幼馴染に恋を拗らせていたら、いつの間にか取り返しのつかないぐらい周りを巻き込んでいたらしい!

 ◆◇◆

『フユとアヤ、コラボいいって〜』

 残念そうな演技をする気満々やった俺に軽くそう千が告げてから、もうはや一週間ほど。
 夏は通り過ぎもう辺りは秋に染まってきている中。

 ──フユアヤとの初ミーティングの予定日がやってきた。

 千の作ってくれた部屋へ入る。『やほ〜』と千の声が飛んできて、不本意ながらも少しだけ緊張がほぐれた。
 開始時間は十九時からやさけ、あと数分は時間があるか……。

『何? 圭緊張してる〜?』
「うっさいわ。俺すごい人見知りやねん」
『俺とはすぐ仲良くなったのに?』
「お前は例外」
『わー嬉し』

 褒めてへんし。そんな軽口を交わしていると、俺と千だけだった部屋に、二つのアイコンが乱入した。

 あ……。
 噂のフユとアヤだ。まだ開始時間まで数分あんで、早……。いや俺の方が早かったんか。
 相手に自分の姿は見えてないけれど、思わずピッと背筋を伸ばし身体を引き締めた。

『来た来た〜。圭、こちらがフユとアヤくんで〜す』
『よ、よろしくお願いします!』
『……よろしくお願いします』

 いつも動画で聞いていた明るい元気な声と、静かな低い声。本物だ、すご〜、じゃなく!

『フユ、アヤくん、こちらが──』
「圭や。よろしゅう」

 声はなるべく落ち着かせて、低く。──一応年齢でも活動歴でも先輩やし、舐められてはいけない。やると決まったのなら、精一杯憧れてくれるような人間を務めよう。
 俺の作った声に、千が吹き出しかけた。やかましいわほっとけ。

『ふっ、……はい、じゃあ以上、この三人で頑張って。俺は抜けるから〜』
「は」

 待ていなくなるつもりか、聞いてへんぞ。現役高校生陽キャ二人の間に俺を一人置いて?
「待て」と思わず引き止めると、『待たな〜い』と心底楽しそうな返事が返ってきた。くっそムカつく……。

『大丈夫大丈夫、圭とフユはともかくアヤはコミュ力抜群で人懐っこいから! じゃね三人とも!』
「千」
『千兄……』
『千くん!? 責任全部俺に押し付けないで、──あ〜』

 アヤらしき奴の声を聞かずに、千が居なくなった。ほんまに退出しやがったで……。
 呆然とし沈黙が広がる。どないしよう早速超気まずい、頭痛い……。
 どう話を持ちかけようかと悩んでいると、数秒後、『コミュ力抜群』と評価されたアヤの咳払いする声が聞こえてきた。

『え、えーと、改めましてっ! ゲーム実況者、フユアヤのアヤです。初めまして』
『同じくゲーム実況者をやらせてもらっている、フユアヤのフユと申します』
「あ、はい、歌い手の圭と申します」

 慌てて自分も頭を下げる。リードされてしまって情けない。
 立て直さなければと、自分も咳払いをした。

「コラボの話を受けてくださり、また今日わざわざ時間を作ってくださりありがとうございます。今日はよろしくお願いします」

 コラボなら数回は行ったことがある。自分で誘ったものは初めてやけど、……確かこんなことを言われたような。
 記憶を辿って前のコラボ相手の言葉を真似させてもらうと、『い、いえっ』とアヤの戸惑ったような声が上がった。

『こちらこそです! その、圭さんの歌は実はよく聴かせていただいて、まして』
「……ほんまですか?」
『はいっ! な、フユ!』
『あぁ。歌、かっこよかったです』

 マジか、認知されてたんか。目を見開き、思わず顔が緩む。

 ──嬉しいわ、聴いてくれてるのは。

 そして気になること。アヤの大きな声が、フユの方からも聞こえ、反響のようになっている。
 つまり、同じ部屋におるか、声が入るほど近い部屋でそれぞれ通話しとるかの二択。
 ……そういえばフユアヤ同居してるかもって最近噂になってたけど、ほんまにガチなん? それともコラボ相手にも徹底するタイプ?
 ますます興味深いわ、フユアヤ。

『コラボ、誘ってくださりありがとうございます!』
『今日はよろしくお願いします』
「はい、よろしゅうな」

 絶対ビジネスだってボロを出させたる。大人気ない意地悪な企みを持ちながら、初ミーティングが幕を開けた。