『フユアヤと歌ってみた出すことになってんけど、そのイラストを千に担当してもらいたいと思ってるねん』
そうネットの友人・圭から明かされて数日。液タブでイラストを描いていたら、部屋のドアが開け放たれた。
自分はイヤホンで音楽を流すと集中できるタイプなので、ノックなんか意味はないと学んでいるらしい。
イヤホンを外し、くるっと回る椅子に身を任せドアの方を向いた。
ドアの先、廊下には、思った通り無表情の弟の姿。黒い髪に青い瞳、自分の弟ながら顔は整ってる方だと思う──ふゆは、いつも通り何を思っているか分からない瞳で俺を捉える。
「千兄。昨日も言ったけど、今日から綾斗泊まりだから。てか、もう来てる」
「お邪魔してます、千くん!」
と、ふゆの後ろから第二の弟レベルなあやくんが顔を出した。
茶色の髪に赤い瞳の彼は、今日も元気で可愛い。俺は笑みを零す。
「いらっしゃ〜い。今日もお母さん遠征?」
「はい! コンサートで一週間ほど、関西の方に。毎回すみません、お世話になります」
「そんなそんな。いいって、むしろ来てくれてありがとうね。ふゆ、あやくんと一緒にいるとめっちゃ楽しそうだしさ」
「千兄」
冷ややかな、余計なことは言うなという圧が伝わってくる。わー怖ーい。
ふゆとあやくんは知らないだろうけど、あんた、あやくんと話す時だけとてつもなく甘い顔になってるんだからね。それを見せつけられるお兄ちゃんの身にもなりなさい?
ちなみに、ふゆとあやくんは幼馴染で、昔から家族ぐるみの付き合いだ。隣の家に住んでいるあやくんは母子家庭で、母親がピアニストをやっている。
そして……二人は皆さんもうご察し、フユアヤの中の人。
ゲーム実況活動者は、あやくんがお金欲しさにやると言い出したらしく、あやくん一人じゃ心配だからとふゆが付き添って初めた形だったらしい。それがまさか本当に収益化してこんな人気になるとは俺も思わなかったけど。
今ではあやくんがうちに泊まりに来る代わりに、配信は防音室のあるあやくんの家でやることになっている。
前のフユアヤ同居疑惑事件も、あやくんの家で配信していたふゆをうちに泊まりに来ていたあやくんが夜ご飯に呼びに行った、と言う真相だ。ごめんなさいねフユアヤファンの皆さん、まあ兄の俺から証言させてもらいますとほぼ同居状態なのですがどうでしょう?
なんてことを思っていると、手を滑らせイヤホンの変なところを触った。
──あ。
やべ、と思った時にはもうすでに遅し。イヤホンとの接続が解除され、聴いていた音楽が部屋に流れる。
あやくんが、目ざとくその歌にきらっと瞳を煌めかせた。
「これ、圭のやつ?」
……鋭いなあ。
バレてしまったのなら仕方がないと、苦笑いを浮かべた。
「うん」
主に歌ってみたを中心に活動してる圭の、数少ないオリジナル曲。
歌詞は色々な解釈があるけど、俺は圭らしい明るい応援ソングとして受け取っている。
「俺も、聴いたことある」
「良いですよねー、これ! 千くんも好きなの?」
好き──好きねえ。
もちろん曲について訊かれているのはわかっている。けれど勝手に言葉にするのを拒んだ。
言葉が詰まる。でも純粋な顔で首を傾げられてしまっては、言う以外道がなかった。
なるべく平然を装って、にこっと微笑んでみる。
「うん。好きだよ」
よっし普通に言えた。そもそもふゆあやはとんでもなく鈍い。その「好き」が曲だけではない所に、特別な意味が込められてるとは想像もしないだろう。
そういう意味では二人が鈍くてよかったかなあ。
「ふふっ、ですよねー! てかこないだのコラボもありがとうございます、俺たちを繋いでくれて」
「いいよ全然。配信超良かった、次は歌ってみたコラボだっけ?」
「あぁ、まだ曲を探し中」
なるほど。確かにフユアヤ×圭に似合う曲を探すのは難しいかもしれない。
頑張れ、と笑いかけると、「ありがとうございます」と百点満点の笑顔が返ってきた。おい隣の身内、ちょっとはニコッとしろよ。
まあコイツあやくん関連以外表情筋が緩むことなんて滅多にないからなあ。
じゃあ、と部屋から出ていく二人に手を振ってから、ふうと息をついた。
……コラボ二回目やるって聞いた時は、自分で協力したくせに少し妬いたけど。
でも、やっぱりふゆとあやくんはいつも通りだ。お互い、お互いのことしか見てない。
圭を取られるなんて心配、いらなかったなあ。
背もたれに身体を預けて、苦笑した。
さて……今回は、どんなすれ違いを見せてくれる、ふゆあや?
