◆◇◆
それから数回のミーティングを重ね、ついにコラボが数分後に迫ってきた。
生配信にして、開くのは俺のチャンネル。それにフユとアヤが通話を繋いで、という形になる。
俺は最終確認をしながら、フユとアヤに笑いかけた。
「告知、やっぱり反響すごいわ。さすがフユアヤ」
『い、いや、すごいのは圭だよ。確かに、俺らがコラボするの初めてだってこともあるかもだけど』
『初めてのコラボ相手が圭でよかった』
「あは、それは終わってから言うてくれへん?」
せやけど嬉しいわ、おおきに。目を細めると、モニター越しにアヤの照れたような笑い声が飛んできた。
──あーあ、見事に仲良くなってしもうたよ。
千がコミュ力高いと認めたアヤ、そして千の遺伝を引き継ぎ相手の懐に入るのが上手いフユ。
抗えるはずがなかった。俺が流れやすいばっかりに、いつの間にか昔ながらの友達のような距離感になってたんよ、しゃあない……。
ライバル心なんかとっくに消え去って、話しやすいネッ友という認識が日に日に大きくなってきている。
それは日々この界隈の人気を争っている活動者にとって、結構致命的なことだ。
「お前ら、怖いな……」
『え、急に!? なんで!?』
『怖くないですよ俺ら』
「そろそろ配信や」
『怖いって言った理由教えてくれない系かコレ』
「褒め言葉やよ、……一応?」
苦笑いをする。フユアヤは怖い。そしてこのままこの活動を続けたら、将来大物になる。
きっと、やのうて、絶対的な確信や。
その原石たちとこれからコラボするのかと思うと、緊張と同時に不思議な高揚感が襲ってくる。はあと、深く息を吐いた。
「……ほな、このまま俺ライブに入るさかいに。二人はミュートにしぃ」
『りょ!』
『了解』
「俺もきばるから、二人もきばりや! 改めて今日はよろしゅう!」
一旦俺もミュートにすると、それってどういう、というアヤの声が飛んできた。あぁ、「きばりや」は関西弁で「頑張って」って意味なんだけど、標準語の二人には伝わらなかったか。
もう待機画面を開いてしまったので話せないが、後で教えてあげよう。そう思ってから、俺はゆっくり息を吸い、目を閉じた。
……この時間は、いつもわくわくする。
待機画面である程度人を集めながら、今日は何をしよか、何を話そか、どんなことを皆に知ってもらおか。そう考えを巡らせるのが好きだ。
今日は俺のファンに、フユアヤのええところを知ってもらおう。俺の懐にすぐ入ってきたすごい人たちなんですよ──と。
あとついでに、フユアヤのファンに俺を好きになってもらおう。そんなことが浮かび、笑いが漏れた。
すっかり消えたかもと不安になってたけれど、まだ存命やったようだ、俺の闘志は。
良かった。……し、余計な心配やったかもな。歌い手という職業についている時点で闘争心や承認欲求たるものはきっと一生消えてくれへん。
『えー。それは自分の目で確かめなきゃじゃない?』
そんなことを考えていると、千の言葉が脳裏に浮かんだ。
そういえば、結局当日までフユアヤビジネスなのか問題は明らかにならなかったな。
てか、逆に「もう付き合えよ」ってツッコみたくなったシーンが少し──否、結構あった気がする。
フユアヤは果たしてほんまに付き合っているのか。……この話題は、ファンの心を掴み配信へ引きずり込むにうってつけやないか?
