◆◇◆
うわあ……。
電車から降りて、俺は思わず声を漏らした。
と、都会だ……。
人が多い、建物が比較的新しい、迷子になりそうな駅の広さ。
別に俺たちの地元も田舎ってわけじゃなく賑わっている方だと思うんだけども、やっぱり本物の都会は違うというか……。
「すっご……」
「綾斗、迷子になる」
「スマホ持ってるから大丈夫だと思うけど、なるべく固まって行動しようね。はい、行くよ〜」
「はーい!」
思わず立ち止まっていた足を動かして、慌てて千くんと冬輝の方へ駆け寄った。
ついにやって来ました、リアルイベント当日!
圭に誘ってもらった日から、何度か主催者の方、スタッフさん、共演者の方とミーティングを重ねて──無事、この日を迎えられた。
今日一緒に来てくれたのは、千くん。
俺たちがスケジュール的に無理そうな時は圭たちと連絡を取ってくれて、しかも今日は保護者代理で付き添いまでしてくれている。人気イラストレーターだけに決して暇ではないはずなのに……千くんには本当に頭が上がらない。
そしてもう一人、必要不可欠の存在。
まあ当然と言えばそうなのだが、フユアヤのフユの中の人……冬輝、だ。
「ええと、集合場所はここらへんなはず──」
そしてそして、会場へ行く前に、加わるもう一人のメンバー。
「服装は何だって?」
「黒いパーカーにワイドデニム、それと……『三人にとって見覚えのあるやつやよ、探してみ』?」
何だそりゃ。千くんと一緒に首を傾けていると、周りを見渡していた冬輝が声を上げた。
「あの人じゃない?」
「「え」」
パッとスマホから顔を上げると、本当だ、黒いパーカーにワイドデニム──そして、ショルダーバッグに身に付けられた、圭のアクリルキーホルダー。
しかもあれ、千くんのイラストだ。
思わず目を見開いていると、千くんはすぐさま駆け出していた。は、早っ!
慌ててあとを追いかける。千くんはその人に近づく度に速度を緩め、結局彼の元に着くタイミングは俺たちと一緒だった。
「あの……けい?」
──千くんのこんな声、初めて聞いた。
でもそれよりも、俺の視線は見つけた彼に集中する。これで人違いだったら超気まずいけど……どうだろう。
そんな心配とは裏腹に、彼は被っていた帽子をあげ、あっけらかんと笑って見せた。
「せーかい」
いつも何らかの電子機器越しに聞いている、聞き慣れた声。
それを生で聞けるとは、想像以上に嬉しいことで。
俺はぱあっと顔を輝かせた。
「けっ、圭!」
「あー、ここら辺ファンの人おるかもしれへんから静かに。その声はアヤやよな? リアルでは初めまして」
圭は唇に人差し指を当てながら、俺たちを見渡す。
「で、俺に初めに声をかけてきたのが千で、てことはそこの無表情イケメンくんがフユやんな? うわー、想像通りかも」
け、圭は……なんか、想像以上にかっこいい、と言うか。
俺より少しだけ背が高く、白い肌に明るい黄色とも捉えられる瞳が映える。帽子からチラリと見える、染めているのか赤のメッシュには少し驚いた。
ピアスもメイクもしていて、何だかとても大人のように見える。
てか、のようにではなく、同級生のような感覚で接してたけど、本当に実年齢は圭の方が上なんだよな。
全員そんなことを思ったのか固まっていると、圭は不思議そうに目を瞬いた。逆になんでそんな圭は普通なんだ。……慣れてるのか。
「どした、三人とも? まあええか、会場まで行くで」
「あ、う、うん」
「……案内よろしく」
「そういえば、圭、そのグッズ」
帽子を深く被り直した圭に続きながら、千くんは圭のバッグに釣られているアクキーを指差した。圭は得意げに笑う。
「見つけやすかったやろ?」
「そうだけど、でも身バレとか大丈夫なの?」
「ここらへんありがたいことにイベントに来てくれたファンが結構いるやろうし、むしろ変装の一部まであるで。本人が本人のグッズつけてるなんて思わへんやろ?」
なるほど。納得して、キョロキョロと周りを見回した。
確かに、参加者らしき方のグッズを身につけている方がチラホラいる。圭のファンも見つけて、思わず嬉しくなった。
フユアヤは、グッズ出してないからなあ。
そもそも、飛び入り参加だし日頃からそんな熱心な固定ファンは付いてない(多分)はずなので、会場に来てくれるファンも他の参加者様に比べたらすごく少ないはずだ。
だからこそ、他の方のファンにも、全員に楽しい、面白いなと思ってもらえるように頑張ろう。改めて気合いを入れていると、圭は後ろへ首を巡らした。
そして、少し照れたように笑う。
「あー、やばい。千たちと会えてめっちゃ嬉しいわ、俺」
︎︎圭がそう言うや否や、千くんが大きく咳き込んだ。
うわあ……。
電車から降りて、俺は思わず声を漏らした。
と、都会だ……。
人が多い、建物が比較的新しい、迷子になりそうな駅の広さ。
別に俺たちの地元も田舎ってわけじゃなく賑わっている方だと思うんだけども、やっぱり本物の都会は違うというか……。
「すっご……」
「綾斗、迷子になる」
「スマホ持ってるから大丈夫だと思うけど、なるべく固まって行動しようね。はい、行くよ〜」
「はーい!」
思わず立ち止まっていた足を動かして、慌てて千くんと冬輝の方へ駆け寄った。
ついにやって来ました、リアルイベント当日!
