◆◇◆
篠山千里──二十一歳。イラストレーター「千」でもあるし、「フユアヤ」のフユの兄でもある。
そんな俺が、二人の気持ちに気づいたのはふゆあやが中学生だった頃。中学生になって周りは男子同士一定の距離を保っている歳なのに、逆に二人はべったりになっていった。
中二、やっと距離を取り始めたと思うと、まるでお互い意識し始めた少女漫画の幼馴染のような空気感を醸し出し始めたり。
あやくんを見るふゆの瞳が明らかに甘く、もしかして、が確信に変わった。ふゆはあやくんに恋をしている。そしてあやくんもふゆを相手にすると妙に甘えたがりになることから、当然のように一つの説が浮上した。
二人、付き合ってんのか?
『何言ってんの?』
『えぇ、違いますよ!? 有り得ないですって!』
直接問うと即答されたので(しかもふゆは真顔)、とりあえず俺に知られたくはないらしい。えー俺全然偏見ないのにな、とか当時は信頼されてないのかと少し傷ついたりと、二人が付き合ってるのはもう俺の中で決定事項だった。
けれど、
『あ、あの、……彼女いるとか、聞いてませんか……』
あやくんから、本当に不安そうな、弱々しい声でそんなことを訊かれたり。
『千兄、好きな人の恋愛対象になるには、どうすればいい』
初めて見たぐらいの真剣な面持ちでふゆにアドバイスを求められたり。
そんなことが積み重なり、新たな説が浮上した。
もしかして二人、本当に付き合ってないとかある?
ガチで? マジで? あんな好きオーラダダ漏れなのに、お互い気づいてないとか有り得るの?
でも観察するうち二個目の説が正しそうで、本当に両片想いなのだと勝手に驚いた。
──と、まあ紆余曲折ありましたが。
「んん、これ美味し〜! ふゆママ、今日もご飯最高です! ありがとうございます!」
「それ好きなの? ……俺のいる?」
「え、そんな悪い──むぐ」
ふゆあやを目の前に、俺は白米を口の中に放り込んだ。
いや、付き合いたてのラブラブカップルかよ、というツッコミはもう心の中で何回したかわからない。
今日は定番の「あーん」ですかそうですか……。ふゆ、自分からやったくせに照れて耳が赤くなってんの誤魔化しきれてないぞ。あやくん、なんか嬉しそうですね。
あー、通常運転だな、平和平和。おもしろ。
──この通り、今ではふゆあやの会話は篠山家名物の一つになってしまっている。
今日もどっちも鈍いなあと思っていると、「あの」とあやくんが俺の方へ身を乗り出した。急に自分に話が回ってきて、ごくんと食べ物を飲み込む。
「ん、なーにー?」
「圭との歌ってみたコラボ、歌う曲が決まらなくて……良ければ千くんから意見聞いてもいいですか」
イラストも頼もうと思ってるし、と付け足されながらそう言葉にしたあやくん。
俺はゆっくりと目を瞬き、思考した。
曲か、うーん……そうだねえ。
「まず、ラブソングは除外っしょ? 夏も過ぎちゃったから季節ものもあまりウケないかなあ……」
秋っぽい曲ももちろん良い曲はいっぱいあるけど、なんとなくフユアヤと圭の雰囲気に合わない気がする。
ラブソングはコラボでもまあ見かけるけど、三人で歌うのはあまり聞いたことないし。何よりフユアヤ以外でカプを作ったらフユアヤガチ勢に殺される〜。
圭含め色々な歌い手さんにイラストを描いてきたけど、大体曲が決まってからの依頼だったからなあ。意外とこれだ! と言う曲を見つけるのは難しいのだと実感した。
頭を悩ませていると、ふゆとあやくんは顔を見合わせ、またこちらを向く。
「それと、もう一ついいですか?」
「うん、もちろん」
「歌うのって……コツとか、あるのでしょうか……」
あら、それもあまり上手くいってない感じ?
