【完結】騙され裏切られ婚約破棄された令嬢が死の偽装工作をして消えた結果のチェックメイト

俺は生まれた時一部の貴族から
不吉だと言われていた。

原因は、赤い瞳。
生まれた日の夜
母である王妃は大量出血で
死にそうになっていたという。
医師たちによる懸命な治療がなければ恐らく
命はなかった。
それを見た一部の貴族たちは
不吉な王子と見るようになる。
真っ赤な瞳は、王妃の命を奪おうとした悪魔の瞳と
一緒だとくだらないことも囁いていた。

そしてこの瞳のせいでもあるのか
幼い頃同年代の公子や令嬢達は
恐れられ話しかけらず、近寄られなかった。

俺は慣れていた。
がしかし、このまま不吉な王子と思われ続けるのは
嫌だと感じ、剣術、学問、礼儀を叩き込んだ。
強くなれば、いつか認めてくれると信じて。

ある日
一人で王城をひっそりと抜け出して街に出た。
剣術、学問、礼儀を叩き込み続け疲れてしまい
少しだけ息抜きをしたかったから。

その時
裏路地へと移動した際
「やめてください!」
声がして駆けつけてみれば
数人の盗賊達が女性を囲んでいる。

その光景を見た瞬間、俺は護身のための
剣を引き抜いては幼いながらにも
盗賊達に立ち向かった。

運良く、追い払えたものの
相手は自分より遥かに力を持っていて
腕や足に怪我を負ってしまっていた。

助けた女性から手当てをしますと言われるものの
お忍びでこの街に来ているというのもあり優しく断り
すぐに王城まで帰ろうとした。

しかし、傷は思ったよりも酷く
途中静かな路地で膝から崩れ落ちる。
痛めば痛むほど滲み出てくる血。
(…っ)
止血ができるものも痛みを和らげる薬などは
持参していない。
どうしたことかと思っていた時。

コツコツと足音が近づいてくる。
顔を上げてみれば
そこに立っていたのは
一人の少女だった。
美しい銀色の髪に、綺麗な水色の瞳をした。

「あなた…大丈夫?」
「君は…?」
「腕と足凄い怪我してる…!」
「ちょっと来て…!」
「え?」
少女は俺の手を引っ張っては
どこかへと連れていく。
連れてこられたのは一つの赤レンガで
組まれた小さな家。

少女は、扉を軽くノックしてから開いて玄関へと入る。
「ルスクー!怪我人連れてきたよー!」

「怪我人ですか?」
そう言いながら玄関の先から現れたのは
白衣を纏い、緑色の長い髪を結びメガネをかけた
一人の男性。明らかに見て医者であった。

俺をまじまじと観察するように見る
「おやおや、酷く怪我しているね君。
おいで、私が手当てをしてあげよう。」
医者と少女に連れられたのは診察室らしき部屋

それから布を取り出し、傷を拭いてから
手当てをしてもらった。
俺の正体も聞かずに、ただ優しく。

「これでもう大丈夫。
お大事に。」
「は、はい…。」
「送っていってあげる!」
「う、うん…。」
手当てが終わってから少女に連れられて外に出た。
(なんで…。)
今まで赤い瞳を見るなり逃げていく人達は山ほどいた。
なのに、どうしてこの子は…。
思わず俺は聞いた。
「なんで、俺を見て怖がらなかったの?」
「えっ?なんで?」
思わず言葉が詰まる。
「だって、俺こんなに赤い目してるんだよ?
この赤い瞳を不気味だと思うのに…。」
少女は少し首を傾げる。
「私には…綺麗に見えるの。」
「宝石のルビーみたいにあなたの目は綺麗よ。」
その瞬間、
心臓が大きく鳴った。
初めてだった。
俺の目を見て不気味だとは思わず、
ただ綺麗だと言ってくれたのは。

「エレンシアー!どこにいるんだ?
そろそろ帰るぞー!」
と誰かの声がして、その少女は、はっとなる。
「あ、お父様が!
行かなくちゃ!」
そう言って、走り出しながらも
俺の方を振り向く。
「じゃあね!お大事に!」
そう微笑んでから真っ直ぐに走っていった。
「あっ…」
名前は聞けなかったけれど
怖がらず、避けず、何も言わずにただ助けてくれて
そして、赤い目を綺麗だと言ってくれた

あの少女が俺の支えとなっていた。