それからまた三日と開けず、春海と図書館へ行っては課題をやる。
終わりが見えないと思っていた課題も、春海の協力のお陰で大方終わらせることができた。
読書感想文を書く課題では、それぞれ別の本を、ただ静かに読んでいるだけの時もあった。
春海がページを捲る音と、俺がページを捲る音と、エアコンの音くらいしかしない空間が、やけに心地良かった。
時々冷えた指先を絡めて、存在を確かめ合う。
並んで座っていると、いつもお弁当を食べているあの踊り場を思い出す。
早く毎日会える日々に戻りたい気がするし、朝からゆっくり一緒に居られるこの日々を、もう少し続けていたい気もした。
そうは言っても、時は過ぎて行き。
俺は久々に、学校へと向かうバスに乗っていた。
春海は今日はバイクで行くらしく、朝は別々だった。
だからまだ会えていなくて、早く会いたいと思う。
昨日も会っていたけれど、今日に備えて早めに解散したから、ちょっと物足りなかったのだ。
春海とは特に何もせず、ただ傍に居るだけで満たされるから不思議だと思う。
まあ、傍に居たら居たで、触れたくなるのだけれど。
教室に着くと、クラスメイトと久々の挨拶をする。
ファンクラブ通信が控え目で寂しかったよ〜〜と言われて、どんな顔をすれば良いのか分からなかった。
「ん、控え目?」
「うん、夏祭りでお揃いの浴衣デート!以外無かったんだ〜」
「っげほ」
「大丈夫!?」
見、られて居たのか。咳き込む俺を心配するクラスメイトに、掌を見せて制止する。
隣町だし、まさか同じ学校の人が来ているとは思わなかった。しかもファンクラブの加入者。
いや待てよ、通信を広めているのはあの後輩だから、後輩本人が、あの場に居たのか。
「いつの間に……」
「会長のお家、隣町らしいからね!」
「……」
全てが繋がった、そんな感覚だった。
次からは隣町も警戒しなくては、と思う。
けれど、図書館に通っていたのがバレていないのは救いだった。
あそこは冬休み以降も使いたいと思うくらい、落ち着く空間だった。
「おはよう」
「おはよう!」
「……おはよ」
漸く来た春海は、既に疲れている俺を見て、にこ、と微笑んでいる。
春海は後輩に見られていたことを知っても、きっと変わらず笑っているのだろう。
悔しいが、それ以上に、楽しい夏休みだったな、と思った。
今日は昼までで終わりで、お弁当を食べること無く帰る。
春海と共に頑張った課題は全て提出して、恙無く二学期初日を終えることができた。
春海のバイクに乗りながら、日差しの強さが少しマシになっていることに気が付く。
もう直ぐ、長かった夏も、終わろうとしている。
冬はバイクに乗るのか分からなくて、着いた家の前で少し、春海とバイクを眺めた。
けれど。
九月に入っても依然、暑いまま。
俺と春海は音楽準備室でお弁当を食べて、だらけていた。
「夏が長い〜」
「長いな」
春海は半分寝ながら、それでも返事をしてくれる。
今日は梅干しの種を、俺が言わずとも直接奪われた。
ばあちゃん家で、自然と奪って行った時のことを思い出して、何故か、泣きそうになった。
気分が落ちていた時の春海を思い出したからなのか、ばあちゃんのことを思い出したからなのかは分からなかった。
どっちも、含まれている様な気もした。
そのうち春海の寝息が聞こえてきて、俺も机に伏せる。
暑いのに、日が落ちるのが早くなってきていて。
暑いのに、秋の香りを時々感じる。
だからなのか、時々理由の分からない淋しさに襲われる。
春海が寝ている時に、淋しくなることが多かった。
ここに居るのに、居ないみたいだからなのだろうか。
春海の、寝息を聞くのが癒しだったのに。
俺は欲張りになってしまったな、と思った。
春海のバイクに乗って、今日も帰る。
暑いけれど引っ付いていた。
この時くらいしか、くっつく機会が無いから。
家に着くと、照れくさそうに笑う春海から、手紙が渡される。
もう、一ヶ月経ったのか、と驚く。
中を見ようとしても、もう春海は隠そうとしない。
その余裕がまた少し悔しかった。
『三ヶ月です、変わらず傍に居てくれてありがとう。夏休みを希と過ごせて楽しかった。大好きです。もっと一緒に居たい』
「……俺も」
「うん」
「足りない、春海。もっと一緒が良い」
「……うん」
言っても、どうにもならないけれど。
初めて深く触れ合った時から、もう何日も経った。
ずっと一緒に居たい。
もっと一緒に居たい。
もっと傍に居て、もっと、触れ合っていたい。
多分、二人共、同じ想いを抱えている。
「早く大人になりたい」
「……うん」
「手紙ありがとう。俺も大好き」
「うん」
あれだけ照れていた『大好き』が、今日は大切な気持ちとして、温かいものとして、春海に伝えることができた。
春海も、嬉しそうに笑っていた。
大人になりたい、と、ずっと考えている。
自分の人生に、自分で責任を持ちたい。
親の力ではなく、自分の力で生きて、その上で、春海と一緒に居たい。
自分で働いて、稼いで、自分が責任を持つ家で、春海と過ごしたい。生きていきたい。
けれど、まだ高校二年生で、直ぐに働くにしたって、あと一年以上は学生の身で。
校則としてバイトが禁じられているので、自分のお小遣いを稼ぐ、ということすらまだできなくて。
それがもどかしくて仕方ない。