ふっと口角を持ち上げて、まぶたを開ける。ちょうど告知していた時間ぴったりだった。
ミュートを外す。さっきの緊張は不思議なことにもうどこかへ消えていた。残ったのは、ただの好奇心と少しばかりのいたずら心のみ。
「あー。んん、皆様こんばんは。聞こえとる?」
【聞こえてます!】
【待ってました〜!】
【こんばんは!】
【圭くん!】
【聞こえてるよ!】
「聞こえとるみたいだな、おおきに。みんな元気しとった? 今日もよろしゅう、圭です!」
いつも通りの挨拶をしてから、俺はにこっと笑みを浮かべた。
「そしてそして! 皆様お待ちかねの今日のコラボ相手!」
【お待ちかね〜!】
【推し×推しのコラボ嬉しい】
【告知された時茶吹き出した】
【自分の都合のいい夢かと思った】
【楽しみ〜!】
「今日は果たしてほんまに付き合っとるのか直接聞くためお呼びしました! どうぞ!」
ミーティングではこんな紹介の仕方するとは言わなかった。
さて、──どう来る?
『あー、皆さん聞こえてますかー!?』
【聞こえてるよー!】
【超大声笑笑】
【「来る」と思って音量を下げた私有能】
『初めましての方は初めまして! いつもはゲーム実況活動者名乗ってます、フユアヤのアヤと!』
『知ってるよって方は久しぶり。同じくゲーム実況活動者名乗ってます、フユアヤのフユです』
『圭に呼ばれて来ました! ……あんな紹介の仕方聞いてないんですけどー!?』
『今日は普通のゲーム実況だろ』
目ざとく噛みつかれた。けれどあくまで変な空気にならへんように、「俺らと圭は仲良しですよ」アピールも忘れない。流石だなと苦笑が滲む。
俺はわざといたずらっ子のような、揶揄うような、あどけない声を出す。
「せやけど、ゲーム実況ってトークも大事やんー? 皆気になっとるかなーって」
【気になる!】
【圭わかってる〜】
【いけいけ!】
【圭様初見なんだけどもしかしてこっち側ですか?】
【意外なとこに味方がいた】
【やったれー!】
『なっ、皆なんで、──もうゲームやるぞ!』
「あはっ、堪忍な。ほな始めて行きます、改めて今日はよろしゅう」
『こちらこそ。よろしくお願いします』
『よろしく〜!』
良ければ最後まで見ていってな、と付け加える。まあ掴みはこれでOKやろ。
微笑み、フユアヤとのコラボ配信が始まった。
それから数回のミーティングを重ね、ついにコラボが数分後に迫ってきた。
生配信にして、開くのは俺のチャンネル。それにフユとアヤが通話を繋いで、という形になる。
俺は最終確認をしながら、フユとアヤに笑いかけた。
「告知、やっぱり反響すごいわ。さすがフユアヤ」
『い、いや、すごいのは圭だよ。確かに、俺らがコラボするの初めてだってこともあるかもだけど』
『初めてのコラボ相手が圭でよかった』
「あは、それは終わってから言うてくれへん?」
せやけど嬉しいわ、おおきに。目を細めると、モニター越しにアヤの照れたような笑い声が飛んできた。
──あーあ、見事に仲良くなってしもうたよ。
千がコミュ力高いと認めたアヤ、そして千の遺伝を引き継ぎ相手の懐に入るのが上手いフユ。
抗えるはずがなかった。俺が流れやすいばっかりに、いつの間にか昔ながらの友達のような距離感になってたんよ、しゃあない……。
ライバル心なんかとっくに消え去って、話しやすいネッ友という認識が日に日に大きくなってきている。
それは日々この界隈の人気を争っている活動者にとって、結構致命的なことだ。
「お前ら、怖いな……」
『え、急に!? なんで!?』
『怖くないですよ俺ら』
「そろそろ配信や」
『怖いって言った理由教えてくれない系かコレ』
「褒め言葉やよ、……一応?」
苦笑いをする。フユアヤは怖い。そしてこのままこの活動を続けたら、将来大物になる。
きっと、やのうて、絶対的な確信や。
その原石たちとこれからコラボするのかと思うと、緊張と同時に不思議な高揚感が襲ってくる。はあと、深く息を吐いた。
