フユアヤ、ねえ。
風呂上がり、タオルで髪の水滴を拭いながらスマホを開いた。
広瀬るり、うちの友達に今日突然泣きながらお勧めされた活動者。
何か泣いてる理由問い詰めたら「引かれると思った」とか言ってたけど、うちがそんなことで引くわけないじゃん。
【今日はありがとう、急に泣いちゃってごめんね! こちら、フユアヤのチャンネルになります!】
見くびりすぎと思っていると、その張本人るりからメッセージが送られてきていた。ご丁寧にURLまで添えられている。
あまり活動者とかは見ないタイプだしハマらないタイプなんだけど、まあるりのお勧めだし。せっかくなら、とタップしてみた。
出てきたのは、青い瞳に淡いターコイズブルーの髪色の男子と、赤い瞳にオレンジの髪色の男子のイラストがアイコンにされたチャンネル。
これがフユアヤ。ふーん、イラストかっこいい。
どっちがフユでアヤなのだろう。まあまず好きになるにはその人を知ることだよね、と友達を作るテンションでその考えに至った。
【フユアヤ 詳しく】で調べると、沢山の情報が出てきて少し目を瞬く。
パッと見るに、ターコイズブルーの方がフユ、オレンジの方がアヤらしい。何となくイメージ通りだ。
【フユアヤは、男子高校生二人で作られたゲーム実況を中心としたチャンネルです。様々な企画、技術はもちろん、正反対なようで息ぴったりなフユとアヤの会話が人気を集めており、一年五ヶ月でフォロワーが約九万人など今波に乗っている──】
【今年注目するべきはこの二人!】
【最近ハマったのですが、フユアヤ二人の会話が尊すぎてすぐ沼りました】
【実は付き合ってる!? フユアヤの仲良し度徹底解説】
【高校生ならではの初々しい会話がとっても可愛いです♡】
へえ、高校生ってことは同年代? すご。
純粋に驚いて、そして、少し息をついた。
「男子高校生二人」「息ぴったり」「尊い」「付き合ってる」。
なるほどね……そういう系で売ってる人たちか。
別に同性愛に偏見や嫌悪を抱いてるわけじゃない。てか、……うちはそっち側だし。
宮川蒼葉は広瀬るりに恋をしている。
自分が異性じゃなくて同性を好きだと気づいた初めは中学生の頃。「いつか蒼葉にも好きな人できるって」と笑っていたその時の親友に初恋を奪われた。
その親友には異性に好きな人がいて、良く恋愛相談をされていたから脈は完全になく、告白なんかできるはずがなかった。
それでも諦められないのが恋というもので、親友という立ち位置に甘えながら好きな人の近くで中学生活を過ごし、結局別々の高校に進学した。──卒業式に親友はずっと片思いをしていた男子に告り、見事にOKを貰えたと泣きながら報告され、その時に違う恋を探そうと心に決めた。長くて短い、三年間の初恋だった。
この世の中には女子も男子も好きになる方が一定数いるらしい。……できれば次は自分も男子を好きに、なんて。
そんなことを願っていた時に出会ったのがるりだ。うちが同性愛者なことを隠してるように、何かを隠してそうな姿に興味を持った。
でも、また下手に仲良くなって、同性を好きになってしまったら。怖くなって話しかけられずにいると、なんとるりの方から声をかけてくれた。
『あ、あのさっ。その目、めっちゃ綺麗だよね!』
……元気で、優しくて、たまに挙動不審になって、可愛らしい彼女。
恋に落ちるのは、必然だったと思う。好きにならないわけがなかった。
だからこそ、今日、きっとずっと隠していたであろうことを自分の口で明かしてくれて、とても嬉しかった。……泣かれたのは超焦ったけど。
『私の推しはね、フユアヤって言って』
好きな人の推し……かあ。
眉間にしわを寄せて画面を睨む。そりゃ、るりの推しなら、うちだって好きになりたい。
けど、本当の同性愛者のうちにとって、どうしても“ビジネス同性カップル売り”には嫌悪感を持つ。
だって、……こっちは本気で悩んでんのにさ。
二次元や物語の中ならみんな「尊い」とか言ってるのに、三次元になった途端みんな顔をしかめる。世の中は不公平だ。
「……明日見よ」
机にスマホを置き、うちは入れ替わりに読みかけの本を手に取った。
