【完結】騙され裏切られ婚約破棄された令嬢が死の偽装工作をして消えた結果のチェックメイト

エレンシア・ルイナの葬儀は静かに執り行われていた。
棺の中白い花々に囲まれながら安らかに眠る
彼女の姿を見て黒い喪服を身に纏う参列者達は
悲痛な顔をしていた。

婚約破棄され、数日後に自ら命を絶った令嬢。
「まだ、お若いというのに。」
「可哀想だな。」
そう発する人達がいる中で、
異様な空気がした。
王太子ヴァレン、そして隣に立つユミア。
二人はエレンシアの眠る棺を覗き込む。
ユミアは一見、エレンシアを見るなり目元をハンカチで
覆い隠し始めた。
まるで、エレンシアが死んで悲しむように。
普通なら、虐められたというのに…
虐められた相手に対して涙を流すなんて
なんて心の広いお方なのかしら。と思うだろう。
けれど、数人の参列者達は眉をひそめた。
見えてしまったのだ。
涙を流す彼女の口元が笑っていることを。
まるで、表向きは泣いているものの、実際は
彼女が死んで喜んでいるよう。
「ねぇ…見てちょうだい。
ユミア様…笑っているわ。」
「本当だな…。」
夫人と、隣にいる貴族はそう囁いた。

ユミアは、バレないようにヴァレンに近づいて
手を優しく握る。
「ヴァレン様…。これで…。」
ヴァレンは頷きニヤリと笑いながら
棺の中に眠るエレンシアを見る。
「ああ…。」
「これで邪魔者は居なくなった。」
「やっと、お前と一緒にいられる。」
その一言に、
近くにいた参列者達の空気が冷えきっていく。
「ねぇ…聞いた?」
「元婚約者のことを邪魔者って…。」
「なんて方達だ…。」

ヴァレンもユミアも気づいていない。
やっと、邪魔者が居なくなった。
やっと、私たちは解放されて一緒にいられると
余韻に浸っていた。
信じられないというように二人を見つめる沢山の人達。

そんな中、エレンシアの葬儀が行われている教会の
外に一台の馬車が止まっていた。
その馬車に、礼服を着た男が
乗り込む。
「戻ってきた?」
礼服を着た男の先に
足を交差しながら座る白色の髪に赤い瞳をしてローブを羽織ったもう一人の男がいた。
「はい。」
「あの、伯爵家令嬢と王太子の様子はどうだった?」
「伯爵家令嬢はエレンシア様を亡くして嘆いていると装って、いなくなったことを喜んでいました。」
「王太子は、エレンシア様を見るなり嬉しそうな表情をしておりました。」
「ちっ…」
軽く舌打ちをしながら、窓から教会の方を眺める。
礼服を着た男は聞く。
「これから、どうするおつもりなのですか?」
ローブを羽織った男はニヒルに笑う。
「決まってる。」
「エレンシアを追い詰めたあいつらを。」

「徹底的に潰してやる。」
「どの手を指してもキングがその攻撃から
逃れられない状態にする。」
「チェックメイトのように。」
赤い瞳から復讐の炎が燃えているように見えていた。