首を傾ける。あやくんの瞳に珍しく影が落とされていて、よっぽど悩んでいることが伺えた。
フユアヤ、これまで歌系投稿してこなかったもんねぇ。
出来るなら力になりたいけど。でも、
「俺も歌は専門外だからなあ……」
「ですよね、すみません……」
俺が歌い手だったらいいアドバイスできたかな。少し申し訳なくなっていると、一つのことを思いついた。
──そうだ、アイツがいるじゃん。
「あやくん、ふゆ、明日空いてる?」
早速持ち出すと、二人は不思議そうに目を瞬いた。
篠山千里──二十一歳。イラストレーター「千」でもあるし、「フユアヤ」のフユの兄でもある。
そんな俺が、二人の気持ちに気づいたのはふゆあやが中学生だった頃。中学生になって周りは男子同士一定の距離を保っている歳なのに、逆に二人はべったりになっていった。
中二、やっと距離を取り始めたと思うと、まるでお互い意識し始めた少女漫画の幼馴染のような空気感を醸し出し始めたり。
あやくんを見るふゆの瞳が明らかに甘く、もしかして、が確信に変わった。ふゆはあやくんに恋をしている。そしてあやくんもふゆを相手にすると妙に甘えたがりになることから、当然のように一つの説が浮上した。
二人、付き合ってんのか?
『何言ってんの?』
『えぇ、違いますよ!? 有り得ないですって!』
直接問うと即答されたので(しかもふゆは真顔)、とりあえず俺に知られたくはないらしい。えー俺全然偏見ないのにな、とか当時は信頼されてないのかと少し傷ついたりと、二人が付き合ってるのはもう俺の中で決定事項だった。
けれど、
『あ、あの、……彼女いるとか、聞いてませんか……』
あやくんから、本当に不安そうな、弱々しい声でそんなことを訊かれたり。
『千兄、好きな人の恋愛対象になるには、どうすればいい』
初めて見たぐらいの真剣な面持ちでふゆにアドバイスを求められたり。
そんなことが積み重なり、新たな説が浮上した。
もしかして二人、本当に付き合ってないとかある?
ガチで? マジで? あんな好きオーラダダ漏れなのに、お互い気づいてないとか有り得るの?
でも観察するうち二個目の説が正しそうで、本当に両片想いなのだと勝手に驚いた。
──と、まあ紆余曲折ありましたが。
「んん、これ美味し〜! ふゆママ、今日もご飯最高です! ありがとうございます!」
「それ好きなの? ……俺のいる?」
「え、そんな悪い──むぐ」
ふゆあやを目の前に、俺は白米を口の中に放り込んだ。
いや、付き合いたてのラブラブカップルかよ、というツッコミはもう心の中で何回したかわからない。
今日は定番の「あーん」ですかそうですか……。ふゆ、自分からやったくせに照れて耳が赤くなってんの誤魔化しきれてないぞ。あやくん、なんか嬉しそうですね。
あー、通常運転だな、平和平和。おもしろ。
──この通り、今ではふゆあやの会話は篠山家名物の一つになってしまっている。
今日もどっちも鈍いなあと思っていると、「あの」とあやくんが俺の方へ身を乗り出した。急に自分に話が回ってきて、ごくんと食べ物を飲み込む。
「ん、なーにー?」
「圭との歌ってみたコラボ、歌う曲が決まらなくて……良ければ千くんから意見聞いてもいいですか」
イラストも頼もうと思ってるし、と付け足されながらそう言葉にしたあやくん。
俺はゆっくりと目を瞬き、思考した。
曲か、うーん……そうだねえ。
「まず、ラブソングは除外っしょ? 夏も過ぎちゃったから季節ものもあまりウケないかなあ……」
秋っぽい曲ももちろん良い曲はいっぱいあるけど、なんとなくフユアヤと圭の雰囲気に合わない気がする。
ラブソングはコラボでもまあ見かけるけど、三人で歌うのはあまり聞いたことないし。何よりフユアヤ以外でカプを作ったらフユアヤガチ勢に殺される〜。
圭含め色々な歌い手さんにイラストを描いてきたけど、大体曲が決まってからの依頼だったからなあ。意外とこれだ! と言う曲を見つけるのは難しいのだと実感した。
頭を悩ませていると、ふゆとあやくんは顔を見合わせ、またこちらを向く。
「それと、もう一ついいですか?」
「うん、もちろん」
「歌うのって……コツとか、あるのでしょうか……」
あら、それもあまり上手くいってない感じ?
首を傾ける。あやくんの瞳に珍しく影が落とされていて、よっぽど悩んでいることが伺えた。
フユアヤ、これまで歌系投稿してこなかったもんねぇ。
出来るなら力になりたいけど。でも、
「俺も歌は専門外だからなあ……」
「ですよね、すみません……」
俺が歌い手だったらいいアドバイスできたかな。少し申し訳なくなっていると、一つのことを思いついた。
──そうだ、アイツがいるじゃん。
「あやくん、ふゆ、明日空いてる?」
早速持ち出すと、二人は不思議そうに目を瞬いた。
