幼馴染に恋を拗らせていたら、いつの間にか取り返しのつかないぐらい周りを巻き込んでいたらしい!

 セミも大合唱の、八月上旬。私は今日も今日とてクーラの効いた部屋でダラダラと、

『みんな、三日ぶり! どーもアヤと』
『フユです、今日もよろしく』

 ──推し活をしていた。

 うわあああ今日もアヤくんは元気いっぱい、かわいい〜! フユくんはいつも通りの何思ってるか分からないトーンだけどそこが良い、かっこいい〜!

 今日も今日とて推しが尊すぎて心の中で叫んでいると、握っていたシャーペンの芯が折れた。

「あ、やば」

 推しを見て筆圧の加減ができなかったか……とスマホから視線を離し。
 目の前に広がった光景にんぐっと息を詰まらせ、ため息をついた。
 机に広げられているたくさんのノート、教科書。溜まりに溜まった課題たち。

 ……はい、これが現実。

『今日は前やったゲーム配信の続きです! ……え、もう課題は終わったのかって? もっちろん! フユに頼った!』
『一緒にやったからな。……大変だった』
『うわーそんな目座らせないで! ごめんって何か奢るから!』
『アイス』
『りょーかい、今度食べに行こ』

 やめて、現実逃避先でさえ現実突きつけてこないでお願い。
 でもそっか、アヤくんとフユくんも私と同じ高校生だもんね、課題あるよね。……もう終わらせて配信してるとか天才かよ。

【えら】
【課題終わる気が全くしない】
【最後の一週間に全てをかけるつもりです】
【アイス一緒に食べに行くフユアヤ尊】

 ぽんぽんとコメントが投下され、自分と同じ状態の子が何人かいると分かり安心する。……いや、やばいことには変わらないんだけどさ。それでも仲間を見つけちゃうとどうしてもほっとしちゃう人間の本能というものがありましてですね。
 確かに最後の週に全てをかけるのもありか〜と考えていると、フユくんとアヤくんのくすっと吹き出す音が聞こえた。どうやらそんな少し情けないファンのコメントを読んだらしい。

『ん、みんながーんば』
『……頑張れ』

 温かい綺麗な声でそう口にした二人。うわっ……、ずるい。

【がぜんやる気出てきた】
【ありがとうございます頑張ります】
【頑張れ言ってくれる二人神】

 推しに頑張れなんか言われたらそりゃ頑張るしかなくなるじゃんか。それは他のファンも同じらしく、先ほどと一転コメント欄全体がやる気で燃え上がっていた。
 それを見て思わずふふっと笑みを零し、シャーペンをちゃんと握り直してみる。よし、……私も頑張ろう。

 ──我ながら単純、そして重傷だなと頭を過ぎった言葉は無視し、何とか推しの配信をBGMに課題に挑んだ。