優凪に話しかけようと機会をうかがっている他校生を響魚がにらみつけると、向こうは驚いた感じでそそくさと逃げて行ってしまった。優凪は響魚のものだ、誰にも譲らない。
一方で優凪は何の意識もしていないようで、自分が注目を集めていることに気が付いていなかった。なんて自覚のないお姫さま。これは目が離せないと響魚は優凪に寄り添う。
「食事でも行こうか。校庭の方で焼きそばやお好み焼き、売ってるだろ」
「あ、うん。そうだねえ」
そして周りをけん制するように優凪の半歩先を響魚が歩く。まるでそれはお姫さまを守るようにエスコートして歩く王子さまそのものだった。
***
「疲れたあ、色々見たよね。演劇部の劇が思ったより本格的で楽しかった! まさかミステリーものだとは思わなかったよ。はらはらしちゃった」
「演劇部は全国の高校文化祭で賞とかも毎年とってるらしいから、割と有名だよ。俺も実際に見たのは初めてだったが面白かったな」
「三年生のレコード喫茶店もよかったな。名曲ぞろいだったし、クリームソーダも美味しかった」
「ああ、俺の頼んだコーヒーフロートも甘すぎなくてよかったよ」
高校一年の文化祭を心から楽しんだ二人だった。そろそろ時刻も夕方、陽が落ちたら校庭で花火が打ち上げられる。近隣にも有名なこの学校の一大イベントだった。二人は休憩所代わりになっている四階の空き教室から校庭を眺めていた。たぶんそろそろ花火の時間。教室には他にも生徒が数人。皆、一日を存分に楽しんだようでそれぞれ充実した顔をしている。
「今日は楽しかったよ。響魚くんと回れたからかな、ねえ来年は一緒に出し物やろうよ」
「まあ、考えておく」
「僕はお店やってみたいなあ、カフェとか」
優凪の夢が膨らんでいる。その顔もまた……響魚はうっとりとした優凪の横顔を隣でじっと見つめていた。言葉なんていらない、その瞬間がただ愛おしい。
「今日一日の記念の花火! 打ち上げまでのカウントダウンをご一緒に」
校庭のステージでのアナウンスに生徒たちは空を見上げる。教室で見守る優凪と響魚も夜空をじっと見上げた。十、九……そのときそっと響魚が隣の優凪の手を握る。驚いた優凪は思わず響魚を見上げた。
「花火、もうすぐだ」
「う、うん」
大きな音とともにその瞬間に空に鮮やかな花が咲く。優凪は花火を見ながらぎゅっとその手を握り返した。何発も夜空に打ち上げられる花火、ふたりはずっと身を寄せ合って……。
一方で優凪は何の意識もしていないようで、自分が注目を集めていることに気が付いていなかった。なんて自覚のないお姫さま。これは目が離せないと響魚は優凪に寄り添う。
「食事でも行こうか。校庭の方で焼きそばやお好み焼き、売ってるだろ」
「あ、うん。そうだねえ」
そして周りをけん制するように優凪の半歩先を響魚が歩く。まるでそれはお姫さまを守るようにエスコートして歩く王子さまそのものだった。
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「疲れたあ、色々見たよね。演劇部の劇が思ったより本格的で楽しかった! まさかミステリーものだとは思わなかったよ。はらはらしちゃった」
「演劇部は全国の高校文化祭で賞とかも毎年とってるらしいから、割と有名だよ。俺も実際に見たのは初めてだったが面白かったな」
「三年生のレコード喫茶店もよかったな。名曲ぞろいだったし、クリームソーダも美味しかった」
「ああ、俺の頼んだコーヒーフロートも甘すぎなくてよかったよ」
高校一年の文化祭を心から楽しんだ二人だった。そろそろ時刻も夕方、陽が落ちたら校庭で花火が打ち上げられる。近隣にも有名なこの学校の一大イベントだった。二人は休憩所代わりになっている四階の空き教室から校庭を眺めていた。たぶんそろそろ花火の時間。教室には他にも生徒が数人。皆、一日を存分に楽しんだようでそれぞれ充実した顔をしている。
「今日は楽しかったよ。響魚くんと回れたからかな、ねえ来年は一緒に出し物やろうよ」
「まあ、考えておく」
「僕はお店やってみたいなあ、カフェとか」
優凪の夢が膨らんでいる。その顔もまた……響魚はうっとりとした優凪の横顔を隣でじっと見つめていた。言葉なんていらない、その瞬間がただ愛おしい。
「今日一日の記念の花火! 打ち上げまでのカウントダウンをご一緒に」
校庭のステージでのアナウンスに生徒たちは空を見上げる。教室で見守る優凪と響魚も夜空をじっと見上げた。十、九……そのときそっと響魚が隣の優凪の手を握る。驚いた優凪は思わず響魚を見上げた。
「花火、もうすぐだ」
「う、うん」
大きな音とともにその瞬間に空に鮮やかな花が咲く。優凪は花火を見ながらぎゅっとその手を握り返した。何発も夜空に打ち上げられる花火、ふたりはずっと身を寄せ合って……。
