こ、こ、こっわかった……!
ホラーゲームの実況配信終わり、一気に水を飲み干して、大きく息を吐いた。ぐしゃっとテーブルに潰れる。
「だから言ったのに……大丈夫?」
「うぅ、大丈夫じゃない……」
ガチで、本当に、本ッ当に怖かった……。絶対夢に出てくるってあれ。
冬輝の言う通りやめとけばよかったかな。俯いていると、そっと頭に何かが乗っけられた。
「冬輝?」
「ん?」
驚いて隣の冬輝の方を見ると、青い瞳と視線が絡まる。
数秒経って、撫でられているのだと気づいた。細い指が俺の髪を通り抜けて、額をなぞる。思わずこちらが気恥ずかしくなってしまうような、優しい手つき。
「くすぐったい」
「あ……ごめん」
「ううん」
テーブルに頬をつけながら、にっと口角を上げた。
「結構好きかも、冬輝に撫でられるの」
刹那、整った顔が、驚愕の色に染められる。けれどそれも本当に一瞬で、数秒後、ふっと頬が緩んだ。
誰でも思わず見惚れてしまうような、綺麗な笑顔。
「そう? じゃあ、沢山撫でる」
「恥ずかしいから沢山はやめろ〜」
遠藤綾斗、高校二年生。
そして、目の前の彼は篠山冬輝。同い年で、俺の幼馴染、兼、パートナー。
もちろん恋人とか婚約者とかそっちの意味ではなくて、パートナー、二人組として活動しているから。
恐れ多いが最近波に乗っていると騒がれている、ゲーム実況活動者「フユアヤ」。その中の人が俺たち──と言えば、信じてくれるだろうか?
俺は身体を復活させると、すぐそばにあったスマホを手に取る。
「何見るの?」
「エゴサ〜」
アプリを開いて、「#フユアヤ」と検索をかけた。と、パッとファンのみんなの投稿が沢山出てくる。
うわ、ありがたいな。
「今日の配信の感想とか、結構書いてくれてるよ」
「どれ?」
冬輝の顔が近づく。少しだけ寄りかかられて、ほぼ0距離。
艶やかな黒い髪が視界の端をチラついて、綺麗だなと思った。
俺も逆に、冬輝に自分の身体を預ける。
寄りかかって寄りかかられて。心音が聞こえたり、冬輝の身体冷たいななんて思ったり。
この距離の近さが俺らの通常運転、普通であって。
けれどネットでは、
【今日も距離近すぎてほんま尊かった。フユアヤ最高】
【今日の配信、アヤくんフユくんに抱きつきすぎ笑 かわいい〜】
【圭くんとのコラボ第二弾告知されてとても嬉しい。フユアヤ今まで歌ってみたなんてあげてこなかったよね、楽しみすぎる!】
【アヤくん配信始めた時は超元気だったのに、ホラー苦手だったんかい笑 また圭様とのコラボ! しかも私の好きなイラストレーターさん担当らしい、私得すぎる】
【今日も楽しませてもらいました! 良ければまたホラゲ配信してくれないかな笑】
──どうも、普通じゃないらしく。
確かに抱きついたのは事実だけど、仕方ないじゃないか怖かったんだから。あ、ホラゲ配信はもうやらないから絶対!
心の中で宣言していると、一つの投稿が目についた。
【もう付き合え】
びくっと過剰に指が反応して、慌ててスクロールをした。
「……」
冬輝は何も言わない。けど、まあ、気づいてるよな。
フユアヤはその……付き合ってる、なんてファンの間で噂されていて。本人たちもそれは何となく把握していた。
はっきり否定させてもらうが、そんな事実は一ミリもない。
俺たちは付き合ってない、健全で純粋なただの親友で、幼馴染。……それだけ。
でも。
俺の、気持ちは?
