幼馴染に恋を拗らせていたら、いつの間にか取り返しのつかないぐらい周りを巻き込んでいたらしい!

 ◇

 今日は「フユアヤ」として二人での雑談配信だ。

 十一月は受験勉強がそろそろ本格始動してくるのと、修学旅行があるので十月までとはいかないけれど配信をできる回数は少ない。
 だから上旬にたくさんやって、アーカイブを見て少しフユアヤのことを思い出してくれたらなーと。

 配信の時間になり、目を瞬いてから、笑顔でマイクに喋りかけた。

「一昨日ぶり! みんな元気だったー? ア、ヤ、と?」
「フ、ユ……んん、フユです。よろしくお願いします」
「あはっ、乗ろうとしてくれてありがとう」

【一昨日ぶりー!】
【こんばんは〜】
【フユくん笑笑】
【元気ですっ】
【アヤくんのノリに合わせようとして結局失敗したフユくん。二人ともかわいすぎる】
【か わ い い】
【最初からてえてえをありがとう】

 フユとそんなコメントに苦笑を零し、さてっと手を叩いた。

「今日はみんなに、たくさん話したいことがあるんだ。付き合ってくれる?」

 テストの結果のこと、文化祭のこと。
 この雑談配信のために、色々と話を大事に取っておいてきた。

【付き合います付き合います】
【付き合わせてください】
【言い方小悪魔すぎないか】
【かわいい】
【もっちろん聞かせていただきます】

「ありがとう! えっと、まずは文化祭──」

 一番に話したかったイベントごとに思いを巡らせて、……噴火するように顔が赤くなった。

 クラスの出し物のこととか、少しの失敗談とか、面白かった物とか。
 色々、話したいことはあるはずなのに。

『ごめん──好き、綾斗のことが』

 どうしても、一番に頭を過ぎるのはあのことで。
 喉がつかえてしまい話し出せずにいると、フユが助け舟を出してくれた。

「なんかメイドみたいなことやってたよな、アヤ」

【え笑笑】
【何それ???】
【男女逆転喫茶……ってコト!?】
【詳しく詳しく】
【状況説明求む】

 ……メイド?
 そんなことやった覚えはないが、と眉をひそめ──声を上げた。

「あぁ、なんか言ったかも。フユに『ご主人様』みたいなこと」
「そう、それ。びっくりした」
「いやメイドじゃないんだけど……確かにセリフはメイドっぽいか」

 会話を交わしていると、なぜかコメントの投下されるスピードが早くなる。

【何それ萌える】
【メイドアヤ……かわいい確定】
【誰かファンアートとかでもいいから描いて】
【フユの反応見たかったー!】
【聴きたい!】
【その高校羨ましすぎる】
【今言ってくれんか】
【何ならボイス発売しません?】

「ボイス?」

 目を瞬く。確か、シチュエーションボイスだっけ。色々なシチュエーションの台本に声を当てるとか何とか……。
 フユも隣で首を傾げた。

「どんな?」

【今話に出てるメイドとか!】
【これは出してくれる流れですか】
【はいはいはい、束縛ボイス聞きたいです!】
【アヤくんたちがクラスメイトみたいなシチュエーション欲しい】
【アヤとフユのいちゃいちゃしてるだけのやつ】
【ヤンデレボイスとか】
【彼氏ボイス……でも結局、「フユアヤ」で想像して私は蚊帳の外になる自信しかない】
【何なら蚊帳の外ボイスどうですか】
【普通に純粋なる友達ボイス欲しい〜】
【わかる。アヤくんなら楽しいとこ連れ回してくれそう】
【フユは優しく勉強教えてくれそう!】

 おぉ……いっぱいあるんだ。
 結構面白くて、コメント欄に目を通していると。

【試しに愛してるって言ってみてください!】

 そんなコメントが、目についた。

 あいしてる。
 その言葉に、自然とフユ──否、冬輝に目がいった。

 俺の、大好きなひと。

「……愛してる?」

 少しだけの疑問符と、大好きな人への愛情を込めて。
 ポツンと呟けば、途端に見えなくなるぐらい加速するコメント欄と、こちらをパッと見つめるフユ。

 唇が、あやと、と──多分、そう動いた。

 俺はきょとんと首を傾げ、しーと唇に人差し指を当てる。
 ダメだからな、配信で本名呼んじゃ。

 ……そのあと。
 いつものように配信を続けたが、何故か少しだけフユの機嫌が悪い気がして、冷や汗が止まらなかった。