「……ほな、このまま俺ライブに入るさかいに。二人はミュートにしぃ」
『りょ!』
『了解』
「俺もきばるから、二人もきばりや! 改めて今日はよろしゅう!」
一旦俺もミュートにすると、それってどういう、というアヤの声が飛んできた。あぁ、「きばりや」は関西弁で「頑張って」って意味なんだけど、標準語の二人には伝わらなかったか。
もう待機画面を開いてしまったので話せないが、後で教えてあげよう。そう思ってから、俺はゆっくり息を吸い、目を閉じた。
……この時間は、いつもわくわくする。
待機画面である程度人を集めながら、今日は何をしよか、何を話そか、どんなことを皆に知ってもらおか。そう考えを巡らせるのが好きだ。
今日は俺のファンに、フユアヤのええところを知ってもらおう。俺の懐にすぐ入ってきたすごい人たちなんですよ──と。
あとついでに、フユアヤのファンに俺を好きになってもらおう。そんなことが浮かび、笑いが漏れた。
すっかり消えたかもと不安になってたけれど、まだ存命やったようだ、俺の闘志は。
良かった。……し、余計な心配やったかもな。歌い手という職業についている時点で闘争心や承認欲求たるものはきっと一生消えてくれへん。
『えー。それは自分の目で確かめなきゃじゃない?』
そんなことを考えていると、千の言葉が脳裏に浮かんだ。
そういえば、結局当日までフユアヤビジネスなのか問題は明らかにならなかったな。
てか、逆に「もう付き合えよ」ってツッコみたくなったシーンが少し──否、結構あった気がする。
フユアヤは果たしてほんまに付き合っているのか。……この話題は、ファンの心を掴み配信へ引きずり込むにうってつけやないか?
ふっと口角を持ち上げて、まぶたを開ける。ちょうど告知していた時間ぴったりだった。
ミュートを外す。さっきの緊張は不思議なことにもうどこかへ消えていた。残ったのは、ただの好奇心と少しばかりのいたずら心のみ。
「あー。んん、皆様こんばんは。聞こえとる?」
【聞こえてます!】
【待ってました〜!】
【こんばんは!】
【圭くん!】
【聞こえてるよ!】
「聞こえとるみたいだな、おおきに。みんな元気しとった? 今日もよろしゅう、圭です!」
いつも通りの挨拶をしてから、俺はにこっと笑みを浮かべた。
「そしてそして! 皆様お待ちかねの今日のコラボ相手!」
【お待ちかね〜!】
【推し×推しのコラボ嬉しい】
【告知された時茶吹き出した】
【自分の都合のいい夢かと思った】
【楽しみ〜!】
「今日は果たしてほんまに付き合っとるのか直接聞くためお呼びしました! どうぞ!」
ミーティングではこんな紹介の仕方するとは言わなかった。
さて、──どう来る?
『あー、皆さん聞こえてますかー!?』
【聞こえてるよー!】
【超大声笑笑】
【「来る」と思って音量を下げた私有能】
『初めましての方は初めまして! いつもはゲーム実況活動者名乗ってます、フユアヤのアヤと!』
『知ってるよって方は久しぶり。同じくゲーム実況活動者名乗ってます、フユアヤのフユです』
『圭に呼ばれて来ました! ……あんな紹介の仕方聞いてないんですけどー!?』
『今日は普通のゲーム実況だろ』
目ざとく噛みつかれた。けれどあくまで変な空気にならへんように、「俺らと圭は仲良しですよ」アピールも忘れない。流石だなと苦笑が滲む。
俺はわざといたずらっ子のような、揶揄うような、あどけない声を出す。
「せやけど、ゲーム実況ってトークも大事やんー? 皆気になっとるかなーって」
【気になる!】
【圭わかってる〜】
【いけいけ!】
【圭様初見なんだけどもしかしてこっち側ですか?】
【意外なとこに味方がいた】
【やったれー!】
『なっ、皆なんで、──もうゲームやるぞ!』
「あはっ、堪忍な。ほな始めて行きます、改めて今日はよろしゅう」
『こちらこそ。よろしくお願いします』
『よろしく〜!』
良ければ最後まで見ていってな、と付け加える。まあ掴みはこれでOKやろ。
微笑み、フユアヤとのコラボ配信が始まった。
