いつか幸せになる君へ

「あなたに会いたい」と言葉にするより、「会いたかったら来て」と言葉にするほうが難しいし。愛する人に会いに行くより、愛する人が会いに来てくれるかを待つことのほうが容易ではない。世間では素直に思いを伝えられる人が羨ましがられていて、会いに行くことが愛の証明だと思われている。愛なんて形は1つではないのに。その2人にしか醸し出せない雰囲気は愛だろうし、会いたさに敗れた人が渋々と会いに行く姿からも愛を感じる。駅のホームで、スマホを微笑みながら眺めている人がいて、愛する人に会いに行くのかなと思った。

雑踏とした駅の中に幾つ愛があって、僕の知り得ない形をしていて、けれどいつかは知るかもしれない愛で、寂しくて、でもそれがまた愛おしい。行き交う人の顔を見るのが癖だった。改札を通るとき、嬉しそうに前を見つめて進んでいく人の視線の先には、その人を待ってくれている人がいて、「久しぶりだね~」と僕のところまで届くくらいの声量で話していた。改札の先で、この人が会いに来るまで暫く待っていた人も、会うためにわざわざ時間を掛けて移動をしていた人も、気付いてはないかもしれないけど、そこに愛は存在している。

長らく人を眺めていたせいか、疲れてしまいカフェに寄った。アイスティーを頼み、置かれていたミルクとシロップを取りに行く。席に戻り、カフェの中にいる人に視線が移ってしまう。端に座っているスーツ姿の男性は、仕事の休憩中だろうか。僕の右側に座っている男女は、まだ大学生くらいでカップルだろうか。「お待たせしました」と声がして、僕のテーブルにアイスティーが置かれた。さっき持ってきたミルクをそれに注ぐ。ミルクが混じり合えていない一瞬があって、スプーンで混ぜた。シロップも注いで、一口だけ啜る。

褐色がベージュになった。混じり合えていなかったのにもう。右側に座っている男性が、「来週さ、どこにデート行く?お盆でどこも人が多いかな」と話している。「どこでもいいよね、一緒なら楽しいと思う」と、女性が言った。少し曇った表情になった男性は、「どこでもいいんだよね、どこにも行かないって選択肢もあるけど」と言うと、「それは違うじゃん」と女性が笑いながら言った。「ならお前が案を出せよ」と思った。入れたシロップが沈んで、さっきまでの甘さが薄くなった。浮かんだ言葉が、頭の中で行き場を失っている。

「一旦出ようか、ここの会計は俺がするね」と言い、男女が席を立った。狭い作りのカフェで、奥に座っていた女性の体が僕のテーブルにぶつかり、置いていたミルクティーが倒れそうになる。「おっ」と声が出て、それを掴んだ。そのことに気付いていない女性は、「あの人変だよ、急に声出してた」と男性に話している。聞こえているというのに。「早く別れればいいのに」と残酷なことを思った。その言葉を言うまいと、飲み込もうと思ってミルクティーをまた啜る。さっきまでなかった甘さがあって、沈んだシロップが顔を出した。

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