病弱少年はいつかお姫さまに

 それから数日は響魚は毎日学校終わりに優凪の家に来てくれた。優凪はほんの少量ずつ食事をする。それを響魚は見守って、ぽつりぽつりと今日学校であった話をした。響魚は部活も頑張っているらしい。優凪も熱は下がり、明日からは学校に行くと響魚に告げる。

「無理するなよ」
「でも、そろそろ行かないとね。留年したら響魚くんのいない学校に余計に通うことになっちゃうしさあ」
「一緒に卒業できたらいいな」

 未来はわからない、お互い大学進学を希望してはいるがきっと違う学校に行くのだろう。でも優凪は響魚と離れたくはなかった。例え違う学校に行ってもいつも帰る場所は響魚の隣で、なんて響魚に言えるほど自分の感情を出すのが得意ではなかったが。

「優凪、今週の日曜日は暇か?」
「予定はないけど」
「どこか遊びに行こう。部活が顧問の都合で休みになったんだ、映画でも遊園地でもお前の行きたいところに行こう」
「え、それってデートじゃない?」
「そうだよ」
「は……」

 突然そんなことを言われたらなんて答えたらよいのかわからなかった。確かに夏休みは一緒に過ごすことが多かったし、それもある意味デートを言えるかもしれない。でも改めてどこかにでかけるなんて。どこにしよう、しばし優凪は迷ったが、ふとそこで行ってみたい場所を思いついた。

「響魚くんの家に行きたい。いつもうちでばかり会っていたしさ、どんな部屋で暮らしてるのか教えてよ」

 ***

 日曜日、響魚の地元駅で待ち合わせをした。待ち合わせはいつものことなのに今日の響魚はどこか特別な顔をしている。

「優凪」
「響魚くん! お待たせー待った?」
「少しな」

 響魚は四人家族らしい。だからお土産は少し考えて、地元の洋菓子店で売っていた六個入りのマカロンを買った。余った分は好きに食べてもらえれば、評判の良い洋菓子店だった。

「土産なんて良いのに」
「はじめてお邪魔するし、響魚くんにはお世話になっているからね」

 はぐれないように優凪は響魚の後を歩く。響魚の地元は駅前なのに自然が多く、のんびりとしていて都会の真ん中で育った優凪にとっては新鮮だった。この街で響魚は生まれ育ったのか。

「中学の時は毎朝ランニングしてた、この道」
「朝の空気が良さそうだね、緑が濃いって言うか」
「独特の匂いがするんだよな、特に雨上がりの朝は」

 響魚の家の近くの道、上品な住宅街だ。花が好きであろう家には鉢植えにあふれるほどの小さな白いバラが咲いていた。多分幸せな家族が住んでいるのだろう、優凪もそんな街に生まれたかった。

「あの家だよ。二階建ての、桜の樹が咲いている」