早く大人になりたいと、ずっと考えている。
終わりが見えないと思っていた課題も、春海の協力のお陰で大方終わらせることができた。
読書感想文を書く課題では、それぞれ別の本を、ただ静かに読んでいるだけの時もあった。
春海がページを捲る音と、俺がページを捲る音と、エアコンの音くらいしかしない空間が、やけに心地良かった。
時々冷えた指先を絡めて、存在を確かめ合う。
並んで座っていると、いつもお弁当を食べているあの踊り場を思い出す。
早く毎日会える日々に戻りたい気がするし、朝からゆっくり一緒に居られるこの日々を、もう少し続けていたい気もした。
そうは言っても、時は過ぎて行き。
俺は久々に、学校へと向かうバスに乗っていた。
春海は今日はバイクで行くらしく、朝は別々だった。
だからまだ会えていなくて、早く会いたいと思う。
昨日も会っていたけれど、今日に備えて早めに解散したから、ちょっと物足りなかったのだ。
春海とは特に何もせず、ただ傍に居るだけで満たされるから不思議だと思う。
まあ、傍に居たら居たで、触れたくなるのだけれど。
教室に着くと、クラスメイトと久々の挨拶をする。
ファンクラブ通信が控え目で寂しかったよ〜〜と言われて、どんな顔をすれば良いのか分からなかった。
「ん、控え目?」
「うん、夏祭りでお揃いの浴衣デート!以外無かったんだ〜」
「っげほ」
「大丈夫!?」
見、られて居たのか。咳き込む俺を心配するクラスメイトに、掌を見せて制止する。
隣町だし、まさか同じ学校の人が来ているとは思わなかった。しかもファンクラブの加入者。
いや待てよ、通信を広めているのはあの後輩だから、後輩本人が、あの場に居たのか。
「いつの間に……」
「会長のお家、隣町らしいからね!」
「……」
全てが繋がった、そんな感覚だった。
次からは隣町も警戒しなくては、と思う。
けれど、図書館に通っていたのがバレていないのは救いだった。
あそこは冬休み以降も使いたいと思うくらい、落ち着く空間だった。
「おはよう」
「おはよう!」
「……おはよ」
漸く来た春海は、既に疲れている俺を見て、にこ、と微笑んでいる。
春海は後輩に見られていたことを知っても、きっと変わらず笑っているのだろう。
悔しいが、それ以上に、楽しい夏休みだったな、と思った。
今日は昼までで終わりで、お弁当を食べること無く帰る。
春海と共に頑張った課題は全て提出して、恙無く二学期初日を終えることができた。
春海のバイクに乗りながら、日差しの強さが少しマシになっていることに気が付く。
もう直ぐ、長かった夏も、終わろうとしている。
冬はバイクに乗るのか分からなくて、着いた家の前で少し、春海とバイクを眺めた。
けれど。
九月に入っても依然、暑いまま。
俺と春海は音楽準備室でお弁当を食べて、だらけていた。
「夏が長い〜」
「長いな」
春海は半分寝ながら、それでも返事をしてくれる。
今日は梅干しの種を、俺が言わずとも直接奪われた。
ばあちゃん家で、自然と奪って行った時のことを思い出して、何故か、泣きそうになった。
気分が落ちていた時の春海を思い出したからなのか、ばあちゃんのことを思い出したからなのかは分からなかった。
どっちも、含まれている様な気もした。
そのうち春海の寝息が聞こえてきて、俺も机に伏せる。
暑いのに、日が落ちるのが早くなってきていて。
暑いのに、秋の香りを時々感じる。
だからなのか、時々理由の分からない淋しさに襲われる。
春海が寝ている時に、淋しくなることが多かった。
ここに居るのに、居ないみたいだからなのだろうか。
春海の、寝息を聞くのが癒しだったのに。
俺は欲張りになってしまったな、と思った。
春海のバイクに乗って、今日も帰る。
暑いけれど引っ付いていた。
この時くらいしか、くっつく機会が無いから。
家に着くと、照れくさそうに笑う春海から、手紙が渡される。
もう、一ヶ月経ったのか、と驚く。
中を見ようとしても、もう春海は隠そうとしない。
その余裕がまた少し悔しかった。
『三ヶ月です、変わらず傍に居てくれてありがとう。夏休みを希と過ごせて楽しかった。大好きです。もっと一緒に居たい』
「……俺も」
「うん」
「足りない、春海。もっと一緒が良い」
「……うん」
言っても、どうにもならないけれど。
初めて深く触れ合った時から、もう何日も経った。
ずっと一緒に居たい。
もっと一緒に居たい。
もっと傍に居て、もっと、触れ合っていたい。
多分、二人共、同じ想いを抱えている。
「早く大人になりたい」
「……うん」
「手紙ありがとう。俺も大好き」
「うん」
あれだけ照れていた『大好き』が、今日は大切な気持ちとして、温かいものとして、春海に伝えることができた。
春海も、嬉しそうに笑っていた。
大人になりたい、と、ずっと考えている。
自分の人生に、自分で責任を持ちたい。
親の力ではなく、自分の力で生きて、その上で、春海と一緒に居たい。
自分で働いて、稼いで、自分が責任を持つ家で、春海と過ごしたい。生きていきたい。
けれど、まだ高校二年生で、直ぐに働くにしたって、あと一年以上は学生の身で。
校則としてバイトが禁じられているので、自分のお小遣いを稼ぐ、ということすらまだできなくて。
それがもどかしくて仕方ない。
早く大人になりたいと、ずっと考えている。
