またある日は、お肉の代わりにたっぷりの蓮根のすりおろしを混ぜ込んだ、特製のハンバーグを焼き上げた。
「今日は肉か」
ナイフを入れた冬真様は、口に入れた瞬間に目を丸くした。
「なんだ、この食感は……妙にもちもちとしているな」
「ふふっ。実はそれ、すりおろした蓮根と豆腐を混ぜているのです。お腹に優しくて、腹持ちも良いんですよ」
「蓮根だと?……騙された気分だ」
恨みがましい口調とは裏腹に、ナイフとフォークは止まらない。甘辛いお醤油ベースのタレが絡んだもちもちのハンバーグを、彼はあっという間に胃袋へ収めてしまった。
量を急に減らせば冬真様が不満を抱くと考え、見た目の満足感は残した。肉には野菜や豆を混ぜ、油を減らす代わりに香辛料と出汁を工夫する。
甘味も完全には取り上げなかった。砂糖を控え、林檎や干し葡萄など、果物そのものの甘みを生かした甘味を食後にお出しした。
「またお前が作ったのか」
夕食の席で、並べられた料理と私の顔を交互に見て、冬真様がふうと息を吐く。
「はい。本日は海鮮グラタンでございます」
グラタンとは言っても、普通の西洋料理のそれとは少し違う。胃に重い小麦粉と大量のバターを使ったホワイトソースの代わりに、水切りしたお豆腐と牛乳、白味噌、そして少量のオリーブ油を混ぜ合わせた特製の「豆腐ソース」を使っているのだ。
泡だて器で丹念に混ぜ合わせることで、お豆腐とは思えないほど滑らかでクリーミーな口当たりになる。さらに、お腹にたまるマカロニの代わりには、風味豊かな色とりどりのキノコを。
一番上にはチーズを乗せてこんがりと香ばしく焼き上げている。スプーンを入れると、表面はカリカリ、中はとろりとした熱々の仕上がりだ。
一口食べた冬真様は、その予想外の滑らかな味わいに少し目を丸くした後、ぽつりとこぼした。
「……伯爵家の妻が、毎日女中たちに混ざって台所に立つなど聞いたことがない。疲れないのか」
呆れたような口調だったが、その低い声色には、不器用な気遣いがはっきりと滲んでいた。
「ご心配ありがとうございます。ですが、少しも疲れませんわ。お料理は楽しいですし、何より……」
「何より?」
「旦那様が、私がお出ししたものを毎日一つ残らず、綺麗に召し上がってくださいますから。それが嬉しくて」
「……出されたものを残すのが嫌いなだけだ」
プイッとそっぽを向く冬真様の耳の端が、少しだけ赤く染まっている。
「それでは明日も、残さず召し上がっていただけるお料理を作りますね」
「……勝手にしろ」
私はにこりと笑った。
「はい、勝手にします!」
冬真様が、また一本取られたというような、諦めと安堵の混じった顔をした。
「今日は肉か」
ナイフを入れた冬真様は、口に入れた瞬間に目を丸くした。
「なんだ、この食感は……妙にもちもちとしているな」
「ふふっ。実はそれ、すりおろした蓮根と豆腐を混ぜているのです。お腹に優しくて、腹持ちも良いんですよ」
「蓮根だと?……騙された気分だ」
恨みがましい口調とは裏腹に、ナイフとフォークは止まらない。甘辛いお醤油ベースのタレが絡んだもちもちのハンバーグを、彼はあっという間に胃袋へ収めてしまった。
量を急に減らせば冬真様が不満を抱くと考え、見た目の満足感は残した。肉には野菜や豆を混ぜ、油を減らす代わりに香辛料と出汁を工夫する。
甘味も完全には取り上げなかった。砂糖を控え、林檎や干し葡萄など、果物そのものの甘みを生かした甘味を食後にお出しした。
「またお前が作ったのか」
夕食の席で、並べられた料理と私の顔を交互に見て、冬真様がふうと息を吐く。
「はい。本日は海鮮グラタンでございます」
グラタンとは言っても、普通の西洋料理のそれとは少し違う。胃に重い小麦粉と大量のバターを使ったホワイトソースの代わりに、水切りしたお豆腐と牛乳、白味噌、そして少量のオリーブ油を混ぜ合わせた特製の「豆腐ソース」を使っているのだ。
泡だて器で丹念に混ぜ合わせることで、お豆腐とは思えないほど滑らかでクリーミーな口当たりになる。さらに、お腹にたまるマカロニの代わりには、風味豊かな色とりどりのキノコを。
一番上にはチーズを乗せてこんがりと香ばしく焼き上げている。スプーンを入れると、表面はカリカリ、中はとろりとした熱々の仕上がりだ。
一口食べた冬真様は、その予想外の滑らかな味わいに少し目を丸くした後、ぽつりとこぼした。
「……伯爵家の妻が、毎日女中たちに混ざって台所に立つなど聞いたことがない。疲れないのか」
呆れたような口調だったが、その低い声色には、不器用な気遣いがはっきりと滲んでいた。
「ご心配ありがとうございます。ですが、少しも疲れませんわ。お料理は楽しいですし、何より……」
「何より?」
「旦那様が、私がお出ししたものを毎日一つ残らず、綺麗に召し上がってくださいますから。それが嬉しくて」
「……出されたものを残すのが嫌いなだけだ」
プイッとそっぽを向く冬真様の耳の端が、少しだけ赤く染まっている。
「それでは明日も、残さず召し上がっていただけるお料理を作りますね」
「……勝手にしろ」
私はにこりと笑った。
「はい、勝手にします!」
冬真様が、また一本取られたというような、諦めと安堵の混じった顔をした。
