幼馴染に恋を拗らせていたら、いつの間にか取り返しのつかないぐらい周りを巻き込んでいたらしい!

 ◆◇◆

 夏休みが明け、また高校生活がスタートした。

 一限目始業式かめんどいなと思いながら教室へ向かっていると、「あ〜おばっ」と肩を叩かれた。
 この声……。思わず口角が上がり、後ろを振り向く。

「おはよ、るり。久しぶり」
「おはよう! 久しぶり?」

 夏休みもたまに会ってたのに? 語尾に疑問符をつけながら笑うるりを見て、心が躍る。
 一緒に遊ぶのも特別感があって楽しかったけど、やっぱり学校で毎日会える方が嬉しいな。
 そんなことを思っていると、るりはパッと周りを見渡し、顔を寄せてきた。

「あ、あのさ。フユアヤ、……見てくれた?」

 こしょこしょっと吹き込まれる。距離の近さに心臓が反応するが、……ふむ。

 フユアヤ、フユアヤね。はいはい。……やばい、完全に忘れてた。

 後回しにし続けた結果存在ごと脳内から消えてたらしい。いや、──うち嫌なことはよっぽどのことじゃない限り記憶の奥底に封印しとくタイプだから、それもあるだろう。
 たった今思い出し、冷や汗が流れる。

「蒼葉?」

 忘れてたなんて言ったら、……傷つくよな、るり。
 不安そうな瞳で見つめられ、うちは慌てて笑顔を作った。

「う、うん。ちょっとだけ?」
「えっほんと!? ど、どっちが好きだったとかある?」
「えー……」

 確かオレンジがアヤ、淡いターコイズブルーがフユ、だっけ。記憶がとんでもなく薄い。とっさに色味が好きな「フユ」と口走ると、るりはぱあああっと顔を輝かせた。
 ざ、罪悪感が。やっぱり正直に言ったほうがいいのではないか、性格はおろか声まで聞いたことはないと──!

「フユくん蒼葉と同じでかっこいいもんね! そっか、蒼葉とお揃いするなら私がオレンジか」

 え、お揃い!?
 好きな人とお揃い。それはなんと心惹かれる申し出だろうか。そしてサラッとうちもかっこいいって言われたような?

「あ、ごめん、勝手に話進めちゃって! その、憧れてたから、友達と推し活するの……」

 う、くっそかわいい。うちは言葉を飲み込むと、その代わりるりの肩を引き寄せた。

「うわっ!?」
「全然大丈夫。しよう、これから。推し活! たくさん」

 そう言い切ると、るりはキラキラと瞳を煌めかせた。そして、少し照れたように笑みを零す。

「ふふっ、蒼葉がフユアヤを好きになってくれたの、超嬉しい。ありがとう!」

 ……ごめんるり。さっきまで好きどころか忘れてました。
 とてつもない罪悪感とフユアヤのことになるとこんな生き生きしてるんだという複雑な感情を抱き、とりあえず後戻りができなくなった宮川蒼葉でした。