【完結】騙され裏切られ婚約破棄された令嬢が死の偽装工作をして消えた結果のチェックメイト

今宵王城では
年に一度に王族、貴族、外交使節の者が大勢に集まる
大舞踏会が開かれていた。

煌びやかな装飾にそれをより一層輝かせる
大きなシャンデリア。
誰もを魅了させる優雅な音楽。

会場の壇上の中心には国王と王妃が玉座に座り
談笑しあう貴族達と
ダンスをする貴族たちを見守っていた。

壇上から離れた中央にはヴァレンがいた。
そしてその隣には、華やかなドレスを身に纏う
ユミアがいた。

ユミアは満足そうに微笑む。
(やっぱり、私こそがヴァレン様に相応しい。)
エレンシアが死んだことで、色々なことが周りで変わりつつあるが、
きっと大丈夫。きっと時間が解決してくれる。
そうすれば、
再び自分とヴァレン様は視線は向き始める。
そう思っていた時。

「エトランテ王国の王太子
ユリアス・フェルゼア殿下が御入場!」とアナウンスが
流れた後、大広間の扉が開かれる。
演奏とダンスがピタリと止まり一斉に大広間の扉へと視線を向ける。
入ってきたのは
隣国のエトランテ王国の王太子であるユリアス。
後ろには数名の護衛の騎士が。
そしてその騎士の真ん中にいるのはユリアスの側近。
側近は一人の女性を取り押さえていた。

その一人の女性を見て、ヒソヒソと話し始める貴族の中
ユミアの顔が段々と青ざめる。
(あの侍女…!)
かつて、利用していた侍女。
胸の奥で隠れていた不安が一気に襲いかかる。
「ユリアス・フェルゼア殿、一体どうした。」
国王が問いかける。
ユリアスは国王達がいる壇上の下までゆっくりと歩く。
そして、静かに答える。
「ある、お方の誤解をときにきました。」
誤解というのはどういう意味だとざわつき始める。
ヴァレンは眉を潜める。
「誤解とはなんの事だ。」
ユリアスはヴァレンの方に視線を向ける
けれどヴァレンを見る赤い瞳はどこか冷たかった。
「エレンシア嬢のことです。」
大広間が静まり返る。
ユミアの顔が青ざめて体が震えていた。
「エレンシア嬢は、悪女であるということは
誤解です。」
そう告げるユリアスにヴァレンは鼻で笑う。
「今さら何を言っているんだ。
既に、ユミアから証言が出て…」
「そのユミア伯爵令嬢の証言について事細かく
調べさせてもらいました。」
ヴァレンの言葉を遮った後
ユリアスは、指で合図をする。
その瞬間一人の護衛騎士が一枚の資料を受け渡す。
「証言一」
「王宮で平手打ちを受けた。」
ユリアスは口にした。
「平手打ちを受けた日程を確認した所」
「エレンシア嬢は、王宮にいなかった。」
そして、別の書類をめくりながら言う。
「その日、エレンシア嬢は
商人達と会談していた。」
「王宮の外出届もあるし、証人も十人いる。」
会場中が一気にザワザワとした空気となる。
ヴァレンの顔が固まるのと同時に、
ユミアの額に青い筋が浮き出てくる。
そんな二人を見ながらも、ユリアスは続けた。
「証言二」
「大切なアクセサリーを壊された。」
次の一枚の書類がユリアスによって掲げられる。
一枚の診断書であった。
名前にはエレンシア・ルイナと記名されている。
そして書かれていたのは
重度の金属アレルギー。
「エレンシア嬢は、重度の金属アレルギー。」
「金属に少し触れるだけで即座に発疹と、炎症が発生」
「長時間触れると呼吸困難になる危険あり」
貴族達のザワザワとした空気が
ますます強くなっていく。
「重度の金属アレルギーですって…。」
「つまり、触れることは不可能ということか。」
ユミアの顔が真っ白になる。
捏造してきたもの全てが一つずつ崩れていき
言い逃れができないほどにまで追い詰められていた。

そして、ユリアスはさらに追い込むように言う。
「そして、最後の証拠として。」
ユリアスが合図をした後、
側近が元侍女を連れて前に出る。
彼女は震えながらも口にした。
「私は……命令されました。」
「ユミア様に……」
「エレンシア様の食事やお茶に毒を仕込むようにと……」
その瞬間、大広間が凍りつく。
たくさんの貴族達は、ユミアの方に
信じられないという顔をして視線を向けていた。
「約八ヶ月…入れ続けました。」
「体調が悪くなるように。」
「精神が壊れるように。」
「自殺まで追い込むまで…。」
「嘘よ!!その女は嘘をついているの!!
私はそんなことしていない!!」
喚く、ユミアを横目に
ユリアスは静かに言う。
「毒の成分」
「食器の残留物」
「ユミア嬢がそこの侍女に送ったとされる毒の入った瓶」
「調べた結果、毒が一致していた。」
その瞬間、貴族達のユミアを見る目が鋭くなっていく。
「最低だ…」
「王太子妃の座が欲しいからあんなことを…」
捏造した全てのものが砕かれ
そして知らないと思われていたことが既に知られ
大勢の前で言われた瞬間、
ユミアの何もかも全てが消えていった。
言い逃れできず、ユミアはただ震えるしかない。
「ふざけるな!!」
ふと怒声が響き渡る。
ヴァレンのようだった。
「俺は王太子だ!!」
「今更、証拠があったとしても関係ない!!」
ユリアスを睨みながらもそう凄んだ瞬間
「関係ある。」
低い声が会場に響いた。
その低い声はヴァレンは誰よりも知っている声。
だからこそ動揺した。
低い声でそう発した国王は玉座から立ち上がっていた。
王妃も同じく国王と同時に立ち上がる。
二人の表情はとてつもないほど怒りに満ちていた。
「貴様は、そこの伯爵令嬢と一緒に
無実の一人の令嬢を断罪し、死に追いやった。」
王妃も続けてヴァレンに向かって言う。
「そして、彼女の葬儀でそこの伯爵令嬢と笑っていた。」
「あなたは、王族である以上に人間として恥よ。」
ヴァレンの顔がみるみると青くなっていく。
国王は壇上の前まで行く。
沢山の貴族達がいる前で告げる。
「この時を持って、
ヴァレンを王太子の地位から外す。」
大広間にいる貴族達は、驚いた反応をしながらも
「それはそうか…。」
「あそこまでいけばそれはね…。」と
当然の報いだというように呟いた。
そして国王は続ける。
「そして、伯爵令嬢ユミアは」
「虚偽告発、毒物混入、毒殺未遂の罪で拘束する。」
帝国騎士団が動き出し
ユミアの身柄を拘束する。
「嫌よ!!」
「私は悪くないわ!!!」
泣き叫びながらも抵抗するも相手は帝国騎士団。
自分よりも遥かに力は強く、
すぐに床に押さえつけられる。
騎士達に無理やり引きずられるように会場を退場していくユミア。
それから、ヴァレンは床に膝をつき打ちひしがれる。

そして、大広間に残るのは沈黙と困惑のみ。

ユリアスはゆっくりと目を閉じる。
思い浮かべるのはエレンシア。

(エレンシア)
(君の名誉を取り戻したよ。)


こうして、王太子ヴァレンと伯爵令嬢ユミアは
逃れられない状態までユリアスにより追い詰められた。


数ある王手のうち、どんな手を使ってでも
逃げられない

チェックメイトのように。