嫁入り当日。
私は花嫁らしい華やかな着物や嫁入り道具など一切持たされず、普段着の古い着物のまま、裏口からひっそりと篝宮家を後にした。
見送りに来たのは、娘を厄介払いできたことに安堵している様子の、父ただ一人。
「お前はもう嫁にやった、篝宮の人間ではない。二度と篝宮の敷居を跨ぐな」
吐き捨てるように告げられた冷酷な言葉。
私の手に持っているのは小さな風呂敷包みが一つ。懐には、母の形見の白蝶貝の櫛だけがそっと忍ばせてあった。冷たい風が頬を打ち、私は一度も実家を振り返ることなく、迎えの自動車へと乗り込んだ。
帝都の一等地にそびえ立つ、豪奢な西洋建築の久城伯爵邸。
静まり返った広間で、関係者だけで行われたごく簡素な婚姻の儀式。そこで私は、これから夫となる人――久城冬真様と、初めて対面することになった。
(本当に、大きな方……)
噂通り、彼はひときわ背が高く、威圧感のある大柄な体格をしていた。
銀糸を交えたような色素の薄い髪は隙なく撫でつけられ、氷のように冷ややかな青い瞳は感情を読み取らせない。
仕立ての良い軍服に身を包んだその姿は、壮大で隙がなかった。
婚礼は静かに終わった。華やかな祝宴もなく、客人もいない。
私は花嫁らしい華やかな着物や嫁入り道具など一切持たされず、普段着の古い着物のまま、裏口からひっそりと篝宮家を後にした。
見送りに来たのは、娘を厄介払いできたことに安堵している様子の、父ただ一人。
「お前はもう嫁にやった、篝宮の人間ではない。二度と篝宮の敷居を跨ぐな」
吐き捨てるように告げられた冷酷な言葉。
私の手に持っているのは小さな風呂敷包みが一つ。懐には、母の形見の白蝶貝の櫛だけがそっと忍ばせてあった。冷たい風が頬を打ち、私は一度も実家を振り返ることなく、迎えの自動車へと乗り込んだ。
帝都の一等地にそびえ立つ、豪奢な西洋建築の久城伯爵邸。
静まり返った広間で、関係者だけで行われたごく簡素な婚姻の儀式。そこで私は、これから夫となる人――久城冬真様と、初めて対面することになった。
(本当に、大きな方……)
噂通り、彼はひときわ背が高く、威圧感のある大柄な体格をしていた。
銀糸を交えたような色素の薄い髪は隙なく撫でつけられ、氷のように冷ややかな青い瞳は感情を読み取らせない。
仕立ての良い軍服に身を包んだその姿は、壮大で隙がなかった。
婚礼は静かに終わった。華やかな祝宴もなく、客人もいない。
