帝都でも有数の歴史を持つ旧家、篝宮(かがりみや)家。その正妻であった母が病に倒れ、ついに帰らぬ人となったのは、私がまだ十にも満たない幼い頃だった。
深い悲しみに暮れる間もなく、父は新しい妻とその娘をこの家に迎えた。透き通るような白い肌と、美しくも冷酷な目をした後妻と、その連れ子である一つ年下の義妹、美弥子様である。
彼女たちが、荷物を解くよりも早く篝宮家の女主人と長女の座にふんぞり返るまでに、そう時間はかからなかった。
実の娘である私は、それまで使っていた日当たりの良い部屋から、奥の薄暗く隙間風の吹き込む物置部屋へと追いやられた。
そしていつしか、使用人たちと同じか、それ以下の扱いを受けるようになった。
父は、傾きかけた事業の立て直しと、雪だるま式に膨れ上がる借金のやり繰りに忙殺されており、家庭内のことに目を向ける余裕などなかった。
ましてや、不本意な政略結婚の相手である先妻の娘が、愛する新しい妻とその子からどのような扱いを受けているかなど、完全に無関心であった。
それでも私は、母との約束を守り、決して笑顔を絶やすことはなかった。
木枯らしが吹きすさび、身を切るような冷たい風が頬を打つ冬の朝も、屋敷の誰よりも早く起き出し、霜の降りた庭を竹箒で掃き清めた。
あかぎれで血の滲む小さな手を、刺すように冷たい井戸水で洗い、まだ暗い台所で女中たちと共に朝食の準備を手伝う。
継母から与えられるのは、とうに丈の合わなくなった、色あせて裾が擦り切れた古い着物だけだった。布地が薄くなり破れれば、私は夜なべをして丁寧につぎ当てをした。色の違う端切れを縫い合わせる時も、少しでも見栄えが良くなるように、花や鳥の形に切って縫い付けるなど工夫をして身にまとった。
