その、最後の一歩を踏みしめたとき、完成したと思った。身体の使い方を思い出した、ストップウォッチを見れば見事新記録。これから、いけるかもしれない。
その日はまず学校に集合する。そして全員で土手に向かう。ジャージ姿のポケットには優凪の指輪が。ぎゅっとそれを抱きしめた、体温が伝わったのか、少し温かい。誰にも見られないように身に着けた。見つからないように体操着の中へ。
土手に用意された救護所では優凪が幸原の言うことを聞いて、毛布や救急セットの用意をしている。こちらを見ている響魚に気が付いたのか、そっと遠慮がちに手を振った。周りを見ながらそっと首元を見せる、指輪。響魚も手のひらに隠す指輪を見せた。
三年生はもう部活を引退しているから、それほどの脅威ではない。一部の一、二年生が問題だ。部活動の盛んなこの学校で現役運動部員は皆鍛えている。響魚はその点で少し心配だったが、ここ数週間は昔の感覚を思い出すように頑張ったつもりだ。
「参加生徒ー、スタート位置について。おいおい上着は脱いでおけよ、ダウンは着るな。気持ちはわかるけどな」
体育教師の言葉にスタート位置にぞろぞろと集まり出す生徒は、クラスごとに出席をとられて、やがて軽く身体を動かしたのち立ちどまる。わいわい騒いでいた話し声も聞こえなくなった。
「五キロ地点で折り返すときにはマジックペンで手のひらに印をつけて、辛くなったら無理をしないで歩くこと。じゃあ、位置について……」
一瞬の沈黙、そして、用意スタート!
生徒たちが少しずつ走り始めた。最初だけハイペースで上位気分を味わう生徒もいるが、それはほんの少しの間のことですでに力尽きて背後に回って行く。響魚は先頭グループの真ん中あたりにいた。いつもの彼の走りに比べて速度は少し遅いが後半に向けてスタミナは残しておかないと、と言うことなのだろう。
ふと響魚が隣にやって来た生徒に目をやると、そこにいたのは庄司だった。軽い笑顔、庄司はもう怒ってはいなかった。目と目があって、お互い少し微笑んだ。確執はもうない、お互いにランナーのひとりとして、今日の大会を走り抜けるのだ。優凪と幸原はそんな響魚を見守っている。
「加瀬くん、見えた?」
「はい、割と前の方を走ってるみたいで……楽しみです」
折り返し地点にやって来た段階で、響魚は二十位以内に入っていた。疲れた様子もなく、走り方も力強い。本部テントのなかから手を振る優凪と幸原に、ゆっくりとうなずいた。大丈夫、彼はまだ走ることが出来る。優凪は彼にもらったお守りの指輪を胸元にこっそりつけていた。頑張れ、響魚。
その日はまず学校に集合する。そして全員で土手に向かう。ジャージ姿のポケットには優凪の指輪が。ぎゅっとそれを抱きしめた、体温が伝わったのか、少し温かい。誰にも見られないように身に着けた。見つからないように体操着の中へ。
土手に用意された救護所では優凪が幸原の言うことを聞いて、毛布や救急セットの用意をしている。こちらを見ている響魚に気が付いたのか、そっと遠慮がちに手を振った。周りを見ながらそっと首元を見せる、指輪。響魚も手のひらに隠す指輪を見せた。
三年生はもう部活を引退しているから、それほどの脅威ではない。一部の一、二年生が問題だ。部活動の盛んなこの学校で現役運動部員は皆鍛えている。響魚はその点で少し心配だったが、ここ数週間は昔の感覚を思い出すように頑張ったつもりだ。
「参加生徒ー、スタート位置について。おいおい上着は脱いでおけよ、ダウンは着るな。気持ちはわかるけどな」
体育教師の言葉にスタート位置にぞろぞろと集まり出す生徒は、クラスごとに出席をとられて、やがて軽く身体を動かしたのち立ちどまる。わいわい騒いでいた話し声も聞こえなくなった。
「五キロ地点で折り返すときにはマジックペンで手のひらに印をつけて、辛くなったら無理をしないで歩くこと。じゃあ、位置について……」
一瞬の沈黙、そして、用意スタート!
生徒たちが少しずつ走り始めた。最初だけハイペースで上位気分を味わう生徒もいるが、それはほんの少しの間のことですでに力尽きて背後に回って行く。響魚は先頭グループの真ん中あたりにいた。いつもの彼の走りに比べて速度は少し遅いが後半に向けてスタミナは残しておかないと、と言うことなのだろう。
ふと響魚が隣にやって来た生徒に目をやると、そこにいたのは庄司だった。軽い笑顔、庄司はもう怒ってはいなかった。目と目があって、お互い少し微笑んだ。確執はもうない、お互いにランナーのひとりとして、今日の大会を走り抜けるのだ。優凪と幸原はそんな響魚を見守っている。
「加瀬くん、見えた?」
「はい、割と前の方を走ってるみたいで……楽しみです」
折り返し地点にやって来た段階で、響魚は二十位以内に入っていた。疲れた様子もなく、走り方も力強い。本部テントのなかから手を振る優凪と幸原に、ゆっくりとうなずいた。大丈夫、彼はまだ走ることが出来る。優凪は彼にもらったお守りの指輪を胸元にこっそりつけていた。頑張れ、響魚。