俺が冬輝に抱いている気持ちは、果たして本当に恋じゃないと言い切れるのか。
それがずっと俺の中で渦巻いている。……今だからぶっちゃけるけど、中学生の頃、冬輝に恋をしていた時期なら確かにあった。
好きになって、夢中になって、嫉妬して、──迷惑かけちゃったりして。
結局諦めた、というか──なんて言えばいいのだろう。冷めた、のかな。
男同士だし、冬輝もなんか俺がぐいぐい行くと困ったような戸惑った様子だったし、絶対叶わないし。
ならば、恋とかやめて、ただの親友に戻ればいい。
その方が俺も無駄に傷つかないし、冬輝も俺に安心して接せるからどっちもハッピーじゃん? 的なノリで、
──俺は初恋を終わらせた。
もちろん今でも冬輝のことは好きだ。でもそれは、親友としてだと俺は認識している。
「──なあフユー?」
「……何?」
甘えるように冬輝の身体に自分の頭をもたれかける。上を見上げて、けれど目は合わせないように。
「好き」
小さく呟いた。
でもこの距離で届かないはずがない。俺は密かに口角を持ち上げる。
「……うん」
それに、俺は。
「俺も好きだよ、アヤ」
「綾斗」として、「冬輝」から好きだと言われたことは、一度もないから。
だから安心して、変な期待とかせずただの親友で居られる。
ホラーゲームの実況配信終わり、一気に水を飲み干して、大きく息を吐いた。ぐしゃっとテーブルに潰れる。
「だから言ったのに……大丈夫?」
「うぅ、大丈夫じゃない……」
ガチで、本当に、本ッ当に怖かった……。絶対夢に出てくるってあれ。
冬輝の言う通りやめとけばよかったかな。俯いていると、そっと頭に何かが乗っけられた。
「冬輝?」
「ん?」
驚いて隣の冬輝の方を見ると、青い瞳と視線が絡まる。
数秒経って、撫でられているのだと気づいた。細い指が俺の髪を通り抜けて、額をなぞる。思わずこちらが気恥ずかしくなってしまうような、優しい手つき。
「くすぐったい」
「あ……ごめん」
「ううん」
テーブルに頬をつけながら、にっと口角を上げた。
「結構好きかも、冬輝に撫でられるの」
刹那、整った顔が、驚愕の色に染められる。けれどそれも本当に一瞬で、数秒後、ふっと頬が緩んだ。
誰でも思わず見惚れてしまうような、綺麗な笑顔。
「そう? じゃあ、沢山撫でる」
「恥ずかしいから沢山はやめろ〜」
遠藤綾斗、高校二年生。
そして、目の前の彼は篠山冬輝。同い年で、俺の幼馴染、兼、パートナー。
もちろん恋人とか婚約者とかそっちの意味ではなくて、パートナー、二人組として活動しているから。
恐れ多いが最近波に乗っていると騒がれている、ゲーム実況活動者「フユアヤ」。その中の人が俺たち──と言えば、信じてくれるだろうか?
俺は身体を復活させると、すぐそばにあったスマホを手に取る。
「何見るの?」
「エゴサ〜」
アプリを開いて、「#フユアヤ」と検索をかけた。と、パッとファンのみんなの投稿が沢山出てくる。
うわ、ありがたいな。
「今日の配信の感想とか、結構書いてくれてるよ」
「どれ?」
冬輝の顔が近づく。少しだけ寄りかかられて、ほぼ0距離。
艶やかな黒い髪が視界の端をチラついて、綺麗だなと思った。
俺も逆に、冬輝に自分の身体を預ける。
寄りかかって寄りかかられて。心音が聞こえたり、冬輝の身体冷たいななんて思ったり。
この距離の近さが俺らの通常運転、普通であって。
けれどネットでは、
【今日も距離近すぎてほんま尊かった。フユアヤ最高】
【今日の配信、アヤくんフユくんに抱きつきすぎ笑 かわいい〜】
【圭くんとのコラボ第二弾告知されてとても嬉しい。フユアヤ今まで歌ってみたなんてあげてこなかったよね、楽しみすぎる!】
【アヤくん配信始めた時は超元気だったのに、ホラー苦手だったんかい笑 また圭様とのコラボ! しかも私の好きなイラストレーターさん担当らしい、私得すぎる】
【今日も楽しませてもらいました! 良ければまたホラゲ配信してくれないかな笑】
──どうも、普通じゃないらしく。
確かに抱きついたのは事実だけど、仕方ないじゃないか怖かったんだから。あ、ホラゲ配信はもうやらないから絶対!
心の中で宣言していると、一つの投稿が目についた。
【もう付き合え】
びくっと過剰に指が反応して、慌ててスクロールをした。
「……」
冬輝は何も言わない。けど、まあ、気づいてるよな。
フユアヤはその……付き合ってる、なんてファンの間で噂されていて。本人たちもそれは何となく把握していた。
はっきり否定させてもらうが、そんな事実は一ミリもない。
俺たちは付き合ってない、健全で純粋なただの親友で、幼馴染。……それだけ。
でも。
俺の、気持ちは?
俺が冬輝に抱いている気持ちは、果たして本当に恋じゃないと言い切れるのか。
それがずっと俺の中で渦巻いている。……今だからぶっちゃけるけど、中学生の頃、冬輝に恋をしていた時期なら確かにあった。
好きになって、夢中になって、嫉妬して、──迷惑かけちゃったりして。
結局諦めた、というか──なんて言えばいいのだろう。冷めた、のかな。
男同士だし、冬輝もなんか俺がぐいぐい行くと困ったような戸惑った様子だったし、絶対叶わないし。
ならば、恋とかやめて、ただの親友に戻ればいい。
その方が俺も無駄に傷つかないし、冬輝も俺に安心して接せるからどっちもハッピーじゃん? 的なノリで、
──俺は初恋を終わらせた。
もちろん今でも冬輝のことは好きだ。でもそれは、親友としてだと俺は認識している。
「──なあフユー?」
「……何?」
甘えるように冬輝の身体に自分の頭をもたれかける。上を見上げて、けれど目は合わせないように。
「好き」
小さく呟いた。
でもこの距離で届かないはずがない。俺は密かに口角を持ち上げる。
「……うん」
それに、俺は。
「俺も好きだよ、アヤ」
「綾斗」として、「冬輝」から好きだと言われたことは、一度もないから。
だから安心して、変な期待とかせずただの親友で居られる。
