今年一年が終わって行く、そんなことを思う日が多くなった。学校ではつい先日またテストがあって、それも響魚と二人で勉強をしてやはり響魚はいつも通りだったが優凪はまた成績が上がった。このままならクラスでも上位になれる可能性もある。いままでずっと苦手だった勉強が少し好きになった。わかることが増えて行くのは楽しい。
クリスマスに年末行事、お正月。新たな一年が待っている、しかしその前にこの学校の生徒たちに待っているのはマラソン大会だった。
フルマラソンではないが、十キロほど走る。学校の近くに土手があって、そこを皆、必死の思いで走り抜けるのだ。
「優凪、お前はどうするんだ?」
「ドクターストップって言うほど大げさじゃないけどさ、幸原先生がだめだって」
「じゃあ見学するのか」
「僕も走ってみたかったなあ、昔からこういう行事出たことないんだよね」
「まあ、体調が悪いなら無理をしないほうがいい」
優凪は、見学。ゴールで走り終えた生徒に一本ずつスポーツドリンクを配る係だった。マラソン大会には見学の生徒が毎年数人はいる。なかには走るのが嫌でそれをうらやましく思う生徒もいるので、見学だからと気楽にしていられるわけでもない。好きで行事を見学しているわけでもないのに些細な嫉妬も面倒なものだ。
「寒くなって来たからな、暖かくして見ているんだぞ」
「響魚くん速いでしょ、ゴールで会うのが楽しみだなあ」
「もう本格的に練習をしているわけでもない。上位は狙えないよ」
部活はもう幽霊部員だ。名前だけあって参加はしていない、このままでいけば来年には除籍されてしまうのだろう。いまはたまに響魚が体育の授業を受けているのを優凪は見かけるが、それほど目立つ生徒ではなくなってしまった。
だけど優凪は感じていた、響魚は本当はまだ走りたいのではないかと。いまでも彼の引き締まった身体が勢いよくゴールテープを切る幻を見る。それくらいに響魚は精いっぱいに力を振り絞って走っていた。その思い出が残っている。
また走ればいいのに、そう思っても走ることが出来なくなる原因を作った優凪がその言葉を言うわけにはいかない。優凪がしっかりしていたら、彼も部活に出るのが気まずくはならなかった。むしろおそらく県大会の代表に選ばれてきらきらと輝きながら部活に励んでいただろう。誰もが彼をこの学校のエースと認めていた、そんな頃もあったのだ。
「響魚くん……」
そのとき響魚の指がするりと優凪の制服の首元に入った。チェーンの金属音とともに指輪が出てくる。優凪の誕生日に響魚がプレゼントしてくれたものだった。
「指輪、身に着けてくれているんだな。嬉しいよ」
「せっかくもらったお守りだからね。いつでも一緒だよ!」
「はは、そうか」
いつでも優凪を守ってくれる響魚、でもそろそろ優凪が響魚のために何か出来ることをすべきではないのか。
「優凪?」
「……ううん、なんでもない」
響魚を守りたい、その夢も生きがいも、それはこれから先ふたりで生きて行くための理由になるべきものだった。
クリスマスに年末行事、お正月。新たな一年が待っている、しかしその前にこの学校の生徒たちに待っているのはマラソン大会だった。
フルマラソンではないが、十キロほど走る。学校の近くに土手があって、そこを皆、必死の思いで走り抜けるのだ。
「優凪、お前はどうするんだ?」
「ドクターストップって言うほど大げさじゃないけどさ、幸原先生がだめだって」
「じゃあ見学するのか」
「僕も走ってみたかったなあ、昔からこういう行事出たことないんだよね」
「まあ、体調が悪いなら無理をしないほうがいい」
優凪は、見学。ゴールで走り終えた生徒に一本ずつスポーツドリンクを配る係だった。マラソン大会には見学の生徒が毎年数人はいる。なかには走るのが嫌でそれをうらやましく思う生徒もいるので、見学だからと気楽にしていられるわけでもない。好きで行事を見学しているわけでもないのに些細な嫉妬も面倒なものだ。
「寒くなって来たからな、暖かくして見ているんだぞ」
「響魚くん速いでしょ、ゴールで会うのが楽しみだなあ」
「もう本格的に練習をしているわけでもない。上位は狙えないよ」
部活はもう幽霊部員だ。名前だけあって参加はしていない、このままでいけば来年には除籍されてしまうのだろう。いまはたまに響魚が体育の授業を受けているのを優凪は見かけるが、それほど目立つ生徒ではなくなってしまった。
だけど優凪は感じていた、響魚は本当はまだ走りたいのではないかと。いまでも彼の引き締まった身体が勢いよくゴールテープを切る幻を見る。それくらいに響魚は精いっぱいに力を振り絞って走っていた。その思い出が残っている。
また走ればいいのに、そう思っても走ることが出来なくなる原因を作った優凪がその言葉を言うわけにはいかない。優凪がしっかりしていたら、彼も部活に出るのが気まずくはならなかった。むしろおそらく県大会の代表に選ばれてきらきらと輝きながら部活に励んでいただろう。誰もが彼をこの学校のエースと認めていた、そんな頃もあったのだ。
「響魚くん……」
そのとき響魚の指がするりと優凪の制服の首元に入った。チェーンの金属音とともに指輪が出てくる。優凪の誕生日に響魚がプレゼントしてくれたものだった。
「指輪、身に着けてくれているんだな。嬉しいよ」
「せっかくもらったお守りだからね。いつでも一緒だよ!」
「はは、そうか」
いつでも優凪を守ってくれる響魚、でもそろそろ優凪が響魚のために何か出来ることをすべきではないのか。
「優凪?」
「……ううん、なんでもない」
響魚を守りたい、その夢も生きがいも、それはこれから先ふたりで生きて行くための理由になるべきものだった。
