幼馴染に恋を拗らせていたら、いつの間にか取り返しのつかないぐらい周りを巻き込んでいたらしい!

 ◇

 ……ふゆきと。
 冬輝と、恋人。そして、ちゃんとしたキス。

 信じられ、ない。

 夢心地で立てずにいると、先に立ち上がった冬輝が手を引っ張ってくれた。

「綾斗。文化祭、一緒に回ろう」
「……うん」

 逆に何で冬輝はそんないつも通りなんですか。
 何とか立ち上がり、俺だけが動揺してるのが恥ずかしく、バレませんようにと願いながら口を開いた。

「──何で、避けてたの」

 この一週間。いや、キスのせいだってことは分かってるけど。でも何であのタイミングでキスしたのとか、何を思って避けてたのかとか。
 聞きたくて尋ねると、冬輝は何だか驚いたように目を見開いたあと、嬉しそうに笑みを零した。

「かわいい」

 ……、何の話?
 突然の好きな人からの褒め言葉に、顔が熱くなる。それを誤魔化すように視線を彷徨わせた。

「こ、答えになってない」
「拗ねてるってことでしょ? てか、綾斗はいつもかわいい」
「かっこいいがいい」
「かっこかわいい」

 だめだ、これ。
 諦めたというかもうキャパオーバーというか。取り繕うのを断念し思いっきり動揺を全面に出すと、今度は申し訳なさそうに表情を変えた冬輝。

「……避けたのは、綾斗にはっきり拒まれるのが怖かったから」
「え?」
「キスしたのは、……何か衝動的に、いけるんじゃないかって思って。でも、すぐ後悔した」

 綾斗に嫌われるのが一番怖いのに、その時はどうかしてたよな。そう独り言のように呟かれ、やけにしんみりと響く。
 ……俺が冬輝のこと、嫌いになるわけないのに?

「……俺は、嬉しかった」

 動揺させてきたお返しだというように、言葉を紡ぎ続ける。

「そりゃ、びっくりしたけど……でも、嫌じゃなかった」

 そう正直に真っ直ぐと告げると、冬輝はしばらく目を見開き固まって。
 ……たちまち、綺麗な青い瞳を潤ませる。

「え」

 な、泣い──まだ泣いてない!? けど、あの冬輝の、こんな表情。
 結局動揺するのはこちら側みたいだ。ビシッと硬直していると、冬輝は泣きそうになったのを誤魔化しもせずまるで向日葵のように笑った。

「だからもう、後悔してない」

 ……ずるくない? その言葉にその笑顔は。
 こちらまで泣きそうになり、冬輝に「かわいい」を連呼されたのは、また別の話。