幼馴染に恋を拗らせていたら、いつの間にか取り返しのつかないぐらい周りを巻き込んでいたらしい!

 ……とまあ、布教活動はこれくらいにして。

 一生懸命課題に取り組んでいると、流していた配信が急に静まった。

 何回もキルされていたアヤくんの断末魔が収まったってことは、休憩時間かもう終わりかな?
 顔を上げると、スマホから『あー……』とアヤくんの疲れたような声が飛んできた。ちなみに配信画面はゲームの画面に、右下らへんに「フユアヤ」のイラストが置かれている状態だ。

 表情は分からないが、……アヤくんは喜怒哀楽が出やすいタイプなので声でどんなことを思っているかバレバレでちょっと面白い。

『何でフユには一回も勝てないんだよ、もー!』
『ゲームが俺の得意なやつだっただけだろ』
『うー……でも悔しい。いつか勝ってやるから待っといて、フユ』
『ん、楽しみにしてる』

 あ──笑った。
 アヤくんとは逆に、フユくんは声に感情がとことん出にくい。でも、アヤくんに話しかけられた時、良く嬉しそうな声色になる。

 結構ファンやってるとそういうのがわかってくるから、……これだから二人を推すのをやめられないんだよな。

 それに、「フユアヤ」が人気なのは、もう一つ他の活動者と決定的に違うところがあった。

『あ! 飲み物持ってくんの忘れたー! めっちゃ叫んでガラガラなのに』
『え? ──あぁ、はい』
『えっ、いいん? さんきゅ!』

 それは、──距離感がとんでもなく近いこと。

『コメント……間接キス気にしないタイプですかって、んーわかんない。フユだから?』
『あまり考えたこともないかもな。いつもしてるし』
「へー……え?」

 理解するのに数秒かかり、正しく言葉を受け付けた瞬間咳き込んだ。──二人がこういうことをサラッと言うことは、うん。学んでるんだけど、やっぱり反応しちゃうというか!

 ……そう。このお二人、ご察しの通り超仲が良い。それも、親友の概念を超えちゃってるぐらい。

 いつも同じ部屋で配信してるし、すぐ相手に「好き」とか言うし、前アヤくんが風邪を引いた時はフユくんが看病に行ってたし。
 視聴者に「どうせビジネスパートナーでしょ」なんて言わせる隙なんて、一秒も与えない。

 ──まるで、恋人みたいな。

【今日もフユアヤ供給過多でとっても嬉しい】
【そうかそうか、間接キスいつもしてるかあ……なんか天国見えてきた】
【我無事尊死】
【気持ちはわかるけどせめてこの配信終わるまで生きようぜみんな】
【頑張って生きるね、まだ二人を推したいもん】

『えぇ、そんな、みんな大袈裟じゃない?』
『間接キスなんて普通だろ』

 普通じゃないかと思われます!

 心の中で思いっきりツッコむ。はあ、でも「フユアヤ」は自分たちが付き合ってるなんて発言をしたことは一回もない。それに加え、どっちも鈍感天然。

 なので本当に距離感バグの親友同士なのか、それとも恋人同士なのか。判断がとても取りづらく、ファン層は純粋にゲーム配信を面白がって見る者と、二人がいつボロを出すか観察している者に大きく別れる。

 ちなみに私は付き合ってて欲しいなあ──なんて、思ってるけど。一ファンの勝手なわがままにすぎないから。
 そっと手を合わせ合掌した。

「今日もごちそうさまでした」

 とりあえず、推しには幸せになってほしい。相手が誰であっても、だ。
 幸せなら、それでいい。