そうネットの友人・圭から明かされて数日。液タブでイラストを描いていたら、部屋のドアが開け放たれた。
自分はイヤホンで音楽を流すと集中できるタイプなので、ノックなんか意味はないと学んでいるらしい。
イヤホンを外し、くるっと回る椅子に身を任せドアの方を向いた。
ドアの先、廊下には、思った通り無表情の弟の姿。黒い髪に青い瞳、自分の弟ながら顔は整ってる方だと思う──ふゆは、いつも通り何を思っているか分からない瞳で俺を捉える。
「千兄。昨日も言ったけど、今日から綾斗泊まりだから。てか、もう来てる」
「お邪魔してます、千くん!」
と、ふゆの後ろから第二の弟レベルなあやくんが顔を出した。
茶色の髪に赤い瞳の彼は、今日も元気で可愛い。俺は笑みを零す。
「いらっしゃ〜い。今日もお母さん遠征?」
「はい! コンサートで一週間ほど、関西の方に。毎回すみません、お世話になります」
「そんなそんな。いいって、むしろ来てくれてありがとうね。ふゆ、あやくんと一緒にいるとめっちゃ楽しそうだしさ」
「千兄」
冷ややかな、余計なことは言うなという圧が伝わってくる。わー怖ーい。
ふゆとあやくんは知らないだろうけど、あんた、あやくんと話す時だけとてつもなく甘い顔になってるんだからね。それを見せつけられるお兄ちゃんの身にもなりなさい?
ちなみに、ふゆとあやくんは幼馴染で、昔から家族ぐるみの付き合いだ。隣の家に住んでいるあやくんは母子家庭で、母親がピアニストをやっている。
そして……二人は皆さんもうご察し、フユアヤの中の人。
ゲーム実況活動者は、あやくんがお金欲しさにやると言い出したらしく、あやくん一人じゃ心配だからとふゆが付き添って初めた形だったらしい。それがまさか本当に収益化してこんな人気になるとは俺も思わなかったけど。
今ではあやくんがうちに泊まりに来る代わりに、配信は防音室のあるあやくんの家でやることになっている。
前のフユアヤ同居疑惑事件も、あやくんの家で配信していたふゆをうちに泊まりに来ていたあやくんが夜ご飯に呼びに行った、と言う真相だ。ごめんなさいねフユアヤファンの皆さん、まあ兄の俺から証言させてもらいますとほぼ同居状態なのですがどうでしょう?
なんてことを思っていると、手を滑らせイヤホンの変なところを触った。
──あ。
やべ、と思った時にはもうすでに遅し。イヤホンとの接続が解除され、聴いていた音楽が部屋に流れる。
あやくんが、目ざとくその歌にきらっと瞳を煌めかせた。
「これ、圭のやつ?」
……鋭いなあ。
バレてしまったのなら仕方がないと、苦笑いを浮かべた。
「うん」
主に歌ってみたを中心に活動してる圭の、数少ないオリジナル曲。
歌詞は色々な解釈があるけど、俺は圭らしい明るい応援ソングとして受け取っている。
「俺も、聴いたことある」
「良いですよねー、これ! 千くんも好きなの?」
好き──好きねえ。
もちろん曲について訊かれているのはわかっている。けれど勝手に言葉にするのを拒んだ。
言葉が詰まる。でも純粋な顔で首を傾げられてしまっては、言う以外道がなかった。
なるべく平然を装って、にこっと微笑んでみる。
「うん。好きだよ」
よっし普通に言えた。そもそもふゆあやはとんでもなく鈍い。その「好き」が曲だけではない所に、特別な意味が込められてるとは想像もしないだろう。
そういう意味では二人が鈍くてよかったかなあ。
「ふふっ、ですよねー! てかこないだのコラボもありがとうございます、俺たちを繋いでくれて」
「いいよ全然。配信超良かった、次は歌ってみたコラボだっけ?」
「あぁ、まだ曲を探し中」
なるほど。確かにフユアヤ×圭に似合う曲を探すのは難しいかもしれない。
頑張れ、と笑いかけると、「ありがとうございます」と百点満点の笑顔が返ってきた。おい隣の身内、ちょっとはニコッとしろよ。
まあコイツあやくん関連以外表情筋が緩むことなんて滅多にないからなあ。
じゃあ、と部屋から出ていく二人に手を振ってから、ふうと息をついた。
……コラボ二回目やるって聞いた時は、自分で協力したくせに少し妬いたけど。
でも、やっぱりふゆとあやくんはいつも通りだ。お互い、お互いのことしか見てない。
圭を取られるなんて心配、いらなかったなあ。
背もたれに身体を預けて、苦笑した。
さて……今回は、どんなすれ違いを見せてくれる、ふゆあや?
