幼馴染に恋を拗らせていたら、いつの間にか取り返しのつかないぐらい周りを巻き込んでいたらしい!

「あ、ちょっと、冬輝!」

 朝食を食べていると、先に食べ終わった冬輝がバッグを手に取り家を出ようとしたので、慌てて呼び止めた。
 冬耀は驚いたように振り向き、見開いた瞳で俺を捉える。

「俺も一緒に行く! 待ってて!」

 見つめられることすらも、懐かしくて。
 ついさっき「おはよう」って元気いっぱいに挨拶し、俺を久しぶりに見てくれた時なんて、泣きそうになったぐらいだ。
 宣言すると、冬輝はまた視線を逸らした。そして、背中を向けてしまう。

「ごめん、ちょっと用事あるから」
「冬輝!」

 もう……アイツー!
 せっかくふゆママが作ってくれた朝食を残すわけにも口に詰め込むわけにもいかず、椅子に座ったまま冬輝がいなくなった所を睨むことしかできない。

 はあ……前途多難だ。
 冬輝への気持ちを再自覚したのが、ちょうど昨日。夜悩みに悩んだ結果、……突進しよう、という考えに至った。

 何故キスをしたのか。期待していいのか、それともフユアヤの延長線や、特に意味も何もないのか。

 何で俺のこと、避けてるのか。

 遠慮せずまっすぐと聞いてみようと思う。困らせてしまう? んなもん知らん、突然キスされて困ったのはこっちが先だしお互い様だ!

 ……と、決意したはいいものの。

 冬輝が俺を避けているから中々捕まらないし、しかも今日は文化祭。何というタイミング。
 来年はきっと受験で文化祭ものびのびと楽しめないから、思いっきり楽しむラストチャンスなのに!
 それなのに一番一緒に楽しみたい相手とギクシャクしてるとか、どんな笑えない冗談だろうか。

 最後の一口を飲み込み、食器をシンクに運んでから俺はいつも通りふゆママに笑いかけた。

「今日も美味しかったです、本当にありがとうございます! じゃあ、行ってきます!」
「いーえ。はい、行ってらっしゃい。文化祭、楽しんできてね」
「はい! もちろん!」

 冬輝と俺が少し険悪な雰囲気なことに、この人が気づかないはずがない。それでも放っといてくれるのは、母の優しさというものだろうか?

 バッグを手に取って、外に出た。今から追いかければ冬輝に追いつけるかな。

 ちなみに余談だが、イベントごとに毎回来てくれる千くんは今回文化祭に来ない。イラストの納品日、今日こそ本腰入れないと間に合わないということで。思わずちょっと忘れてしまうが、そういえばあの人は超人気イラストレーターだった。

 それでも、昨日俺を心配して、俺のために貴重な時間を割いてくれた。

 本当に、俺は人の優しさに救われている。
 心を温かくさせながら、俺は高校へ向かった。