風呂上がり、タオルで髪の水滴を拭いながらスマホを開いた。
広瀬るり、うちの友達に今日突然泣きながらお勧めされた活動者。
何か泣いてる理由問い詰めたら「引かれると思った」とか言ってたけど、うちがそんなことで引くわけないじゃん。
【今日はありがとう、急に泣いちゃってごめんね! こちら、フユアヤのチャンネルになります!】
見くびりすぎと思っていると、その張本人るりからメッセージが送られてきていた。ご丁寧にURLまで添えられている。
あまり活動者とかは見ないタイプだしハマらないタイプなんだけど、まあるりのお勧めだし。せっかくなら、とタップしてみた。
出てきたのは、青い瞳に淡いターコイズブルーの髪色の男子と、赤い瞳にオレンジの髪色の男子のイラストがアイコンにされたチャンネル。
これがフユアヤ。ふーん、イラストかっこいい。
どっちがフユでアヤなのだろう。まあまず好きになるにはその人を知ることだよね、と友達を作るテンションでその考えに至った。
【フユアヤ 詳しく】で調べると、沢山の情報が出てきて少し目を瞬く。
パッと見るに、ターコイズブルーの方がフユ、オレンジの方がアヤらしい。何となくイメージ通りだ。
【フユアヤは、男子高校生二人で作られたゲーム実況を中心としたチャンネルです。様々な企画、技術はもちろん、正反対なようで息ぴったりなフユとアヤの会話が人気を集めており、一年五ヶ月でフォロワーが約九万人など今波に乗っている──】
【今年注目するべきはこの二人!】
【最近ハマったのですが、フユアヤ二人の会話が尊すぎてすぐ沼りました】
【実は付き合ってる!? フユアヤの仲良し度徹底解説】
【高校生ならではの初々しい会話がとっても可愛いです♡】
へえ、高校生ってことは同年代? すご。
純粋に驚いて、そして、少し息をついた。
「男子高校生二人」「息ぴったり」「尊い」「付き合ってる」。
なるほどね……そういう系で売ってる人たちか。
別に同性愛に偏見や嫌悪を抱いてるわけじゃない。てか、……うちはそっち側だし。
宮川蒼葉は広瀬るりに恋をしている。
自分が異性じゃなくて同性を好きだと気づいた初めは中学生の頃。「いつか蒼葉にも好きな人できるって」と笑っていたその時の親友に初恋を奪われた。
その親友には異性に好きな人がいて、良く恋愛相談をされていたから脈は完全になく、告白なんかできるはずがなかった。
それでも諦められないのが恋というもので、親友という立ち位置に甘えながら好きな人の近くで中学生活を過ごし、結局別々の高校に進学した。──卒業式に親友はずっと片思いをしていた男子に告り、見事にOKを貰えたと泣きながら報告され、その時に違う恋を探そうと心に決めた。長くて短い、三年間の初恋だった。
この世の中には女子も男子も好きになる方が一定数いるらしい。……できれば次は自分も男子を好きに、なんて。
そんなことを願っていた時に出会ったのがるりだ。うちが同性愛者なことを隠してるように、何かを隠してそうな姿に興味を持った。
でも、また下手に仲良くなって、同性を好きになってしまったら。怖くなって話しかけられずにいると、なんとるりの方から声をかけてくれた。
『あ、あのさっ。その目、めっちゃ綺麗だよね!』
……元気で、優しくて、たまに挙動不審になって、可愛らしい彼女。
恋に落ちるのは、必然だったと思う。好きにならないわけがなかった。
だからこそ、今日、きっとずっと隠していたであろうことを自分の口で明かしてくれて、とても嬉しかった。……泣かれたのは超焦ったけど。
『私の推しはね、フユアヤって言って』
好きな人の推し……かあ。
眉間にしわを寄せて画面を睨む。そりゃ、るりの推しなら、うちだって好きになりたい。
けど、本当の同性愛者のうちにとって、どうしても“ビジネス同性カップル売り”には嫌悪感を持つ。
だって、……こっちは本気で悩んでんのにさ。
二次元や物語の中ならみんな「尊い」とか言ってるのに、三次元になった途端みんな顔をしかめる。世の中は不公平だ。
「……明日見よ」
机にスマホを置き、うちは入れ替わりに読みかけの本を手に取った。
