はい」
「この世には、ガチ恋勢という方達が存在するんだけど」
「はい」

 頷いた。推しに恋愛感情を抱いてる方……のことだよな?
 ごめん冬輝、全然話が見えてこない。

「“アヤ”も、人気活動者で、特に女子のファンが多い。これわかる?」
「は、……はい」
「と言うことは必然的にきっとガチ恋勢もいるわけで」

 ……俺に?
 ゆっくりと首を傾けた。

「それはいないと思う」
「かわいいしかっこいいし面白いし声がいい。いないわけない」
「は、ハイ」

 とりあえず俺が認めないと話が進まなそうなので相槌を打つと、はあーっと深く冬輝はため息をついた。

「だから、……簡単に愛してるなんて言わないで」

 ……ふうん?

 話をまとめると、こうだろう。ガチ恋勢もいる(俺はいないと思う)だと言うのに愛してるなんて言って希望を持たせるな、と。
 そして、少し拗ねたように膨らませた頬、照れたように赤く染まっている耳、怒っているような瞳。
 ──嫉妬。

「かわいい……」
「は?」

 思わずと言うように零せば、睨まれた。やばいと思って口をつぐんでも、まあ、もう言ってしまったものがなかったことになるわけもなく。
 途端にギギギッと握力が強くなり、焦っていると手を口元に持ってかれた。
 驚いて目を瞬いていると、刹那、手の甲にキスが落とされる。
 な、とポカンと口を開いた。

「……恋人として綾斗の全部が欲しいって思うの、何かおかしい?」

 一瞬で開き直りやがりましたよ。

 悪戯に落とされるキスの雨は、思わず変な気分になってしまうようなもので。
 慌てて手を引っ込める。目を泳がせ、のろのろと言葉を紡いだ。

「……愛してるって言ったのは、綾斗じゃなくてアヤだけど」

 まあ、見ていたのは……冬輝、だけど。そう彼を見上げれば。

「でも、“アヤ”も“綾斗”の一部だ」

 即答された。
 迷いなんて一瞬も見えなく、当然のことを言っているような速さで、トーンで。

 思わずゆるゆると目を見開いた。冬輝の言葉は不思議と納得できる重さがあって、抵抗も何もなく胸に染み込んでいく。……無意識にふは、と笑みを溢れさせた。

 ……なるほど。あー、確かにそうかも。

『俺、特にフユが好きで!』
『やっぱ俺もフユ大好きだな』
『お、俺も好きだよ、大好き!』
『君が好きです』
『……好きだよ?』

 全部、これは「フユアヤ」だからとか、ただの言い訳でしかなくて。
 結局アヤも綾斗もフユと冬輝が大好きなんだよな。……アヤも、綾斗で。そりゃ少しは違うところはあると思うけれど、偽物なんかじゃない。

 何故今まで気づかなかったのだろう。ふっと頬を緩めた。こちらからぎゅっと手を握ってみる。

「……欲張りだなあ」

 何だか泣きそうになったのを誤魔化すように笑うと、冬輝はしょうがない子を見るように目を細め、俺を抱きしめた。
 優しい手つきでそっと、髪を撫でられる。

「知らなかった? 俺、独占欲強いの」
「……知らなかった」
「俺もわかってたつもりなんだけど。何か綾斗と付き合って、悪化したみたい」

 だから責任取ってくれる? と、そんなかっこいい声で少女漫画のようなセリフを囁かれましても。取り方が分からないというか。
 冬輝の身体に手を回しながら、考えを巡らせ……一つのことを思いついた。

「……冬輝は、ファンのみんなに牽制をできればいいんだよ、な?」
「うん」
「じゃあ、」

 冬輝さえ良ければ。提案すれば、冬輝は驚いたように目を瞬き、「いいかも」と笑ってくれた。