圭に誘ってもらった日から、何度か主催者の方、スタッフさん、共演者の方とミーティングを重ねて──無事、この日を迎えられた。
今日一緒に来てくれたのは、千くん。
俺たちがスケジュール的に無理そうな時は圭たちと連絡を取ってくれて、しかも今日は保護者代理で付き添いまでしてくれている。人気イラストレーターだけに決して暇ではないはずなのに……千くんには本当に頭が上がらない。
そしてもう一人、必要不可欠の存在。
まあ当然と言えばそうなのだが、フユアヤのフユの中の人……冬輝、だ。
「ええと、集合場所はここらへんなはず──」
そしてそして、会場へ行く前に、加わるもう一人のメンバー。
「服装は何だって?」
「黒いパーカーにワイドデニム、それと……『三人にとって見覚えのあるやつやよ、探してみ』?」
何だそりゃ。千くんと一緒に首を傾けていると、周りを見渡していた冬輝が声を上げた。
「あの人じゃない?」
「「え」」
パッとスマホから顔を上げると、本当だ、黒いパーカーにワイドデニム──そして、ショルダーバッグに身に付けられた、圭のアクリルキーホルダー。
しかもあれ、千くんのイラストだ。
思わず目を見開いていると、千くんはすぐさま駆け出していた。は、早っ!
慌ててあとを追いかける。千くんはその人に近づく度に速度を緩め、結局彼の元に着くタイミングは俺たちと一緒だった。
「あの……けい?」
──千くんのこんな声、初めて聞いた。
でもそれよりも、俺の視線は見つけた彼に集中する。これで人違いだったら超気まずいけど……どうだろう。
そんな心配とは裏腹に、彼は被っていた帽子をあげ、あっけらかんと笑って見せた。
「せーかい」
いつも何らかの電子機器越しに聞いている、聞き慣れた声。
それを生で聞けるとは、想像以上に嬉しいことで。
俺はぱあっと顔を輝かせた。
「けっ、圭!」
「あー、ここら辺ファンの人おるかもしれへんから静かに。その声はアヤやよな? リアルでは初めまして」
圭は唇に人差し指を当てながら、俺たちを見渡す。
「で、俺に初めに声をかけてきたのが千で、てことはそこの無表情イケメンくんがフユやんな? うわー、想像通りかも」
け、圭は……なんか、想像以上にかっこいい、と言うか。
俺より少しだけ背が高く、白い肌に明るい黄色とも捉えられる瞳が映える。帽子からチラリと見える、染めているのか赤のメッシュには少し驚いた。
ピアスもメイクもしていて、何だかとても大人のように見える。
てか、のようにではなく、同級生のような感覚で接してたけど、本当に実年齢は圭の方が上なんだよな。
全員そんなことを思ったのか固まっていると、圭は不思議そうに目を瞬いた。逆になんでそんな圭は普通なんだ。……慣れてるのか。
「どした、三人とも? まあええか、会場まで行くで」
「あ、う、うん」
「……案内よろしく」
「そういえば、圭、そのグッズ」
帽子を深く被り直した圭に続きながら、千くんは圭のバッグに釣られているアクキーを指差した。圭は得意げに笑う。
「見つけやすかったやろ?」
「そうだけど、でも身バレとか大丈夫なの?」
「ここらへんありがたいことにイベントに来てくれたファンが結構いるやろうし、むしろ変装の一部まであるで。本人が本人のグッズつけてるなんて思わへんやろ?」
なるほど。納得して、キョロキョロと周りを見回した。
確かに、参加者らしき方のグッズを身につけている方がチラホラいる。圭のファンも見つけて、思わず嬉しくなった。
フユアヤは、グッズ出してないからなあ。
そもそも、飛び入り参加だし日頃からそんな熱心な固定ファンは付いてない(多分)はずなので、会場に来てくれるファンも他の参加者様に比べたらすごく少ないはずだ。
だからこそ、他の方のファンにも、全員に楽しい、面白いなと思ってもらえるように頑張ろう。改めて気合いを入れていると、圭は後ろへ首を巡らした。
そして、少し照れたように笑う。
「あー、やばい。千たちと会えてめっちゃ嬉しいわ、俺」
︎︎圭がそう言うや否や、千くんが大きく咳き込んだ。
